日本は世界有数の長寿国。2021年現在、100歳以上の高齢者は約8万6000人を超え、まさに「人生100年時代」が到来しつつあります。
そうなると、65歳以降の第二、第三の人生をどう過ごすのかを考えておきたいところ。
今回はシニアライフを充実させるための「生涯学習」についてご紹介していきます。
1.シニアの学び「生涯学習」とは?
「生涯学習」とは、生活の向上や充実のために自発的に行う自由な学習のことです。学校や職場などで行われる学習だけでなく、スポーツ活動や文化活動、趣味、ボランティア活動など幅広い学びを指し、シニアライフを充実させるものとしても注目されています。
内閣府「生涯学習に関する世論調査」によると、「この1年に生涯学習をしたことがあるか?」の質問に対して、60代55%、70歳以上42,5%の人が、「学習をしたことがある」と回答するほど、シニアの“学ぶ意欲”は高まっています。
高齢者の「生涯学習」具体例
これからの人生に活かせるものとしては、健康維持や資産管理、加齢にともなう生活環境や人間関係の変化への対応などがあります。
また、介護や医療の基礎知識、年金制度、成年後見のしくみ、語学、ICT(情報通信技術)活用なども役立ちそうです。
ICTは、パソコンやスマートフォンなどの通信技術を活用したコミュニケーションのことで、SNSやメールでのやり取りもこれに該当します。使いこなせるようになっておくと日常的に必要な情報を早く正確に受け取れるようになり、家族や友人とのコミュニケーションにもつながります。
また、新型コロナウイルスのワクチン接種を例にすると、パソコンやスマートフォンを活用できない人々が予約窓口に殺到してしまうという問題が実際に起きています。ICTの習得はこうした非常時にも役立つもので、自分自身だけでなく、同年代の友人や近所の人を助けてあげることもできるかもしれませんね。
このほか、趣味的なものであれば美術や華道、音楽、書道、舞踊など、家庭生活で役立つものでは料理や和裁、編み物などもあります。
2.高齢者の学びの場はどこにある?
高齢者大学
「高齢者大学」とは、自治体が実施する高齢者向けの生涯学習事業です。東京都を例にとると、中野区では「なかの生涯学習大学」、杉並区では「杉の樹大学」といったように名称は運営者によってさまざまで、学びの内容も異なります。お住まいの地域の自治体ではどのような事業が行われているのか、年齢条件や学習内容などもあわせて確認してみましょう。
大学のシニア向け公開講座
大学が市民向けに実施しているオープンカレッジでは、歴史や美術、倫理、プログラミング、英会話など、各大学の特色を活かしたさまざまな科目が設置されています。
対面だけでなく、パソコンやスマートフォンを利用して自宅で受講できるオンライン形式の講座もあります。
関東周辺の公開講座はこちらをご覧ください。
身近な生涯学習から気軽に
「学習」と意識していなくても、社会とのかかわりを通して結果的に自身の生き方や考え方、態度に変化が起きたとすれば、それは立派な生涯学習です。
手工芸や音楽などの文化活動、ヨガやウォーキング、ゴルフなどのスポーツ活動、地域に貢献するボランティア活動など、興味のある分野から気軽に始めてみるのも良いでしょう。
3.生きがいとつながりをつくろう
高齢者は支えられるだけの存在ではない
高齢者の強みは、若者や現役世代にはない人生経験の豊かさ。生涯学習を通して得た新しい学びや知識と、自身が培ってきた経験とをあわせて、地域貢献などにも活かしていくことができます。
実際、筆者は社会福祉士の養成施設で学んだときに、クラスメイトの中には60代の方もいました。「定年退職後の第二の人生として、福祉分野で頑張っていきたい」と活き活きと語り、学ぶ姿に、「私も頑張ろう!」と良い刺激をもらいました。
高齢者は一方的に支えられるだけの存在ではなく、支え合う社会の大切な一員。生涯学習を通して家族や友人、職場、地域といった身近なところから自身の役割をつくり、生きがいを見出していくことで、より豊かなシニアライフを送ることができるのではないでしょうか。
つながりが「安心」に
学びを通して友人や社会とのつながりをつくることも、生涯学習の目的の一つです。「いつも集まりに参加していたのに、最近顔を見ないな」「普段と様子が違うけど、何かあったのかな?」とお互いに気にかけ、小さな異変を察知できるようにしておくと、いざという時に助けあうことができます。何かあったときに相談ができる、支え合える人間関係をつくっておくことは、安心して暮らしていくためにもとても大切です。
いかがでしたでしょうか。
今回は高齢者が生涯学習に取り組む意義についてご紹介していきました。自分らしく活き活きとしたシニアライフを送り、人生の後半戦を楽しんでいきましょう。
学習院大学法学部政治学科卒業。IT企業に3年間勤め、退職後はライターとして高齢者の介護や福祉、健康分野の記事を執筆しています。福祉分野の専門性を高めるため、現在は社会福祉士の国家試験を取得しています。
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