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自宅でもできる!認知症リハビリテーションのすすめ

音楽

リハビリテーションとは、何らかの障害を受けた人に対して、身体的・精神的に回復させることや、回復しなくても今ある機能を維持・悪化防止することを言います。

本人のQOL(生活の質)を高めることを最終的な目標にしていますが、認知症においても、リハビリテーションがたいへん重要です。

しかし「リハビリ」という響きから、病院やデイケアなど、専門施設への通院・費用のことで不安をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

実は認知症のリハビリは、自宅で簡単に、楽しく取り組めるものも多いのが特徴です。

今回は数あるリハビリの中から人気のあるリハビリ法をご紹介いたします。

 

1,認知症のリハビリテーションとは

まず初めに知っておきたいことは、認知症のリハビリ目的です。

残念ながら現在の医療では、一度認知症を発症すると完治することはできません。そのため、認知症におけるリハビリは「症状の進行を防ぐ、進行のスピードを遅らせる」ことを目的としています。

また認知症の方は、記憶力の低下などから自信を無くし、自分の殻に閉じこもりがちになることもよく見られます。

そのため認知症のリハビリには、生活にメリハリをつくり、活動意欲を向上させることも期待されています。

今ある脳の機能をできるだけ長く維持し、認知症の方にとって生活の楽しみとなることが、認知症リハビリの第一の目的となります。

 

2,具体的なリハビリ方法

リハビリの多くは日頃の生活に取り入れることが可能なものです。なるべく毎日行うことでより高い効果が期待されますが、無理をしないのが肝心。本人の様子を見ながら休息日を設けるようにしてください。

それでは、自宅でできるリハビリをご紹介します。

 

回想法

認知症の方のなかには「最近のことは忘れてしまっていても、昔のことはよく覚えている」という人が少なくありません。そこで有効なリハビリのひとつに回想法があります。

回想法とは、昔の写真や音楽、大切にしていた思い出の品などを通して、自分の人生を振り返る心理療法です。

昔の写真や思い出の品を見ながら、または昔の音楽を聴きながら、「小学生のころはどんな遊びをしていたの?」「この歌が流行ったころは何をしていたの?」など、自分の歴史を自由に語れるように促しましょう。

これまでの自分について語ることは、自分の人生の誇りや自信回復につながり、その結果として精神的な安定を得ることが出来ます。

また、思い出話から当時の高揚感を再体験することは、記憶力や集中力が使われて脳にとっても心地よい刺激となり、良好なコミュニケーションを築くきっかけにもなります。

 

音楽療法

音楽療法とは、音楽の持つリラックス効果や、脳への刺激を利用して患者の生活の質(QOL)の向上を図るリハビリです。

方法としては、①音楽を聴く、②楽器を演奏する、③歌を歌う、の3つがあります。

好きな音楽を聞くことでリラックスし、血液の循環が良くなることで、沈静化している神経細胞への心地よい刺激が期待できます。

中でも実際に自分の体を使う「能動的音楽療法=演奏する・歌う」は、リハビリにおいて高い効果をもたらすと言われています。

 

作業療法

手工芸などのさまざまな作業を通して、身体や精神に障害を持つ人が生活のために必要な動作や社会に適応するための能力を回復することを目指す治療です。

認知症の方にとっては、気分転換や生活意欲の向上に繋がり、作画や工作、折り紙などの手作業によって脳の活性化を図ります。

例えば絵を描くとき。対象物が「りんご」なら、実際に触れ、匂いを嗅ぎ、食べてみるまで取り組むと、五感がフル活用され、脳の活性化を一層促します。
 

アニマルセラピー

アニマルセラピーとは、動物と触れ合うことで心理的な安心感や癒しを享受し、ストレス軽減を目的としたセラピー療法です。

「動物と触れ合うこと」「動物をかわいいと感じること」「動物の世話をすること」は、人の感情に起因し、精神衛生の安定、向上に非常に効果的です。

アニマルセラピーの歴史は古く、古代ローマ時代から負傷した兵の治療に馬が用いられていました。現代のアニマルセラピーでは犬や、イルカの力を借りた療法が一般的です。


アロマセラピー

ドイツではアロマセラピーが医療として認知されています。植物から抽出した精油(エッセンシャルオイル)を使用するセラピーです。

嗅覚をつかさどる臭神経は、大脳から分岐したつくりになっており、快・不快の感情を直に刺激します。

そのため、嗅覚への刺激は認知症の予防やリハビリに効果をもたらすと考えられています。

「部屋に香る香りを楽しむ」「入浴時にお湯に入れる」など、アロマセラピーにはいろいろな方法があります。直接脳に刺激を与えるものなので、本人の好きな香りを選ぶことが最も重要なポイントです。

また香りによって、より効果を得られやすい時間帯があります。

例えばラベンダーには心身への鎮静作用があり、睡眠導入時に使用することで昼と夜の逆転生活が安定し、徘徊が減ったというケースが報告されています。

~おすすめの組み合わせ~
(朝)ローズマリーとレモン:集中力を高め、記憶力を強化する
(夜)ラベンダーとオレンジ:心や身体への鎮静作用がある

 

3,リハビリをするうえでの注意点

認知症になっても、喜怒哀楽といった感情やプライドは残っています。理解力や記憶力などが低下する分、感情が敏感になって、より繊細になるともいわれています。

いくら効果がある方法であっても、本人にとって不快であれば、「不適切な介護や環境」となってしまいます。そして、不適切な介護が一因となって起こる、暴言や不潔行為などのBPSD(認知症の行動・心理症状)につながってしまう危険性もあります。

そのため、本人の意思を尊重し、主体的に取り組んでもらうことが、認知症のリハビリテーションにおいても最も重要です。

例えばモーツァルトよりビートルズが好きならビートルズを。自分の話をするのが苦手なら無理強いせず、まずはこちらから心を開いて話をしてみましょう。

臨機応変に対応し、本人が生き生きと取り組めるものを見つけることが、認知症のリハビリテーションにおいて最大の効果をもたらす近道です。
 

~リハビリのポイント~
◎無理なく続けられるものを本人に合わせて
体調のすぐれないときや、本人の希望を尊重せずに無理をすると、「リハビリテーション=嫌なもの」という印象を与えてしまいます。
一人一人に合った方法を一緒に探したり、本人の興味が向くまで気長に待ってみたり、ほどほどに取り組む姿勢が大切です。

 
◎上から目線で行わない
認知症になっても、喜怒哀楽やプライドは残ります。認知症だから何を言ってもわからないし、傷つかないとするのは大きな間違いです。介護者は本人の意思を尊重し、対等なコミュニケーション・人間関係を築くことを意識しましょう。
赤ちゃん言葉をつかったり、失敗すると叱ったりなど、くれぐれも「子ども扱い」は厳禁です。

◎「脳」だけでなく全身のメンテナンスも併せて行う
認知症になっても体が健康であることの大切さは、変わりません。体力が低下したり、体を自由に動かせなくなったりすると、認知症が急激に進む可能性があります。
栄養管理や運動は、生活習慣病の予防のためだけでなく脳への刺激にもなり、認知症の人にはさらに大切なもの。ストレッチや散歩など、本人の体の状態に応じたものを考えて始めてみましょう。

 

「認知症だと何もわからないから」「失敗するとかわいそうだから」と、消極的な生活になってしまう人もいます。でも、生活に刺激が少なくなると認知症の進行を早めてしまう危険度が高まります。

リハビリなどによる適度な刺激は、認知症の進行のスピードを遅らせることができます。そして、家族とのコミュニケーションや生活の楽しみにつながり、本人だけでなく家族にとっても良い効果が期待できます。

主治医などの意見も聞きながら、無理のない範囲でぜひ始めてみましょう。

 
参照:一般社団法人 日本作業療法士協会「認知症のリハビリテーションを推進するための調査研究」
厚生労働省「認知症|こころの病気を知る|メンタルヘルス」

 

ひしもと筆者:ひしもとなつ
都内の大学を卒業。現在は、フリーライターとしてグルメや街情報の取材記事などを書いています。グッドライフシニアでは街紹介や特選物件記事を担当しています。両親も祖父母も元気ですが介護や福祉などについて勉強中。
 

 

監修:河田幸奈
会社勤務を経て、高齢者分野を中心に活動するフリーライター。「高齢者ご本人やそのご家族、そして介護職が、自分の人生を大切にできる社会」について考え中。保有資格は社会福祉士。

 

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