介護保険制度による介護サービスを利用するには「要介護認定」を受ける必要があります。
要介護・要支援認定とは、被保険者が介護を要する状態であることを保険者である市町村が認定するもので、手続きや受けられるサービスの内容も違います。
では、いったい要介護認定を受けるためにはどのように手続きを進めれば良いのでしょう。
要介護認定の申請から認定後までの流れについて分かりやすくご説明していきます。
1.要介護・要支援認定を受けるための申請方法
認定を受けるには、市区町村の窓口で「要介護・要支援認定」の申請をします。
一次認定の際には、調査員が自宅に訪問し細かい項目についてアンケートをとっていきます。また、本人の主治医に心身の状況についての意見書も作成してもらいます。
介護認定調査で聞かれることを知っておきましょう。事前に準備して実際よりも低い要介護度にならないために、普段の様子をしっかり伝えるようにしてください。
■介護認定調査を受けるに当たり知っておくべきこと ~親の自尊心も大切に~
認定までの手順
介護サービスをどれくらい必要としているかを客観的に、かつ公平に判定するため、コンピュータによる1次判定と、それを元に保健医療福祉の学識経験者が行う2次判定の2段階の方法で行います。
STEP1 市区町村への申請
各市町村には介護保険課などがありますので、要介護認定の申請に行きましょう。まずはお住まいの市町村の窓口に、要介護認定の申請に必要な書類や注意事項などを聞いてみましょう。書類の提出先は同じく、各市町村の担当窓口です。
STEP2 要介護認定の訪問調査
各市区町村の職員または委託されたケアマネージャーなどの認定調査員が実際に家庭を訪問して、どの程度の介護が必要か心身の状況を聞き取り調査します(認定調査)。
訪問調査の際は必ず家族の同席が必要です。そして、主治医による意見書も必要なので、介護保険を申請する方の心身の状況、介護保険申請の原因となる病気などについて意見書を書いてもらいます。
その主治医意見書と認定調査を基に、コンピューターが介護にかかると想定される時間(要介護認定等基準時間)を算出しレベル分けされます。
STEP3 要介護認定の審査
次に保健・医療・福祉の学識経験者により構成された介護認定審査会により、一次判
定結果、主治医意見書に基づいて審査判定を行い審査されます。
STEP4 要介護認定
介護認定審査会の結果に基づき、市町村が申請者についての要介護認定を行い、以下いずれかの区分によって通知が届きます。
・非該当(自立)
・要支援 (1・2)
・要介護(1〜5)
2.認定結果に応じたサービス内容
要支援状態
「要支援1」「要支援2」:介護保険の介護予防サービスを利用することができます。
要介護状態には該当しませんが、身体上又は精神上の障害があってIADL(手段的日常生活動作)において何かしらの支援が必要な状態(虚弱状態)のことです。
要支援1 | IADL(手段的日常生活動作)においてなんらかの支援が必要な状態。 基本的な日常生活は送れる能力はあるが、歩行や立ち上がりなどに若干の低下が認められ、一部介助が必要。 |
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要支援2 | 要支援1の状態より基本的な日常生活を行う能力IADL(手段的日常生活動作)がわずかに低下し何らかの支援が必要。 |
※手段的日常生活動作=IADL(Instrumental Activities of Daily Living)
買い物、家事全般、服薬管理、支払い手続き、趣味の活動など、日常生活を送る上で必要であると言われている動作。
要介護状態
「要介護1~5」に認定:介護保険の介護サービス(在宅・施設)を利用することができます。
身体上の理由で寝たきり、または認知症などの精神上の障害があって、入浴、排泄、食事などの基本的なADL(日常生活活動作)においての全て、または一部について常時介護を要する状態のことです。
要介護1 | 立ち上がり、歩行に支えが必要で、排せつ・入浴・洗顔・衣服の着脱など部分的な介助が必要。 |
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要介護2 | 立ち上がり、歩行に支えが必要で、排せつ・入浴・洗顔・衣服の着脱などに一部または全介助が必要。 |
要介護3 | 日常生活動作が著しく低下し、自分で立ち上がりや排せつができない。 排せつ・入浴・洗顔・つめ切り・衣服の着脱などに全介助が必要。 |
要介護4 | 自分で立ち上がりや歩行ができなく、排せつ・入浴・洗顔・衣服の着脱などの全般について全面的な介助が必要。 認識力・理解力などに衰えもある。 |
要介護5 | 生活全般にわたって全面的な介助が必要。 多くの問題行動や全般的な理解力も低下している。 |
※日常生活動作=ADL(Activities of Daily Living)
食事や排泄、整容、更衣、入浴、移乗、歩行など、私たちが日常生活の中でごく当たり前に行っている身体動作のことを言います。
要介護認定の詳しい記事はこちらをご覧ください。
■要介護認定の介護サービスを受けるまでの流れ
3.審査結果に不服がある場合は?
市町村が実施した介護認定結果に納得できない場合は、次の2つの方法があります。
不服申し立て(審査請求)
認定結果が実際の状態と異なると感じた場合は、不服申し立てをすることができます。
結果通知を受け取った日の翌日から3ヶ月以内に、各都道府県設置の「介護保険審査会」に審査請求をしましょう。
審査請求をすると、介護保険審査会はその内容に対し審理を行い、認容、棄却、却下のいずれかについて裁決します。ただし、認容され再審査する場合、時間がかかることがあります。
要介護認定変更申請
認定期間の途中で、認定の区分変更の申請をすることが可能です。これは、本人の状態に変化があった場合に行われるものですが、審査結果に不服がある場合に申請することもできます。
この場合、介護認定審査会で再度判定を行った結果は、30日以内に通知されます。不服申し立てよりも早く結果を出すことができるので、こちらの方法を利用する人が多いようです。
4.途中で介護度が変わった場合には?
新規で介護認定を受けたあとに、介護認定期間中に心身の状態が変わる(悪化した、改善したなど)ことがあります。この場合は、区分変更申請を行うことで、次の更新審査を待つことなく調査を行ってもらうことができます。ただし、必ず希望の介護度に決定するとは限りません。
最初に要介護認定申請を行ったときと同様の方法で、市町村の福祉保健課や地域包括支援センターの窓口に申請してください。
申請は、本人、家族だけでなく、地域包括支援センター、成年後見人、介護保険施設、居宅介護支援事業者などに代行してもらうことも可能です。
なお、申請はいつでも可能で、再審査後、30日以内に結果が通知されます。
要介護(要支援を含む)認定の有効期間
初回要介護認定の有効期間は原則6ヶ月と定められており(介護認定審査会の意見にもとづき3~5ヶ月に短縮する場合や7ヶ月~12ヶ月に延長する場合あり)、その期間を過ぎても要介護、もしくは要支援の状態であると思われる場合、要介護認定を更新するための申請を行うことができます。
更新認定の申請は、有効期間満了日の60日前から満了日の間に行うこと(有効期間満了日30日前が推奨されている)が必要で、手順は初回の認定時と同じです。
また、更新認定の有効期間については、原則は12ヶ月ですが、介護認定審査会の意見にもとづき、3~11ヶ月に短縮する場合や13ヶ月~36ヶ月(要支援認定は最長24ヶ月)に延長する場合があります。
なお、要介護認定の有効期間について厚生労働省は見直しを実施。前回更新時の要介護度と変更がなかった人について、2021年度以降は最長3年から4年に変更する見込みです。
もしも介護や支援が必要と感じたら、まずは高齢者総合相談センター(地域包括支援センター)に相談に行きましょう。豊富な知識を持った専門の職員が、高齢者の方が住み慣れた地域で安心に暮らせるよう介護・医療・保健・福祉など、あらゆる面からサポートしてくれる窓口です。
(グッドライフシニア編集部)
福祉系大学卒業後、医療ソーシャルワーカーとして勤務。介護保険や障害年金などの申請手続きの相談、入院費や退院後の生活についての相談、施設入所調整など、支援は多岐に渡る。その傍ら、医療ソーシャルワーカーの経験を活かし、介護・福祉分野のライターとして執筆活動を行っている。