定年後、「年金だけで足りる?」「毎日が退屈になりそう…」「健康を保てるだろうか」と不安を感じる方は少なくありません。実はいま、60代・70代で「自分らしい働き方」を選んで働き続けるシニアが増えています。
本記事では、シニアが働く3つのメリット(経済・健康・社会参加)と、年金を減らさずに働くコツをわかりやすく解説します。
1.定年後も活躍!シニアの働き方とその3つのメリットとは
「定年後、自分にできる仕事があるかな…」そんな不安を感じる方もいらっしゃるかもしれませんね。でも実は、シニア世代だからこそ活かせる仕事や、働くことで得られるかけがえのないメリットがたくさんあるんです。
内閣府調査[2]では、シニアが働く理由が「収入」だけでなく、「知識・能力の活用」「仲間との出会い」など、人生を豊かにする目的も多いと判明。これは精神的な充足や自己実現を求めるシニアが増えている証拠です。
以下で、シニア世代が働くメリットや働き方によって得られる充実感を具体的に見ていきましょう。
1.経済的なメリット
老後の生活を安定させるには、年金だけでは心もとない…と感じていませんか?
日本年金機構の発表によると、夫婦2人分の老齢基礎年金の標準額は約23万円(2024年度・昭和31年4月2日以後生まれの場合)。
一方、厚生労働省の家計調査(2022年)によると、老後の生活費は夫婦2人で月約27万円、単身世帯で約16万円が平均とされています。
年金だけでは平均的な生活費をカバーしきれない場合も多く、働くことは日々の暮らしに安心と心のゆとりをもたらします。趣味や旅行など、人生をより豊かにする選択肢が増え、精神的な豊かさにもつながるでしょう。
2.社会的なメリット
退職後に人とのつながりが減る不安は大きいものです。長年仕事をしてきた方ほど物足りなさを感じることも。孤立を防ぎ、精神的な健康を保つ上で、社会とのつながりや活躍の場は非常に重要になります。
世代の異なる人々と関わることで、新たな価値観に触れるチャンスにもつながります。自身の経験やスキルが誰かの役に立つことで、新たな生きがいや充実感を得られるのも、働くメリットのひとつです。
3.健康面のメリット
「働くこと=健康維持」につながります。
たとえば、警備の仕事では施設内を歩いて巡回するため、無理のない運動習慣が自然と身につきます。また、講師や受付などで人と話す機会がある仕事は、脳の活性化や認知症予防にも良い影響があるとされています。
仕事を通じて心身ともに活力を維持できることは、シニア世代にとって何よりの恩恵と言えるでしょう。
2. 年金を減らさない!働き方と収入の賢い調整法
「せっかく働くなら、年金が減ってしまうのは避けたい…」そう考える方も多いのではないでしょうか。実は、働きながら年金を受け取る際に「在職老齢年金」という制度で年金の一部が調整されるケースがあります。
ですが、賢く働けば年金を大きく減らすことなく収入を得ることは十分に可能です。
在職老齢年金についての詳しい記事はこちらから☟
■在職老齢年金とは?年金が減らない働き方と計算例を解説
ここでは、年金を全額受給しながら働くためのポイントと、具体的な収入の目安をご紹介します。
年金の減額に関わるのは、以下の合計額です。
基本月額(年金額 ÷ 12)+ 総報酬月額相当額(月々の賃金 + 年間の賞与額 ÷ 12)
この合計額が51万円以下であれば、原則として年金は全額支給されます。
- 月収+年金の合計が 月51万円以下ならOK!
- 対象は「老齢厚生年金」のみ。基礎年金は減らない
- 判断基準は「本人単独の収入」
※正確な基準額は、年度によって変動する可能性があります。最新の情報は日本年金機構の公式サイト[3]をご確認ください。
年金についての詳しい記事はこちらをご覧ください。
■知っておきたい年金のこと(国民年金・厚生年金・在職老齢年金・障害年金・特別支給の老齢厚生年金)
具体的なケースで見る影響
実際に、働き方によって年金受給額がどのように変わるのか、65歳まで会社員として働き、定年を迎えたAさん、Bさんの2つのケースを見てみましょう。
【ケース1】年金を減らされずに働くAさんの例
Aさんは、年金を受け取りながら、パートタイムの仕事で毎月10万円の収入を得ています。年金も含めた毎月の収入は26.8万円ほどになり、ポイントは「働いても年金が減額されていない」という点です。
Aさんの収入の内訳は以下の通りです。
・老齢厚生年金:月10万円(年額120万円)
・仕事による賃金・賞与:月10万円
・老齢基礎年金:約6.8万円
Aさんの場合は、「老齢厚生年金」と「仕事による賃金・賞与」を合計が月額20万円です。「月51万円以下」という減額基準を大きく下回っているため、年金は全額支給されています。
【ケース2】年金の一部が減額されるBさんの例
Bさんは、現役並みに働いて毎月44万円の収入を得ています。働き方を工夫しながら年金も受け取っていますが、その働き方のために年金の一部がカットされています。
Bさんの収入の内訳は次の通りです。
・老齢厚生年金:月10万円(年額120万円)
・仕事による賃金・賞与:月44万円
・老齢基礎年金:約6.8万円
Bさんの場合、「老齢厚生年金」と「仕事による賃金・賞与」の合計が月額54万円となり、年金減額の基準である「月51万円」を超えてしまいます。
そのため、(44万円+10万円-51万円)× 1/2という計算式によって、年金は年間18万円(月額1.5万円)減らされることになります。結果として、Bさんの老齢厚生年金は月8.5万円に減額されています。
最終的な1ヶ月の総収入は以下の通りです。
・賃金:44万円
・老齢厚生年金(減額後):8.5万円
・老齢基礎年金:約6.8万円
→ 合計:約59.3万円
このBさんのケースからわかるのは、働きながら年金を受給する人に適用される「在職老齢年金」制度の調整により、収入が多くなると年金の一部がカットされるという点です。
とはいえ、働き続けて高収入を得たい方にとっては、たとえ一部の年金が減っても十分にメリットがあるとも言えます。自分の生活スタイルに合わせて、どのような働き方をするかの参考になります。
年金を減らさず働くためには?
令和5年の厚生労働省データによると、老齢厚生年金の平均受給額(基礎年金除く)は約7.9万円です。平均的な年金受給額の方であれば、総報酬月額相当額が43万円程度までは、年金が全額支給される可能性が高いと言えます。
また、内閣府の「令和4年版高齢社会白書」によると、65歳以上の平均所得は約300万円で、多くの方が年金全額受給の範囲内で働いています。
ただし、老齢厚生年金の額が高い方や、セカンドキャリアで高収入を得ている方は、以下の点を考慮して働き方を調整することで、年金の減額を抑えることができます。
- 労働時間・日数を調整する: 短時間勤務にしたり、週の勤務日数を減らす
- 収入額を調整する: パートタイムや業務委託など、収入を調整しやすい働き方を選ぶ
3.自分に合った仕事を見つける!シニアの仕事選びに役立つヒント
「定年後も、何か新しいことに挑戦したい」「社会とつながり続けたい」──そんな気持ちを持つシニア世代が増えています。
仕事選びを考えるとき、もちろん収入は大切ですが、それ以上に「自分にとってのやりがい」や「どんな働き方なら健康を維持できるか」、「無理のない生活リズムで続けられるか」といった視点が非常に重要になります。
【仕事選びのヒント】
- 健康を保つ仕事選び:体を動かすのが好きな方は軽作業や清掃で自然に運動習慣を。人と話すのが好きな方は受付や講師など、脳を活性化できる仕事もおすすめ。
- やりがい・社会貢献:長年の経験を活かせる講師業やコンサルタント。地域の見守りや送迎業務で、誰かの支えになる喜びを感じるのも良いでしょう。
- 無理なく続ける生活リズム:短時間勤務、週数日勤務、在宅ワークなど、自分のライフスタイルに合った働き方を選びましょう。
- 新しいことへの挑戦:未経験でも始めやすい仕事や、新しいスキルを身につけられる分野に挑戦してみるのも良い機会です。視野を広げてみましょう。
まずは「週何日働きたいか」「体力に無理はないか」「どんなことに興味があるか」など、ご自身の希望や条件を具体的に整理することから始めてみましょう。無理のないペースで、生活に張りを与え、充実感を得られる仕事を選ぶことが、セカンドキャリア成功への大切な一歩となります。
「具体的にどんな仕事があるの?」「どこで探せばいい?」といった、さらに詳しい情報やシニア世代が仕事探しをするときに活用できる機関、趣味や特技を生かしたおすすめの職種については、以下の記事で詳しくご紹介しています。
■定年後の働き方を見つけよう!60代・70代に人気の職種&仕事探しのヒント
シニアが働くメリットは、経済的・社会的・健康的と実に多岐にわたります。「60代から始められる仕事」「年金を減らさずに働ける職種」など、知っておくと役立つ情報を取り入れて、自分らしいセカンドキャリアを見つけましょう。
◆参考文献
・総務省統計局「令和4年就業構造基本調査」[1]
・内閣府「令和元年度 高齢者の経済生活に関する調査結果」「高齢社会白書」[2]
・日本年金機構「働きながら年金を受給する方へ」「令和6年4月分からの年金額等について」[3]

ホテル、人材業界での勤務を経て、出産を期にWEBライターとして活動を開始。
大手ライフメディアサイト、女性向けグルメニュースサイトなどで食・暮らし関連の
記事を執筆中。両親ともに元気ですが、将来に備えて介護について学んでいます。
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