
介護のことは、家族の状況や自分の体調が変わったときにふと考えさせられるテーマです。「どこで暮らしたいか」「どんなサポートがあれば安心できるか」——その答えは人によってさまざまです。
今回、50~87歳の女性474名を対象に行われた調査では、自分が介護される場合と、家族を介護する場合で意識が大きく変わることが分かりました。さらに、介護経験の有無によって“備えの意識”にも違いが見られます。
調査から見えるリアルな声を、これからの暮らしのヒントとしてご紹介します。
自分が介護されるなら「自宅」が約4割。その心理とは

「もし介護が必要になったら、どこで暮らしたいですか?」 という問いに対し、多くのシニアが選んだのはやはり「自宅」でした。調査では約4割が自宅での暮らしを希望しています。
なぜ、これほどまでに自宅が支持されるのでしょうか。 そこには、単なる「場所」へのこだわり以上に以下のような理由が考えられます。
- 自分らしいリズムで生活したい(起床や食事の時間を管理されたくない)
- 長年築いてきたご近所付き合いや、住み慣れた環境で過ごしたい
- 金銭的・心理的な負担への懸念
施設に入れば安心安全は手に入りますが、引き換えに多少の「自由」を手放すことになります。「最期まで自分らしくありたい」という願いが、自宅という選択肢に強く反映されていると言えるでしょう。
一方で、若い世代ほど「まだわからない」という回答が目立ちます。50代ではまだ自身の老いがリアリティを持って想像できず、具体的なイメージが固まっていない様子もうかがえます。
家族の介護は「施設」が約7割。自分と親で異なる本音

非常に興味深いのが、自分と家族に対する意識のギャップです。「自分が介護されるなら自宅がいい」と願う一方で、「家族を介護する」立場になると、約7割の方が「施設」を選択しています。
これは決して家族への愛情が薄いわけではありません。むしろ、介護の過酷さを理解しているからこその「現実的な選択」であると見られています。
「自宅で看てあげたいけれど、共倒れになるのが怖い」「プロに任せたほうが、親も自分も笑顔でいられる」――そんな葛藤の末の結論が、この数字に反映されていると読み取れます。
50代が抱く「親は自宅で」という理想
年代別に見ると、50代は他の世代に比べて「親を自宅で介護したい」と考える人が全体より10ポイント以上高い傾向にあります。
50代は、親がまだ自立して生活できているケースも多く、介護の壮絶さを肌感覚として持っていない場合があります。また、「育ててくれた恩返し」という責任感を強く感じやすい世代でもあります。
しかし、実際に60代、70代となり、親の介護度が上がったり自身の体力が低下したりすると、「自宅介護は限界がある」と気づき、施設利用へと意識が変化していくのが一般的な流れと言えます。
「家族よりプロ」が6割超。変化するシニアの介護観

「誰に介護されたいか」という質問の回答にも、現代シニアの切実な本音が表れています。 配偶者や子供を抑えて1位になったのは、「ヘルパーなどの第三者(62.2%)」でした。
かつては「介護は家族の役割」という意識が根強くありましたが、今は違います。下の世話や入浴介助など、デリケートな部分は「家族だからこそ見られたくない」という尊厳の問題や、「大切な家族を“介護要員”にしたくない」という優しさが、プロへの依頼を選ぶ大きな動機になっていると推測されます。
50代に見られる「夫婦で支え合う」意識の強さ
ここでも50代には特徴的な傾向が見られます。他の世代に比べ、「配偶者・パートナー」に介護されたいと願う割合がやや高いのです。
これには、「他人を家に入れることへの抵抗感」や、「夫婦は最期まで助け合うもの」という結婚観が影響していると考えられます。
しかし、老老介護の現実は甘くありません。年齢を重ねるにつれ、「夫(妻)に苦労をかけたくないから、プロにお願いしよう」と、お互いを思いやるからこそ外部サービスを利用する考え方にシフトしていく方が多いようです。
まとめ
今回の調査では、「自分の介護は自宅で、家族の介護は施設で」という意識の違いや、介護経験者ほど備えの意識が高いことなど、シニア世代の“本音”が浮き彫りになりました。
介護は、誰にとっても他人事ではありません。住まい・お金・健康・家族との話し合い——どれも早めに考えておくことで、安心感が大きく変わります。
自分らしく、できるだけ長く健やかに暮らしていくために。
今回のデータをきっかけに、「わが家はどう備えるか」を一度見直してみてはいかがでしょうか。
施設という選択肢が頭にあっても、親に切り出すのは勇気がいるものです。実際の体験談から、どのように親と向き合い、入居をすすめたのか、具体的なヒントを得てみませんか。
詳しい記事はこちらから。
▶ 親の介護・支援体験談
参考:ハルメク 生きかた上手研究所調べ(PR TIMES)
(グッドライフシニア編集)
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