ある日突然に発症することのある脳血管疾患(脳卒中)。発症した場合、その後のリハビリは大きく分けて「急性期」と「回復期」「維持期」の3段階があります。
脳卒中を発症したら急性期にリハビリを始めることが、その後の機能回復につながる可能性が指摘されるようになってきました。
万が一、脳卒中にかかってしまったら、どのようなことに注意しながらリハビリを進めていけばよいのか、このページでは後遺症やリハビリについて分かりやすく解説いたします。
脳卒中は急性期治療が大切
急性期とは、病気が発症した2週間までの症状が急激に現れる時期を指します。
回復期は発症から約3~6ヶ月の身体機能の回復を図る時期を意味します。
その後は、自宅や施設でリハビリを行う維持期となります。
脳卒中の急性期では、より重篤な病状へと進行しないように治療を行います。脳卒中は急性期に病状が急変しやすく、この時期にどれだけ治療できるかがその後の後遺症に大きく関わってくるため、非常に重要です。
処置の内容は脳卒中の種類によって異なります。
例えば脳梗塞の場合、血管を詰まらせている血栓(血のかたまり)を溶かし、血流を回復させる「血栓溶解療法」があります。
こうした急性期治療は早ければ早いほど、脳へのダメージも少なく抑えることができるため、できる限り早めに医師に診てもらい、治療を開始することが大切です。
具体的には発症してから3時間~4.5時間以内に血栓溶解療法や血管内の治療を行うことで、助かる確率が30%上がると言われています。
脳卒中の主な後遺症
脳卒中の後遺症は、脳の損傷部位や程度によって症状が異なります。
これらの症状を改善し、生活の質を向上・維持するためには、発症後の適切なリハビリが重要となります。
・身体麻痺(運動障害)
・身体の感覚が鈍くなる(感覚障害)
・言葉が出ない、理解できない(失語症)
・食べ物・飲み物を飲み込めない(嚥下障害)
・記憶力や注意力、行動力などに問題が起こる(高次脳機能障害)
脳卒中に関する記事は脳血管疾患(脳卒中)の症状や原因を知って予防を心がけようをご覧ください。
急性期治療によって症状を抑え容態が安定してきたら、次は身体機能の回復に向けリハビリに取り組んでいきます。
回復に重要な役割を持つリハビリ
脳卒中発症後のリハビリテーションは、できるだけ早く始めることで予後が格段によくなることが分かっています。
リハビリによって訓練し、刺激を与えることで脳の回復を促します。
通常、6カ月以内までは病状が回復することがあると言われていますので、前向きに、そして根気よくリハビリに取り組むことが大切です。
リハビリの流れ
病院で治療を受けて容態が安定した後、継続的なリハビリが必要と判断された場合には、回復期リハビリテーション病院(病棟)への入院手配を進めましょう。
脳卒中発症後2・3ヵ月以降は「回復期」と呼ばれ、集中的なリハビリを早期に始めることで後遺症の改善が期待できます。
回復期リハビリテーション病院(病棟)に入院する
発症時に入院した病院の中に回復期リハビリテーション病棟が設置されていれば、そちらへの入院手続きを進めます。
設置されていない場合には新たに病院を探して転院することになります。あらかじめ回復期のリハビリについて詳しいスタッフを確認しておき、今後の動きについて相談しておくと良いでしょう。
また、回復期リハビリテーション病院(病棟)への入院には条件や期間の定めがあるため、注意が必要です。
・リハビリの頻度:最長3時間のリハビリを毎日受けることができる
・入院期間:150日間または180日間
※病状によって期間の上限が異なります。
※治療を継続することで状態の改善が期待できると主治医に判断された場合には、入院を継続し、同じ頻度でのリハビリを続ける場合もあります。
回復期リハビリテーション病院(病棟)は、医師の判定によって基準を満たせない場合や、転院までの期間に空床が出ない場合もあり、リハビリを必要と感じる方が必ずしも入院できるとは限りません。そんなときには、介護保険を利用する方法があります。
介護保険を活用し、介護老人保健施設(老健)に入所する
リハビリテーション病院への入院が難しい場合や入院期間が終わった方には、要介護認定を受けて介護老人保健施設(老健)に入所し、リハビリを継続するという方法もあります。
老健は在宅復帰を目的としてリハビリを行う介護保険施設です。
利用するには「65歳以上」「要介護1以上の認定」という条件がありますが、脳血管疾患の場合には40~64歳の方でも認定を受けて利用することができます。
身体介護や生活援助だけでなく、医師や看護師、リハビリ専門職などの職員体制が充実しています。
在宅復帰を目標としているため、入居期間は3~6ヶ月と限定的です。
リハビリ後に利用できるサービス
回復期リハビリテーション病院(病棟)や老健でのリハビリを終えた後も引き続きリハビリや介護が必要という方は、次のようなサービスの利用を検討してみてください。
自宅で生活しながらリハビリを受ける
・訪問リハビリテーション
・通所リハビリテーション(デイケア)
介護付き有料老人ホームに入所する
自宅での受け入れが困難な場合、長期間安心して暮らせる「介護付き有料老人ホーム」への入居がおすすめです。
理学療法士や作業療法士などの専門職が入居者の身体状況に合わせてリハビリを行ってくれるので、機能の維持・向上に継続して取り組むことができます。
また、ラジオ体操や書道教室、カラオケなどのレクリエーション、お誕生日会や季節ごとの行事などイベントの充実した施設が多く、入居者が明るく前向きに過ごすことができる環境が整っています。
高齢者が罹患しやすい病気の上位を占める脳血管疾患は、前触れなく突然やってきます。
日ごろから予防を心がけることが何よりですが、万が一に備えて、慌てることがないよう前もって対応の流れを知っておくことも大切です。

学習院大学法学部政治学科卒業。IT企業に3年間勤め、退職後はライターとして高齢者の介護や福祉、健康分野の記事を執筆しています。福祉分野の専門性を高めるため、現在は社会福祉士の国家試験を取得しています。
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