年間の食中毒の患者数の約半分はノロウイルスによるもので、11月~3月にかけてピークを迎えます。感染力が強いため、集団食中毒の発生を起こしやすいため注意が必要です。
高齢者が罹患した際には、救急搬送や入院となるケースもあります。
なぜ高齢者のノロウイルスに注意が必要なのか、予防法とあわせて分かりやすくご紹介します。
≫1.ノロウイルスとは
・ノロウイルス発生数、感染経路
≫2.ノロウイルスの検査は基本的に自費診療
・診断法や治療法
≫3.高齢者は脱水症状を起しやすいため要注意
≫4.高齢者のためのノロウイルス予防法
1.ノロウイルスとは
ノロウイルスとは、嘔吐や下痢などの症状を起こすウイルスのことで、手指や食品などを介し小腸に感染し腸管に増殖します。
潜伏期間(感染から発症までの時間)は1~3日。学校や施設などで集団発生を引き起こす可能性がもある感染力が強いウイルスです。
主な症状は吐き気や嘔吐、下痢、腹痛、微熱などです。これらの症状が1~2日間続いた後に治癒し、後遺症も残りません。
また、感染しても発症しない場合や、軽い風邪のような症状の場合もありますが、特に、体力の弱い乳幼児や高齢者の方は脱水を起こしたり、体力を消耗したりしないように注意が必要です。
ノロウイルスの発生数
ノロウイルスは年間を通じ発生していますが、11月から発生数が増加しはじめ、翌1月頃にピークを迎えます。
(図:ノロウイルス発生数 データ:厚生労働省)
感染経路
感染経路は、“人から人・人から食品・食品から人”の3つです。
2.ノロウイルスの検査は基本的に自費診療
ノロウイルスの場合、症状と経過から診断されることが多々あります。しかし、職場や施設でノロウイルスが出ると、特に飲食店勤務だと各自でノロウイルス検査を受けなくてはならない場合も出てきます。
その際に注意したいのが、ノロウイルスの検査は基本的に自費診療だということです。ただ、保険診療で検査を受けることができる人もいます。
保険診療で検査ができる人
保険診療で検査ができる人 |
---|
3歳未満 |
65歳以上 |
悪性腫瘍の診断が確定している患者 |
臓器移植後の患者 | 抗悪性腫瘍剤・免疫抑制剤、または免疫抑制効果のある薬剤を投与中の患者 |
診断する上で、ELISA法と呼ばれる簡易迅速検査やBLEIA法があります。それぞれ診断までの速さ・正確性が異なります。
ワクチンや抗ウイルス剤はない
現在、ノロウイルスにはワクチンがなく、効果的な抗ウイルス剤もありません。
治療法としては、症状軽減・治癒力を高める対症療法が行われます。嘔吐・下痢で脱水症状が酷い場合には、点滴を行う場合もあります。
3.高齢者は脱水症状を起しやすいため要注意
高齢者がノロウイルスに感染すると、重篤化するケースが多々見られるのは、高齢者が脱水に弱いことが深く関係しています。
加齢とともに体液量が減少していきます。更に食事の量や質が低下したり、飲み物を飲むペースが落ちたりして、水分や塩分量が不足しがちになります。
こうした状況下でノロウイルスに感染し、嘔吐・下痢を繰返すと水分や電解質が失われるため、脱水症状を引き起こしやすくなるのです。
4.高齢者のためのノロウイルス予防法
1.飲食面
生の魚介類や加熱が不十分な肉類、生卵は控えるようにしましょう。食べる場合は、しっかりと加熱を行うことが大切です。
魚介類を調理する際「生食用」と表示のないものは、中心部分を1分間85度以上で加熱しましょう。
また、牡蠣やアサリ・シジミなどの二枚貝は、ノロウイルス感染源となる可能性が高いので避けるようにしましょう。
2.衛生面
手洗い、うがいを徹底することが大切です。帰宅してすぐ、調理の前後、食事の前、トイレの後など、こまめに洗います。
手洗いの際はハンドソープを使用し、手の甲・指の間・爪の中・手首と、しっかりと洗うことが大切です。
また、ふきん・まな板などの調理器具は、水で薄めた塩素系漂白剤で消毒をしましょう。
詳しい細菌やウイルスの撃退法については、こちらの記事を参考にしてください。
■コロナに加え食中毒も注意!細菌・ウイルス撃退法でしっかり予防
3.免疫力を高める食材を摂る
ノロウイルスを防ぐためには、ウイルスに対する抵抗力・免疫力をアップさせることが重要です。日々の食事で積極的にとりいれていきたい食材には以下のようなものがあります。
腸内環境を整える食材 | ヨーグルト、オリゴ糖 |
---|---|
抗菌作用がある食材 | 香りが強い野菜、ハーブ、薬味 |
解毒作用がある食材 | 玉ねぎ、梅干し |
高齢者は脱水などのリスクから、特に注意をしたいノロウイルス。感染を未然に防ぐためには、手洗い・うがいという基本的な方法から、食事や衛生面を含めた方法に気を配りましょう。
家庭でできる予防対策を習慣として実践しながら、健やかな生活を送ることができるようにしていきましょう。
参照:厚生労働省「ノロウイルスに関するQ&A」
首相官邸:「ノロウイルス(感染性胃腸炎・食中毒)対策」
国立感染症研究所:ノロウイルス感染症とは
(文:グッドライフシニア編集部 ライター小窓まどか)
■放っておくと危ない!高齢者の高血圧(症状や対策)
■お酒は体に良いの?悪いの?アルコールとの上手な付き合い方
■高齢者のむくみの原因と対策
■高齢者が発症しやすい「胃食道逆流症」の原因と対策
■【歯科医監修】70歳から虫歯急増!歯の数を減らさない7つのお口ケア
■骨粗しょう症の原因と予防法
LDL(悪玉)コレステロールは何が「悪」?体への影響を知って動脈硬化を予防しよう
■その不調、薬の副作用かも?高齢者が気を付けたい服薬トラブル(原因と対策)
■【薬剤師が教える】お薬手帳の正しい使い方|シニアが確認しておきたい6つのポイント