60歳を過ぎると、体の調子や感じ方に少しずつ変化が出てきます。筋肉のこわばり、冷えやすさ、寝つきの悪さ──そんな悩みに意外と効果的なのが「毎日の入浴習慣」です。
特に夏は、暑さからシャワーで済ませがちですが、シニア世代にとっては、湯船に浸かることが健康維持に大きく役立ちます。冷房で冷えた体を温め、疲れを癒し、ぐっすり眠れる体調を整える効果もあるのです。
このページでは、60代から見直したい入浴習慣について、健康効果・おすすめの湯温や入浴時間・注意点をわかりやすく解説します。
1. 入浴がシニアにもたらす健康効果とは?
入浴には、心と体の健康を支えるさまざまな効果があることが、近年の研究から明らかになっています。
たとえば、千葉大学予防医学センターなどが行った「JAGES(日本老年学的評価研究)」の調査によると、週に7回以上湯船に浸かる習慣のある人は、要介護状態になるリスクが有意に低いという結果が出ています。これは、日常的な入浴が筋力の維持や血流改善に貢献し、介護予防につながっている可能性を示しています。
さらに同研究では、入浴の頻度が高い人ほど、認知症の発症リスクが低い傾向も見られました。身体のケアだけでなく、精神的な安定や脳の健康にも良い影響をもたらしていると考えられます。
このように、入浴は単なるリラックスの手段にとどまらず、60歳以降の健康管理において大切な生活習慣のひとつとして見直されています。
では実際に、入浴にはどのような効果があるのでしょうか。主な8つのポイントをご紹介します。
①心身のリラックス
シニア世代は筋肉が硬くなりやすく、肩こりや腰のだるさを感じることが増えます。
ぬるめのお湯にゆっくり浸かることで筋肉がほぐれ、身体がリラックスします。これにより、日常の疲れやストレスが軽減されます。
②血行促進
血行は、酸素や栄養分の運搬を助け、細胞や組織の健康をサポートするため、加齢により血行が悪くなると、冷えやむくみ、関節痛などの不調が起こりやすくなります。入浴は体を芯から温め、全身の血流をスムーズにします。
③睡眠の改善
入浴後、身体が温まることで体温が下がりやすくなり、眠りに誘導されます。「夜なかなか眠れない」と感じる方も、入浴によって自然な眠気が促されます。就寝の1〜2時間前の入浴が効果的です。
④疲労回復
年齢とともに疲れがたまりやすく抜けにくくなることも。お風呂で体を温めることで、疲労物質の排出を助け、疲れが残りにくくなります。
⑤ストレス軽減
退職後や介護などの生活の変化でストレスを感じやすい世代でもあります。温かいお湯に浸かることで、体温が上昇し交感神経が抑制されます。これがストレスホルモンの低減に繋がり、心身の緊張をほぐします。
⑥皮膚の健康
肌が乾燥しやすくなる年代ですが、入浴で毛穴が開き、皮脂や汚れをやさしく落とすことができます。ただし熱すぎるお湯は避け、保湿も忘れずに。
⑦免疫力向上
体温を上げることで、白血球の働きが活発になり、免疫力の向上が期待できます。風邪や感染症を防ぐためにも、日々の入浴は心強い習慣です。
⑧行動のリセット
1日の終わりにお風呂に浸かることで活動をリセットし、心身をリフレッシュさせることができます。
2. 夏でも湯船に浸かるのがおすすめな理由
暑い季節はついシャワーだけで済ませがちですが、シニア世代こそ湯船に浸かる習慣を続けることが大切です。
- エアコンによる冷えを改善
- 汗による疲労回復
- 快眠をサポート
夏はエアコンや冷たい飲み物によって体の内外が冷えやすく、自律神経のバランスが乱れがちになります。そんな時こそ、ぬるめのお湯にゆっくり浸かることで、血流が促進され、冷房による手足の冷えやだるさを和らげます。
湯船に浸かってしっかり汗をかくことで、体にこもった熱を効率よく放出でき、体温調節がスムーズになります。これにより、夏のだるさや疲労感を軽減し、夏バテ予防にもつながります。
また、ぬるめのお風呂に入ると、体温がゆるやかに下がることで寝つきが良くなり、良い睡眠が得られることで、翌日の疲れを残しにくくなるのも大きなメリットです。
季節を問わず、湯船に浸かることには多くの健康効果があります。寒い冬はもちろん、暑さで体調を崩しやすい夏こそ、無理のない温度での入浴が体調管理に役立ちます。
「冷えや疲れを感じた日には、お風呂で体を整える」——そんな習慣を続けることで、シニア世代の健康維持にもつながっていきます。
3. 体にやさしい入浴時間と湯温
入浴の仕方ひとつで、体への負担が大きく変わることをご存じですか?
シニア世代は特に、湯の温度や入浴時間に気をつけることで、体調不良や疲労を防ぐことができます。
入浴時間
個人の好みや体調によって異なりますが、一般的に湯船につかる時間は10分から15分程度が適切とされています。
長すぎる入浴は皮膚を乾燥させたり、体力を消耗させる可能性があります。また、長時間の入浴の後に、めまいや脱水症状などの体調不良のリスクも考えられます。
そのため、15分程度の入浴を心がけ、自身の体調に合わせて調整することが大切です。
お湯の温度
入浴に適した温度は、個人の好みや体調によって異なりますが、心臓や循環器系への負担が比較的少なく、快適に入浴できる温度は38~40度の間が推奨されます。
40℃程度のぬるめの温度は副交感神経が刺激され、血圧が下がり体がリラックスモードに入ります。
熱めが好きでも42℃以上にはしないようにしましょう。体調に合わせてぬるめに調整し、ゆったりと浸かることをおすすめします。高温のお湯に浸かりすぎると、血圧が上昇し、心臓や血管に負担がかかる場合があります。
免疫が上がりやすいベストな入浴法
お風呂を医学的に研究している第一人者 早坂信哉先生によると、免疫が上がりやすい入浴法は「熱すぎない40℃のお風呂に肩まで全身浴で10~15分入るのが基本。毎日入ることで良い睡眠にもつながり疲労も回復する」とのことです。
4. 入浴時に注意が必要な場合とは?
入浴は健康に良い反面、体への負担がかかることもあります。特に以下のような方は、入浴のタイミングや方法に注意が必要です。
- 高血圧や心臓疾患のある:熱いお湯は血圧を急上昇させる原因になります。ぬるめのお湯で短時間を意識し、入浴前後の水分補給も忘れずに。
- 食後すぐや飲酒後に入浴する:食後やお酒を飲んだ後は、消化や肝臓に血流が集中しており、入浴による体温変化で負担が大きくなります。食後は1時間以上空けてから入浴を。
- 持病のある・服薬中:医師の指導がある場合は、入浴の時間帯や方法に制限があることも。定期的な診察時に「入浴しても大丈夫か」を確認しましょう。
少しでも「今日は体調がすぐれないな」と感じたときは、無理せずシャワーで済ませるのもひとつの方法です。毎日気持ちよく過ごすためにも、自分の体の声をよく聞きながら、入浴を楽しんでください。
以上、60代からの入浴習慣について、健康への効果や入り方のポイントをご紹介しました。
毎日の入浴は、体を清潔にするだけでなく、心と体を整える大切な時間です。シャワーで済ませがちな方も、できるだけ湯船につかることで、血流が促され、免疫力の維持にもつながります。
その日の体調に合わせて、無理のない範囲で、入浴の習慣を見直してみてはいかがでしょうか。
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参考:リンナイ株式会社「入浴に関する全国47都道府県別意識調査」
・千葉大学・JAGES「入浴が要介護予防に効果」ニュースリリース(PDF)
・Bathing Frequency and Onset of Functional Disability(PubMed掲載論文)
・高齢者の入浴頻度と認知症発症リスクの関連(J-STAGE)
(グッドライフシニア編集部 松尾まみ)
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