
シニア世代になると「のどが渇いた」と感じにくくなり、気づかないうちに脱水状態になっていることがあります。
特にお風呂の前後は、大量の汗をかくため、水分不足になりやすいタイミングです。
「なんとなくめまいがする」「入浴後に疲れがどっと出る」——そんなときは、水分不足のサインかもしれません。
このページでは、60代以降の方に知っておいてほしい「入浴と水分補給の関係」について、いつ・どのくらい・何を飲めばよいのか、わかりやすく解説します。
なぜ入浴に水分補給が必要なのか?
入浴前後の水分補給は、脱水やめまいを防ぐだけでなく、入浴効果を高めるためにも大切です。シニア世代は脱水に気づきにくいため、意識的な水分摂取が必要になります。
入浴は思った以上に汗をかきます。湯船に10〜15分つかるだけでも、200〜500mlの水分が体から失われるといわれています。とくに高温のお湯や長風呂は発汗量が多く、体内の水分バランスを崩す原因になります。
また、シニア世代は加齢により「のどの渇き」を感じにくくなっているため、脱水に気づきにくい傾向があります。気づいたときには頭痛・ふらつき・倦怠感などの脱水症状が出ていることも。入浴前後の水分補給は、健康のための必須習慣です。
季節にかかわらず脱水は起こります。特に冬は乾燥で水分が奪われ、夏は発汗量が増えるため、シニアは一年中注意が必要です。
入浴中・入浴後に出やすい“脱水のサイン”とは?
次のような症状があるときは、軽い脱水が始まっている可能性があります。
- 立ち上がるとふらつく
- 頭がぼーっとする、めまいがする
- 口の中が乾く
- 脈がいつもより速い
- 足がつりやすい
「なんとなく変だな」と感じたら、無理をせず水分を補給し、体を休めることが大切です。
入浴前後の水分は、いつ・どのくらい、どのタイミングで飲む?
入浴前後の水分補給には「適切なタイミング」と「適量」があります。とくにシニア世代はのどの渇きを感じにくいため、入る前・出た後にあらかじめ決めて飲む習慣をつけることが、安全に入浴するための大切なポイントです。
入浴前の水分補給は?
入浴の15〜30分前に、コップ1〜2杯(約250〜500ml)の水を摂取するのが理想です。常温の水や麦茶がおすすめで、冷たすぎるものは胃腸に負担をかけることもあるため避けましょう。
高温のお湯に入る方や、長めの入浴を好む方は、やや多めに飲んでおくと安心です。
入浴直前に大量の水を飲まないほうがいい理由
入浴の直前に一気に水を飲むと、胃に急激に水分が入り、血流が一時的に胃へ集中します。その結果、脳への血流が減り、ふらつきやのぼせを起こしやすくなることがあります。
とくにシニア世代は自律神経の働きが弱くなるため、急激な体温変化や血流変動の影響を受けやすく、「入ってすぐに立ちくらみがする」原因にもなります。
そのため、入浴前の水分は“一気飲み”ではなく、15〜30分前にゆっくり吸収させることが安全につながります。
入浴後の水分補給はタイミングが重要
お風呂から上がったら10分以内に1杯(250ml程度)を目安に水分をとりましょう。汗がまだ引いていない場合は、さらにもう1杯飲むとよいです。入浴中は気づかないうちに水分を失っているため、体が冷える前に補給することが重要です。
とくに高血圧の薬(利尿剤)を服用している方は、入浴中の水分が失われやすい傾向があります。ふだんより意識して水分を補うようにしましょう。
どんな飲み物がいい?避けたい飲み物は?
水、白湯、麦茶、経口補水液などが最適です。体に優しく、利尿作用も少ないため、効率よく水分を吸収できます。
一方で、以下のような飲み物は注意が必要です。
- コーヒーや緑茶などのカフェイン飲料:利尿作用が強く、逆に水分が排出されやすい
- アルコール類:脱水を助長するため、入浴前後には不適切
夜に入浴する方は、カフェイン飲料が睡眠の質に影響するため、夕方以降は控えめにすると安心です。
シニアの水分補給で気をつけたいこと
持病(心臓・腎臓疾患など)がある場合は、水分の摂りすぎにも注意が必要です。自己判断せず、かかりつけ医に相談したうえで、適量を守るようにしましょう。
また、一度に大量に飲むのではなく、こまめに少しずつが基本です。飲みにくい場合は、ストローや好きなコップを使ったり、家族の声かけを習慣化するのもおすすめです。
以上、お風呂で脱水が起きる理由と、入浴前後に取り入れたい水分補給の方法をご紹介しました。
「のどが渇いたと感じてから飲む」のではなく、「少し早めに、こまめに飲む」ことが何より大切です。
毎日の入浴は、疲れを癒し、心を整える大切な時間でもあります。ほんの少し水分補給を意識するだけで、めまいやだるさを防ぎ、入浴後の心地よさもぐっと高まります。
今日からできる小さな習慣を積み重ねていくことが、将来の健康トラブルを防ぎ、元気に暮らすための大きな力になります。
「無理をしない」「自分の体のサインに気づく」—— その2つを意識しながら、安心・安全な入浴習慣を続けていきましょう。
お風呂の健康効果についての詳しい記事はこちらから。
⇒ 入浴がもたらす健康効果とは?|60代から見直したい“お風呂習慣”
シニアにおすすめの入浴時間や適切なお湯の温度についてはこちらから。
⇒ 体にやさしい入浴時間と湯温|入浴に注意が必要な場合とは?
(グッドライフシニア編集部 松尾)
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