
「年金は若い頃真面目に働いて年金保険料を納付してきたご褒美」と考える人が多いのですが、年金にも税金、つまり所得税がかかる場合があるのをご存じですか?
これは、年金が税法上は「雑所得」に当たるからです。
所得税や住民税の課税基準は毎年見直されており、2025年度も非課税ラインや控除額に変更がありました。
この記事では、公的年金に税金がかかる条件や免除されるケースを分かりやすく解説します。
 
年金に所得税がかからない場合
公的年金を取り巻く制度は毎年のように見直されており、支給額や控除額、課税基準にも小さな改定が続いています。
2025年度も基礎年金額や税制の一部が変更され、前年は非課税だった人が今年から課税対象になるケースが出ています。
たとえば、2025年度の国民年金(満額)は年間約81万7700円と、前年より約1万円増額しました。
65歳以上の非課税ライン(158万円)ぎりぎりで受給している人は、このわずかな増額でも課税対象になる可能性があります。
さらに、公的年金等控除は所得に応じて段階的に縮小が続いており、企業年金など複数の年金を受け取っている人では控除額の変化によって課税になることも。
「年金が増えたのに手取りが減った」と感じる場合は、こうした控除や税制改正の影響を受けている可能性があります。
そのため、最新の制度を理解しておくことが老後の家計管理の第一歩です。
公的年金のみを受給している場合、65歳未満の方は年間108万円以下、65歳以上の方は年間158万円以下であれば所得税の支払いは不要です。
国民年金の老齢基礎年金を満額受給している方でも、年間受給額は約81万円(令和6年度)なので、所得税はかかりません。
令和6年度の老齢基礎年金(満額)は81万7700円(月額約6万8141円)です。
※参考:厚生労働省「令和6年度の年金額改定について」
この支給額は、40年間すべての国民年金保険料を納めた場合の金額です。
実際には満額に満たない人も多く、国民年金だけであれば所得税が課されることはほとんどありません。
なお、2025年度も「年金生活者支援給付金」が継続されており、所得が一定基準以下の受給者には年金額に上乗せして支援が行われます。
この制度は所得税や住民税とは別枠で支給されるため、対象となる方は忘れずに確認しておきましょう。
遺族厚生年金や障害厚生年金も非課税
遺族厚生年金や障害厚生年金は、税法上非課税となっています。これは、これらの年金が生活保障の目的で支給されるためです。そのため、受給額が多くても所得税の課税対象にはなりません。
ただし、遺族年金を受給している人が別途給与所得などを得ている場合は、合計所得額によって税負担が発生することがあります。
住民税はどうなるの?
所得税がかからない場合でも、住民税の課税対象となる可能性があります。一般的に住民税の非課税基準は自治体によって異なりますが、単身者で年収100万円以下、扶養がある場合はさらに基準が緩和されるケースが多いです。
住民税が非課税となると、医療費の助成、介護保険料の軽減、国民健康保険料の減額など、さまざまな支援制度を利用できる可能性があります。非課税基準に該当するかどうかを確認して、活用できる制度を把握しておくと、老後の生活がより安心になります。
住民税について詳しく知りたい方は、お住まいの市区町村の税務課に確認することをおすすめします。
 
年金に所得税がかかる場合
65歳未満の方で受給額が108万円、65歳以上の方で受給額が158万円を超えた場合は所得税がかかり、源泉徴収が必要になります。源泉徴収なので、あらかじめ社会保険料に加えて所得税分が差し引かれた額が支給されます。
ここで必要なのが、日本年金機構から送付される「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」を必ず提出することです。この申告書が提出されていないと、配偶者控除や扶養控除などの適用を受けられず、所得税率が大幅に割増されるため注意が必要です。
その結果、通常よりも多くの所得税が源泉徴収されることになるため、受給額が減ってしまう可能性があります。
確定申告は必要?不要?
年金の源泉徴収は年末調整で処理できないため、所得税を正しく計算し控除を適用するには確定申告が必要になる場合があります。
ただし、平成23年度から導入された「確定申告不要制度」により、年金収入のみで一定の基準を満たす方は申告を行う必要がありません。
確定申告が不要になる条件
以下の3つの条件をすべて満たす場合、確定申告は不要です。
- 公的年金等の収入が400万円以下(65歳未満・65歳以上ともに対象)
- 年金以外の所得が20万円以下(パート収入や投資収益など)
- 所得税が源泉徴収されている(年金支給時にすでに引かれている)
こんな場合は確定申告が必要!
確定申告不要制度があっても、以下のようなケースでは申告を行った方がよい場合があります。
- 年金以外の収入(給与や個人事業収入など)がある場合
- 医療費控除を受けて税金を軽減したい場合
- 社会保険料控除や生命保険料控除を適用したい場合
- ふるさと納税を活用している場合
医療費控除や社会保険料控除などの追加控除を受ける場合は、確定申告を行うことで所得税を軽減できる可能性があるため、状況に応じて検討しましょう。
年金の税額を簡単に知るには?
「自分の年金にどのくらいの税金がかかるの?」と気になる方は、国税庁や自治体が提供する「税額シミュレーション」を活用すると便利です。
日本年金機構や国税庁の公式サイトでは、年金額や控除を入力することで簡単に試算できるツールを提供しています。事前に確認して、納税の準備をしましょう。
 
年金と税金の関係を正しく理解し安心の老後を
年金には所得税がかかる場合とかからない場合があります。65歳未満は年金収入108万円以下、65歳以上は158万円以下であれば、所得税はかかりません。一方で、この基準を超えると源泉徴収され、確定申告が必要になる場合があります。
また、遺族年金や障害年金は非課税ですが、所得税がかからなくても住民税が発生するケースもあるため注意が必要です。扶養親族等申告書の提出を忘れると税負担が増える可能性があるため、事前に確認しておきましょう。
さらに、医療費控除や社会保険料控除などを活用すれば、税金の負担を軽減できる場合もあります。「自分の年金にどれくらいの税金がかかるのか?」を把握し、必要に応じて確定申告を活用しながら、賢く節税対策を行いましょう。
年金制度を理解し、賢く対策することは、老後の生活を安定させるうえでとても大切です。最近では、税金や家計の見直しをきっかけに、住まいの選択を考える方も増えています。
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出版社勤務後、フリーランスのライターに。「難しいお金のことをわかりやすく」を目指して日々勉強中。保有資格:2級ファイナンシャル・プランニング技能士。
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