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認知症による徘徊はある日突然に|保護体験から学ぶ家族が知っておきたいこと

認知症による徘徊はある日突然に

家族が目を離したわずかなすきに外へ出てしまい、何時間も戻ってこない――認知症のある高齢者には、こうした行動が突然起こることがあります。

警察庁の統計では、2024年に認知症が原因で行方不明となり、警察に届け出があった人は1万8,121人にのぼります。

この記事では、認知症による徘徊が起こる理由や、行方不明になったときのリスク、家族ができる備えについて、実体験や警察の方から伺った話をもとにお伝えします。

 

1. 認知症の徘徊はなぜ起こる?

徘徊は、認知症の症状のひとつとして多く見られる行動です。といっても、意味もなく歩き回っているわけではありません。

記憶障害や、時間や場所の感覚がずれる「見当識障害」、不安や焦りなどによって、本人は「会社へ行かなければ」「家に帰らなければ」と思い込み、外へ出てしまうことがあります。

たとえば、昔の習慣が抜けず「会社に行かなきゃ」と思って家を出たり、家族を迎えに行こうとしたりすることもあります。あるいは、自宅にいても「ここは自分の家じゃない」と感じて、帰ろうとするケースもあります。

祖母に見られた徘徊の兆し

実際に私の祖母も、75歳を過ぎて同居が始まった頃から、黙って外に出てしまうことが増えました。住み慣れた家を離れ、生活環境が変わったことで、不安や混乱が強くなっていたのかもしれません。

家族で必死に探し回っていると、1駅、2駅離れた交番から「おばあさんを保護しています」と連絡がくる。そんなことが何度かありました。

当時は認知症という言葉も一般的ではなく、両親は「散歩好きにも程がある」と思っていたようですが、あれは立派な“徘徊”の始まりだったと思います。

祖母は昔話をしたり、会話の受け答えもしっかりできていました。ただ、「私、ご飯まだ食べてないよね?」「今何時?」と同じことを何度も尋ねることがあり、今思えば、これも認知症の初期症状だったのです。

同じことを何度も尋ねるような記憶の混乱は、外へ出て道に迷う行動とも無関係ではありません。

本人はどこかへ向かっているつもりでも、目的地にはたどり着けず、気づけば道に迷っている。しかし“迷っている”という自覚がなく、なぜ周囲が心配しているのかも分からないのです。
 

2. 筆者が実際に経験した徘徊の事例

筆者も、この数年で自宅近くの住宅街で、徘徊中と思われる高齢者を2回保護した経験があります。

いずれも普段の生活圏で起きたことで、認知症による徘徊は決して特別なことではなく、私たちの身近でも起こり得る問題だと感じています。

住宅街で座り込んでいた高齢男性を保護した夜

2月の午後7時ごろ。仕事帰りに自宅近くの住宅街を歩いていると、道端にうずくまる男性がいました。

「酔っ払いかな?」と思いつつも、時間帯や場所を考えると違和感があり、気になって近づくと、80歳半ばくらいの白髪の男性でした。

髪も身なりも整っており、清潔感のある方だったので、「大丈夫ですか?具合が悪いのですか?」と声をかけてみました。

私の顔を見上げて、「足が立たなくなっちゃって」と返答がありました。自力で何度も立ち上がろうとするも、うまくいかず。腕を支えると、よろよろと立ち上がって歩き出したのです。

そのまま腕を支えながら「おうちはどこですか?」「この辺に住んでるの?」と尋ねても、「すぐそこ、大丈夫」と繰り返すばかり。

どう見てもご近所の方ではなさそうだったので、警察へ110番通報しました。

POINT1:住宅街で様子がおかしい高齢者を見かけたら、すぐ交番や警察に連絡を

「おじいちゃん、そこは私の家だから、お迎えが来るまで少し休みましょう」と、すぐ先に見える我が家を指さし、警察が来るまで玄関先に座ってもらうことにしました。

体が震えていたので、家にいた家族に毛布と電気ストーブ、温かいお茶を持ってきてもらい、おじいさんの体を温めました。

POINT2:「大丈夫」と答えても、大丈夫ではないケースがほとんど

安心したのか少し元気になり、名前を尋ねると、大きな声でフルネームを教えてくれました。

30分ほどして到着した警察官によると、そのおじいさんは朝から家族が捜していた認知症の男性で、服装と名前から本人確認が取れました。

冬の寒い夜に、もしそのまま放置していたら、低体温症や転倒による怪我など、命に関わるリスクも考えられました。

POINT3:発見が遅れれば、命の危険もある

警察の方の話では、娘さんの車で朝9時に病院へ行き、診察後、娘さんが会計中に姿が見えなくなったとのこと。そこからなんと、5km以上離れた場所まで5時間ほど歩き続けていたのです。

「外出中に家族とはぐれて行方不明になる認知症の方が、実は多いんですよ」と話してくれました。

「通報が遅れると発見までに時間がかかり、命に関わることも。早めにご連絡いただけると、安全に保護できる可能性がぐっと高まるんです」とのことでした。
 

数軒隣に住む高齢男性を自宅まで送り届けた昼下がり

ある夏の昼下がり、買い物に行こうと表通りに出ると、中年の女性がシャツにステテコ、サンダル姿のおじいさんの腕を取り、支えるように歩いている場面に遭遇しました。

「このおじいさん、どこに住んでいるか知りませんか? その先の道に座り込んでいたんです。話しかけても返事がなくて……。この服装なので、この辺に住んでいる方だと思うのですが」そう声をかけられ、顔を見ると、数軒隣に住む顔見知りのおじいさんでした。

その女性と一緒に腕を支え、家まで無事に送り届けました。

出迎えた息子さんは、「テレビを見ていると思っていたのに、出て行ったことに全く気づかなかった。そんな恰好で出て行くなんて」と驚いていました。

POINT:肌着やパジャマにも、名前や連絡先を書いた布を縫い付けておくと安心です

顔見知りだったため無事に帰宅できましたが、誰にも気づかれなければ、事故や体調悪化につながっていた可能性もあります。

この件の前にも、家からいなくなって家族が探し回ったことが2回ほどあったそうです。その後、その方は介護施設へ入所されました。

POINT:徘徊があったら早めに備えを。家族だけで抱え込まず地域包括支援センターなどに相談しましょう

3. 徘徊は自宅だけでなく外出先でも起こる

徘徊と聞くと、「自宅からふらりと出ていって行方がわからなくなる」といったイメージを持つ方が多いかもしれません。

ですが実際には、病院の待合室や、スーパー・レストランなどの外出先でも、突然、姿が消えることがあります。

たとえば、家族が会計をしている間に一人で立ち上がり、そのまま出て行ってしまう。「あれ?どこ行った?」と気づいたときには、すでに姿が見えない。そんなケースも決して珍しくありません。

認知症の方は、記憶障害や見当識障害によって、「ここはどこ?」「なんで自分はここにいるの?」といった強い不安を感じることがあります。

その不安を解消しようとする行動のひとつが、“その場を離れて確かめに行く”という形で現れるのです。

本人には「帰らなきゃ」「確認しなきゃ」といった目的があり、危険な行動という自覚はありません。そこに、認知症による徘徊の怖さがあります。

こうした徘徊に備えるために、家族が今すぐできる対策を詳しくご紹介します。
認知症の徘徊対策|家族が今すぐできる5つの備えと早期発見のポイント

筆者:松尾まみ
松尾まみ学生時代より情報誌や雑誌で旅ライターを始め、国内・海外の取材歴8年。結婚と出産で休業。その後、オーガニック化粧品・食品の会報誌の編集を経てWEBに転身。介護、不動産、健康などの記事の執筆と高齢者向けサイト運営を16年。その間、自身も親の介護を経験しながら現在に至る。

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