介護が必要になるきっかけは、人それぞれですが、加齢によって徐々に身体機能が低下する場合もあれば、予測していなかった病気やケガによって、ある日突然介護生活が始まる方もいらっしゃいます。
今回ご紹介する「脳血管疾患」は、そんな突然の介護のきっかけとなる病気の一つです。
脳血管疾患について理解を深め、予防を心がけていきましょう。
1, 脳血管疾患(脳卒中)とは?
脳血管疾患とは、脳血管のトラブルによって脳細胞が破壊される病気の総称です。様々な種類がありますが、最もよく知られているのが「脳卒中」と呼ばれるものです。
国の調査でも介護が必要になる原因として1位の認知症に続き第2位に入っている頻度の高い病気です。
脳卒中には、原因の異なる2つのタイプがあります。
血管が破れる
出血性脳血管疾患(脳出血、くも膜下出血)
血管が破れることによって生じる脳卒中。「脳出血」や「くも膜下出血」が挙げられます。
加齢に伴って発症率が上がっていくほか、長年にわたり高血圧を患っている方なども注意が必要。
血管が詰まる
虚血性脳血管疾患(脳梗塞、一過性脳虚血発作)
血管が詰まってしまうことで生じる脳卒中。「脳梗塞」や、脳梗塞の前触れともいえる「一過性脳虚血発作(TIA)」があります。
動脈硬化が原因で発症することが多く、高血圧や高脂血症、糖尿病や心臓の不整脈(心房細動)を持っている方は、特に気を付けなければなりません。
2, 脳血管疾患の主な原因と予防策
脳血管疾患になる人に共通して多くみられる要素は、高血圧や動脈硬化といった生活習慣病、喫煙、肥満、大量の飲酒などです。
特に高血圧や動脈硬化は脳梗塞や脳出血に大きく関わっていると言われており、中高年~高齢者の発症リスクが高い傾向にあります。
それでは、疾患別に原因を見ていきましょう。
主な原因
高血圧から「脳出血」へ
高血圧の人は「脳出血」に注意してください。高血圧により動脈硬化が進行していたり、血管に強い圧力がかかったりすると、脳内の細い動脈が破れて脳出血を起こす原因となります。
高血圧以外にも、血栓の病気で抗血小板療法、抗凝固療法などの治療を行っている人も注意が必要です。
「くも膜下出血」の原因は動脈にできたコブ?
くも膜下出血を引き起こす主な原因は、脳の動脈にできたコブ(脳動脈瘤)の破裂と言われています。脳動脈瘤は約5%の人が持っているとされていますが、破裂を起こすケースはごく稀です。
破裂する原因は解明されていませんが、生まれつき動脈壁が弱いことが関係しているのではと考えられています。
生活習慣病が「脳梗塞」「一過性脳虚血発作」の原因に
脳梗塞は糖尿病や高血圧、動脈硬化、脂質異常症(高脂血症)などの生活習慣病が大きく影響しており、喫煙習慣や肥満なども発症を促進すると言われています。
また、不整脈や心臓疾患によって心臓に血栓ができ、それが脳に流れていくことで脳血管を詰まらせ、発症してしまうことがあります。
生活習慣の改善で脳血管疾患を予防しよう
脳血管疾患を予防するためには、発症の危険因子となる生活習慣の乱れを見直し、改善していくことが大切です。
栄養の摂りすぎや過剰な飲酒、運動不足、強いストレスといった生活習慣・環境は、脳血管疾患の原因となる高血圧や糖尿病、心疾患、高脂血症などにつながるため、積極的に改善に取り組んでいきましょう。
特に、普段の食生活で塩分を摂りすぎている人は高血圧になるリスクが高いため、減塩を意識していきましょう。
さらに、適度な運動や禁煙、適切な飲酒量を心がけて肥満を予防することや、ストレスをため込まないよう上手に発散することも大切です。
既に生活習慣病を患っている場合には、主治医と相談しながら必要な薬をきちんと服用し、危険因子をコントロールしていきましょう。
生活習慣の乱れは、脳血管疾患に限らず、がんを始めとするさまざまな病気の原因となりうる危険なものです。
長年続けてきたことを急に変えるのは簡単ではないかもしれませんが、1日でも長く健康に過ごせるよう、周囲のサポートも受けながら無理なく取り組んでいきましょう。
3, こんな症状が見られたらすぐに病院へ!
これらの症状が見られた場合には、すぐに病院に行くようにしてください。
脳出血・脳梗塞・一過性脳虚血発作(TIA)の症状
脳出血と脳梗塞では、ほぼ同じ症状が見られます。一過性脳虚血発作も同様の症状を起こしますが、短時間(通常1時間以内)で消失するのが特徴です。
頭痛やめまい、嘔吐などは脳卒中以外の病気でもよく起こる症状なので、判断が難しいかもしれません。
脳卒中を疑う際に重要なポイントは「突然起こる」こと、そして★印のついた「顔、腕、言葉の異常」を見逃さないことです。
・右手足、左手足など半身に生じる麻痺や感覚異常(★)
・ろれつが回らないなどの言葉の異常(★)
・意識状態の悪化
・目が見えにくい
・歩行障害
・頭痛
・めまい
・嘔吐
・痙攣
・呼吸障害など
くも膜下出血の症状
くも膜下出血の場合も、激しい頭痛が「突然起こる」のが特徴です。
多くが吐き気や嘔吐を伴い、意識が朦朧としてきます。これらの症状が見られたら、速やかに病院に行くようにしましょう。
また、発症前の警告症状として、ズキズキとする頭痛が1日~2日程度持続することがあります。稀に風邪と勘違いするほど軽い頭痛の場合もありますので、油断は禁物です。
物が二重に見える、見えにくいといった症状も感じる場合には、軽い頭痛であっても早めに受診するようにしてください。
・意識が朦朧とする、意識を失う
・嘔吐
・血圧の上昇
・手足の麻痺
・物が二重に見えるなど
まとめ
脳卒中は発症頻度が高く、私たち日本人にとって身近な病気です。一度発症すると寝たきりになってしまう可能性もあり、予防が何よりも大切。
「私は大丈夫だろう」と軽く見ずに、原因となる要素をきちんと知って改善に取り組み、発症リスクを減らしていきましょう。
また、脳卒中を発症した場合は、救命や予後のためにも治療開始までのスピードが非常に重要。一分一秒でも早く適切な治療を行い、脳へのダメージを抑える必要があります。
少しでも疑わしい症状がみられたら放置せず、すぐに病院に向かうようにしてください。
学習院大学法学部政治学科卒業。IT企業に3年間勤め、退職後はライターとして高齢者の介護や福祉、健康分野の記事を執筆しています。福祉分野の専門性を高めるため、現在は社会福祉士の国家試験を取得しています。
■脳血管疾患(脳卒中)のリハビリは急性期から始めることが大切
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