「健康と動脈硬化に関する意識調査」のアンケート結果
健康と動脈硬化予防を啓発する情報サイト「血管健康くらぶ」により20~60代の男女に実地された「健康と動脈硬化に関する意識調査」のアンケート結果です。
調査によると、3人に1人は健康診断を3年以上受診していおらず、コレステロール値を把握する人が最も少ないのは30代で11.7%。60代の3分の1。また、「動脈硬化って何? 」の質問に20代で答えられたのは20.8%(5人に1人)、年代が上がるごとに割合は増えますが、60代でも59.0%で、世代による意識の差が明らかになるなどの興味深いデータが得られました。
怖い病気は「がん」「脳卒中」がダントツで1・2位。3位は「心臓病」
「普段から『怖い』と感じている病気」を、各回答者に3つずつ選んでもらいました。トップ3は「がん」「脳卒中」「心臓病」。特に、半数以上の人が選んだ「がん」「脳卒中」は、他と大きく差を付ける結果となりました。
自分の血管は「自覚症状なく健康」が過半数。本当に安心して大丈夫?
「怖い病気」の上位に入った脳卒中や心臓病は、血管の老化やコレステロールが大きな原因となる病気です。そこで、「あなたの血管は、年齢の割には健康だと思いますか?」と質問すると、「自覚症状はなく健康だと思う」と答えた人が57.7%に上りました。
この結果について、帝京大学医学部附属病院 臨床研究センター・センター長の寺本民生医師は、以下のようにコメントしています。
「脳卒中や心臓病を引き起こすのが”動脈硬化”です。老化や余分なコレステロール、あるいは、持続する高血圧のため、動脈が硬く、もろく、狭くなる病気です。多くの場合、脳卒中や心臓病が発病し、発作が起こるまで自覚症状がほとんどありません。しかし、進行すると、もろくなっている動脈の粥種(じゅくしゅ。血管の内側にできる脂肪のかたまり)が破れるなどして、血管に血栓・塞栓ができます。血管がつまってしまい、突然、脳梗塞や心筋梗塞などの病気になるのです。動脈硬化は、自覚症状がないため”沈黙の殺人者”と呼ばれています。他の病気が発症するまで痛みや違和感がないからといって、血管に異常がないとは限りません」
健康診断を3年以上受診していない人が30%。20代は半数近くまで
“沈黙の殺人者”である動脈硬化の進行度を把握する大事な機会が、健康診断です。受診の状況を聞いたところ、3年以上受診していない人が全体の30%を越えました。
また、年代別に見ると、若い世代ほど健康診断の受診率が下がります。20代で3年以上受診していない人は、60代の倍以上。
寺本医師は「動脈硬化は男性では30代から進行すると言われています。ラーメンやパスタなどの麺類、脂たっぷりの霜降り牛など、特に若い方が大好きな食品は、血液中の中性脂肪やコレステロールを増加させます。塩分の摂りすぎによる高血圧とともに、動脈硬化を進行させる原因となります。若いうちから自分の血圧や体重を測定し、適度の運動やバランスの良い食事に心がけ、そして禁煙を習慣づけて、血管の健康に注意することが必要です」と警告します。
コレステロール値を把握している人、30代は60代の3分の1
血液中のコレステロール値は、動脈硬化の重要な指標となります。ここでも、世代によって大きな意識の差が見て取れました。
コレステロールは一般的な健康診断で検査できます。
では、どれだけの人が自分のコレステロールを把握しているでしょうか? 「コレステロール値を意識し自分の値を把握している」と答えた人は60代の43.1%に対して、20代で13.9%、30代は11.7%にとどまりました。年代により、最大で 3倍もの開きがあります。
コレステロール値を「意識していない」と答えた人は、20~30代で70%程度。約50%まで下がるのが40代です。40代は、健康への意識が変わる年代と言えます。
血管年齢への関心も40代で上昇
「血管年齢というキーワードを知らなかった」と答えた人は、もっとも多い20代でも35.4%。年代が上がるほど数値は下がり、40代で10%台に。「血管年齢が気になる(※)」と答えた人が、過半数を超えました。 60代に至っては、「血管年齢が気になる」と答えた人が78.5%と、関心の高さが伺えます。
※「自分の血管年齢が気になって、検査したので知っている」+「自分の血管年齢は気になるが、検査したことはないので知らない」の合算
寺本医師は以下のようにコメントしています。「動脈硬化の進行度(血管年齢)を測るには、CAVI検査やPWV検査、血管内皮機能のFMD検査、頸動脈エコー検査など、簡便な手法があります。しかし、検査できる病院が限られており、普及には検査のしやすさが課題となるでしょう。ただ、患者さんにとっては痛みを伴わない検査方法です」
動脈硬化とは何? 20代で答えられたのは20.8%(5人に1人)
まずは、「動脈硬化」というキーワードを聞いたことがありますか? と質問。一番少ない20代で80.6%、全年代平均では90%以上の人が「聞いたことがある」と回答しました。
続いて、「どんな状態で」「どんな原因で」「進行するとどのようになるのか」を聞きました(自由回答)。3つの回答欄にすべて回答できた人、できなかった人(無回答含む)をそれぞれカウント。さらに、前の質問で「聞いたことがない」と答えた人も合わせて集計したのが、次のグラフです。
20代で動脈硬化のことを説明できた人は、最大で20.8%。年代が上がるごとに割合は増えますが、60代でも59.0%です(41%の人は動脈硬化について詳しく説明できない)。特に若い年代は、キーワードは知っていても、動脈硬化に対する理解度は低いと言えます。
寺本医師の総評
一般の方々と接していて、健康への意識が年々高まっていることを感じています。血管の病気に対する注目度も上がっており、特に40代以上で血管年齢への関心が急増するというデータは、この傾向を裏付けているでしょう。
しかし、身体や病気に対して、正しく把握されているでしょうか? 医師の立場からは「もう少しがんばっていただきたい」というのが本音です。おそろしい心臓病や脳卒中を防ぐには、まず血管、動脈硬化について知ることが重要です。
動脈硬化にはさまざまな原因があります。血液中の悪玉コレステロールが血管の内壁にたまって行くことが、主な原因のひとつです。血管の壁がどんどん厚くなって弾力を失います。コレステロールはこぶになり、血流を止めてしまうことも。最悪の場合、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こすのです。
動脈硬化の進行を止める方法は、食事療法と運動療法、投薬治療があります。太っている人は、食物繊維をよくとり、栄養の吸収を減らすこと。そして、脂肪・たんぱく質・炭水化物のバランスの良い食事に心がけてください。栄養のバランスはもちろん重要ですが、ビタミン・ミネラル・繊維などできるだけ多くの種類の食物をとるようにしてください。
また、塩分はできるだけ少なくしてください。1日の塩分摂取量の理想は6.0gです。厚生労働省「日本人の食事摂取基準」によれば、18歳以上の男性は1日当たり8.0g未満、18歳以上の女性は1日当たり7.0g未満と目標量が定められています。
運動ももちろん大切です。オフィスでこまめに立ち座りをしたり、少し歩くスピードを上げるなど、日常でできることはたくさんあります。ぜひ、血管健康くらぶのWebサイトをチェックして、自分に合った生活習慣の改善を見つけてください。
■医師・栄養士に気軽に相談できる「血管健康くらぶ」
一般社団法人動脈硬化予防啓発センターと、公益財団法人 日本心臓財団が運営するWebサイト「血管健康くらぶ」は、無料のQ&Aサービスを実施しています。医師や栄養士といった専門家が、健康に関する質問を一般の方からメールで受付け、メールで回答します。質問、回答の閲覧に料金はかかりません。 http://www.doumyaku-c2.jp/soudan/
(グッドライフシニア編集部)