
「夜中に何度も目が覚める」「一度起きると寝付けない」……。60代以降、こうした中途覚醒は加齢による自然な変化でもあります。今回は夜中に起きる「本当の原因」を深掘りし、今夜からできる具体的な対策を解説します。
中途覚醒とは
中途覚醒とは、寝付きは悪くないものの、眠りの途中で何度も目が覚め、その後なかなか再入眠できない状態を指します。
加齢に伴い「睡眠を維持する力」が変化し、深い睡眠が減り、浅い睡眠が増えるため、わずかな刺激でも脳が覚醒しやすくなります。ある程度は自然な変化ですが、日常生活の中に「目が覚めてしまう余計な原因」が潜んでいることも少なくありません。
中途覚醒の主な原因
夜間頻尿
シニアの夜間覚醒で最も多いのが尿意です。国立長寿医療研究センターの調査では、60歳以上の70%以上に夜間頻尿が見られるという結果に。(※1)
加齢による膀胱機能の低下に加え、実は「日中の運動量」や「座り姿勢」が影響しているケースも。日中に足にたまった水分が、夜横になることで尿として排出される仕組みがあるためです。
寝室の環境(温度・光・音)
シニアの体は周囲の刺激に敏感です。冬場の冷え(室温18℃未満)は交感神経を刺激して眠りを浅くし、喉の乾燥も覚醒を招きます。また、家電のLED光や街灯の漏れ、些細な騒音さえも、眠りを中断させる引き金になります。
寝酒・夕方以降のカフェイン
「寝酒でよく眠れる」のは誤解です。アルコール分解が始まると脳が覚醒し、眠りの質を急激に下げます。また、カフェインは血中濃度が半分になるまで3〜7時間かかります(厚労省「睡眠ガイド2023」※2)。成分が体内に残ると覚醒を招くため、午後2時以降は控えましょう。
足のむくみ
日中に足へたまった水分は、就寝時に心臓へ戻り血液量を増やします。すると腎臓が「尿として排出」しようと働くため、夜間の強い尿意を引き起こすのです。
昼寝の長さ・活動量不足
日中の活動量が少ないと「睡眠圧(眠る力)」が高まりません。また、午後に30分以上の昼寝をすると夜の睡眠エネルギーを先取りしてしまい、中途覚醒を招きやすくなります。
身体的不快感(いびき・痛みなど)
いびきや呼吸停止は脳を酸欠にし、無意識に覚醒を繰り返させます。脚がむずむずする症状や、関節の痛み、皮膚のかゆみといった身体的不快感も、深い眠りを妨げる要因です。
原因別「今夜からできる対策」
【夜間頻尿・むくみ対策】就寝後の尿意を減らす
夕方の「足上げ」
夕方15分ほど、足を心臓より高くして横になりましょう。寝る前に足の水分を循環させて尿として排出しておくことで、就寝後の尿意による覚醒を抑えられます。
塩分を控える
塩分の摂りすぎは夜間の喉の渇きを招き、中途覚醒後の水分摂取=再度の尿意という悪循環を生みます。夕食を薄味にするだけで、夜のトイレ回数を減らせます。
「起きてしまった後」の転倒を防ぐ
尿意で起きた際のふらつきや暗闇での移動は転倒リスクが非常に高いです。足元灯を設置し、無意識でも安全にトイレへ行ける環境を整えましょう。
■シニア向け賃貸住宅では、トイレへのバリアフリー設計や足元灯が標準設置されており、夜間も安心です。
☞「高齢者向け賃貸住宅」ってどんな住まい?
【寝室環境・嗜好品の対策】脳の「中途覚醒」スイッチを切る
夜中の「寒さ刺激」を遮断する
冬場、布団から出た瞬間の冷気(室温18℃未満)は脳を完全に覚醒させてしまいます。エアコン等を活用し、夜通し一定の室温を保つのが再入眠のコツです。
「寝酒」による中途覚醒を断つ
寝酒は数時間後の覚醒を招く「中途覚醒の引き金」です。アルコールを温かい白湯やハーブティーに置き換え、内臓を温めることで眠りの維持力を高めましょう。
寝室環境の整え方や睡眠の質を高める食事法についてはこちらの記事で解説しています。
☞シニアの睡眠の質を高める寝室環境の整え方|照明・音・温度のポイント
☞シニア世代に多い睡眠の悩み、食べ物や食事法でできる工夫とは?
「目が覚めた直後」の対処法
時計を見ない
「あと◯時間しか寝られない」と確認した瞬間、脳が活動モードに入り再入眠が遠のきます。時間は見ず、「まだ夜だ」と心に決めて目を閉じ続けましょう。
強い光を浴びない
トイレ等で強い光を浴びると、睡眠ホルモン「メラトニン」の分泌が止まります。暖色系の足元灯だけで動くのが、転倒防止と再入眠を両立させる鉄則です。
20分眠れなければ一度布団を出る
眠れないまま布団にいると、脳が「布団=苦痛な場所」と記憶します。20分ほど経っても眠れないなら一度リビングへ。暗い照明下で読書等をして、眠気が戻ってから布団へ戻りましょう。
受診の目安
以下に当てはまる場合は、早めに専門医へ相談しましょう。
・いびき、呼吸停止、日中の強い眠気
・頻尿が続く、排尿痛
・気分の落ち込み
・脚のむずむず
受診時は「何時に布団に入り、何時ごろ目が覚めたか」という簡単な記録(睡眠メモ)を持参すると、診断がスムーズになります。
朝まで心地よく「睡眠」をとるために
中途覚醒は、加齢の変化を受け入れつつ、環境やリズムを微調整することで和らげられます。完璧に朝まで眠ろうと気負いすぎず、「またゆっくり眠ればいい」という気楽な構えも大切です。まずは今夜、寝室の温度や光を見直すことから始めてみませんか。
◆参考
・国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター「夜間のトイレ何回行きますか」(※1)
・厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド 2023」(※2)
(グッドライフシニア編集部)
