
この病気は、原因がはっきりしないまま不眠症状、憂鬱な気分、食欲不振、頭痛などの症状が続くため、精神的にはもちろん身体的にも苦痛な生活を送ることになります。
このうつ病は高齢者にも発症しますが、認知症との区別が難しく発見が遅れてしまうことも。特徴をしっかりと把握して、解決策を考えておきましょう。
1.老人性うつとは?かかる原因とその特徴
厚生労働省の「患者調査」では、うつ病を含む気分障害の患者数は、ここ10年以上ゆるやかに増加しています。最新の公表データでも、60代以降の割合が年々高まっており、65歳以上が全体の3割以上を占めています。
特に一人暮らしのシニアは、気づかれにくいうつ症状を抱えやすいと言われており、早めの気づきとサポートが大切です。
老人性のうつ病と通常のうつ病を比較すると、その原因や症状には異なるケースが見られます。それぞれについて解説しましょう。
高齢者がうつ病になる主な原因
・高齢化にともなう身体機能の低下
・伴侶や友人、知人、ペットとの死別
・自分や家族の病気
・家族の介護
・退職による生活の変化
・家族との生活がうまくいかないこと
・社会的役割を失うこと
悲しみを伴うもの、環境が大きく変わるものなどが原因となって気持ちが落ち込み発症することが多く、その他にも高齢者が服用することの多い血圧降下薬、病気や痛みを抑えるためのステロイド剤、鎮痛剤、抗がん剤などがうつ病を誘発することもあります。
老人性うつにみられる特徴
一般的なうつの症状は、不安、抑うつ、疲労感、自分を責める、睡眠障害、食欲の減退、動悸、口の渇き、身体の痛みなどが主な症状と言われていますが、老人性うつの症状と比較すると違いがあります。
老人性うつの症状
・腰痛、頭痛など身体的不調が現れる。
・気持が落ち込む
・物忘れがひどい
・物覚えが悪くなる
・妄想するようになる
・一日の中で体調の具合が変動する
どちらも抑うつ症状や身体の痛みが現れるという点が共通していますが、老人性うつの方が、身体の不快感、痛みを大げさに主張しがちです。また、症状の出方が部分的に強く現れる、もしくは弱く現れるのも特徴といえます。
2.老人性うつと認知症はどう違うの?

老人性うつの症状には、認知症の症状に似ているものが複数あり、また併発しているケースもあるため、認知症と間違えられてしまうことも…。見分けるポイントをいくつかご紹介しましょう。
| 初期の症状 | 老人性うつ | 身体の痛みなどの不調を訴える、気分が落ち込む |
|---|---|---|
| 認知症 | 記憶障害が見られる、性格が変わる | |
| 物忘れ | 老人性うつ | 自覚がある |
|---|---|---|
| 認知症 | ほとんど自覚がない | |
| 抑うつ症状 | 老人性うつ | 多くみられる |
|---|---|---|
| 認知症 | 少ない | |
| 発症のきっかけ | 老人性うつ | 何かがきっかけとなって発症するケースが多い |
|---|---|---|
| 認知症 | きっかけがないことがほとんどで、少しずつ進行する | |
このように、老人性うつも認知症も、似たような症状が起こることがあり、また治療に用いる薬も異なるため、的確な診断によりどちらの病気であるかを見極め正しく治療をすることが大切です。
3.「老人性うつかも?」と思ったときにすべき周囲の対応とは?
特に問題がないにもかかわらず不調が続くようであれば、精神科、認知症外来のある病院にいき、検査を受けましょう。
体調がすぐれない、痛みがある、気持ちが落ち込むなどの症状を訴えるようになったら、まずはご本人の話をじっくりと聞いてあげることが大切です。聞き流してしまうと病状が進行してしまうこともあるので、身体の痛みなど不調がある場合はまずは内科を受診し、内科的病気がないかどうかを見極めます。
治療は投薬がメインとなりますが、最近は、副作用をほとんど気にせずに服用できる薬がありますので安心して治療できます。
また、生活面では、頑張れ!と励ますことは控え、ご本人がゆっくりと身体と気持ちを休めながら生活することができるよう、穏やかに見守るようにしましょう。
「うつ」についての詳しい記事はこちらをご覧ください。
■「うつ」とは?特徴的な症状に気づき治療につなげるポイント
4.老人性うつを予防するには
老人性うつは、日ごろの過ごし方で予防することができます。
ストレスをためないように、好きなことを行う
何かに夢中になると、気分が明るくなりリフレッシュすることにつながります。
多くの人と積極的に交流する
家にばかりいると、ひとりでいる時間が増えて気分がふさぎ込んでしまいがち。
さまざまな交流の場に顔を出すことで、イキイキとした時間を過ごせるようになります。
運動をしてバランスのよい食事をとる
運動と栄養面のケア、この当たり前のことが健康な精神と身体をつくります。
ちょっとした散歩でも構いません。
日光を浴びないことがうつ病と何らかの関係があるという説もあるので、外に出るようにします。
日光を浴びれば気分も明るくなるはずです。
老人性のうつは、きっかけも症状もさまざまで、気づきにくいことがある病気です。気になる様子が見られたら、日々の変化を簡単にメモするなど、早めに医療機関へ相談する準備をしておくことが大切です。
早めに気づいてサポートできれば、改善が期待できるケースも多くあります。もし、日常の孤立感や不安が強くなっている場合は、住まいの環境を見直すこともひとつの選択肢です。
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(文:グッドライフシニア編集部 ライター大野 道代)
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