
「私は大丈夫」と思っている方も、詐欺師はあらゆる手口を使って人をだまそうと近づいてきます。特に一人暮らしのシニアや高齢の方は、ターゲットにされやすいため注意が必要です。
だまされないためには、詐欺の手口を知り、いざという時に冷静に対応できるようにしておくことが大切です。
今回は、高齢者を狙いやすい詐欺の手口と対処法について、事例を交えながら解説します。
≫1. 高齢者が狙われやすい特殊詐欺の手口
・オレオレ詐欺 ・警察官を名乗る詐欺
・架空請求詐欺 ・還付金詐欺
・金融商品等取引名目の詐欺
・ネット・SNSを使った詐欺 ・災害・給付金の便乗詐欺
≫2. 訪問販売・点検商法による詐欺の手口
・貴金属の買い取り ・点検商法
・リフォーム工事詐欺
≫3. こんな言葉が出たら詐欺に注意!被害を防ぐために大切なこと
1. 高齢者が狙われやすい特殊詐欺の手口
特殊詐欺とは、面識のない者に対して電話やハガキ、メールなどを使って、口座への振込みに誘導したり、その他の方法で現金をだまし取る詐欺のことです。
警察庁によると、令和7年の特殊詐欺の認知件数は27,758件、被害額は約1,414.2億円と、前年より大きく増加しています。特に「警察官」を名乗ってお金をだまし取るニセ警察詐欺の被害が目立っています。
また、65歳以上の高齢者の被害は14,232件、被害額は832.4億円にのぼり、被害額全体の約6割を占めています。
手口は年々巧妙化しており、「自分は大丈夫」と思っている人ほど注意が必要です。まずは、高齢者が狙われやすい代表的な詐欺の手口と対処法を見ていきましょう。
オレオレ詐欺

オレオレ詐欺とは、息子や孫、警察官、弁護士などを装い、「事故を起こした」「会社のお金をなくした」「事件に巻き込まれた」などと不安をあおり、お金をだまし取る詐欺です。
以前は銀行口座への振り込みが中心でしたが、近年は「代理人がお金を受け取りに行く」「キャッシュカードを預かる」といった手口も増えています。
高齢者を狙った特殊詐欺の中でも特に被害が多く、現在も代表的な詐欺の一つです。
事例1)150万円の被害にあった70代女性のケース
息子と名乗る若い男から電話があり、「事故を起こして人に大けがをさせてしまった。示談金が必要なので、先輩がお金を取りに行く。病院にいるため電話には出られない」と言われました。
念のため息子に電話をかけましたが、仕事中で連絡が取れず、不安になった女性は銀行でお金を下ろし、先輩と名乗る人物に現金を渡してしまいました。
振り込みではなく、犯人が直接現金を受け取りに来る大胆な手口です。声が似ていたことや、突然の連絡で冷静な判断ができなくなったことが被害につながりました。
オレオレ詐欺の犯人は、卒業アルバムや名簿、SNSなどから家族構成や個人情報を調べている場合があります。
「息子の名前」「卒業した学校名」「同級生の名前」を知っていたとしても安心はできません。
また、「携帯電話が壊れたので番号が変わった」と言われても、以前の番号に電話をかけて確認することが大切です。
被害を防ぐためには、家族で事前に「合言葉」を決めておくことや、「お金の話が出たら必ず家族に確認する」というルールを作っておくことが有効です。
警察官を名乗る詐欺(ニセ警察詐欺)
近年、特に被害が急増しているのが警察官を名乗る詐欺です。
犯人は警察署の職員や捜査員を装い、「あなた名義の口座が犯罪に利用されている」「あなたに逮捕状が出ている」「資金の流れを調査する必要がある」などと不安をあおります。
その後、「捜査のため口座のお金を別の口座に移してください」「資金を確認する必要があるため振り込んでください」などと言い、現金をだまし取ろうとします。
最近では、電話だけでなくLINEやビデオ通話を利用し、偽の警察手帳や逮捕状の画像を見せて信用させるケースも確認されています。
警察官が電話で現金の振り込みを指示したり、口座番号や暗証番号を聞いたりすることはありません。
また、「誰にも相談しないでください」「捜査中なので秘密です」などと言われた場合も注意が必要です。
少しでも不審に感じたら、相手から伝えられた番号ではなく、警察署の代表電話番号に自分でかけ直して確認しましょう。一人で判断せず、家族や警察相談専用電話(#9110)に相談することが大切です。
架空請求詐欺
架空請求詐欺とは、実際には利用していない商品やサービスの代金を、メール、ハガキ、SMSなどで請求し、お金をだまし取る詐欺です。
「未納料金があります」「本日中に連絡しないと法的手続きに移ります」「裁判になります」など、不安をあおる文面で連絡をさせようとするのが特徴です。
心当たりのない請求には応じず、メールやSMSに記載された電話番号やURLには、絶対に連絡・アクセスしないようにしましょう。
また、電子マネーやプリペイドカード、宅配便などで支払いを求められた場合は詐欺の可能性が高いです。不安に思った時は、一人で判断せず、家族や消費生活センター、警察相談専用電話(#9110)などに相談しましょう。
還付金詐欺
還付金詐欺とは、市区町村役場や税務署、年金事務所などの職員を名乗り、「医療費や保険料の還付金があります」などと電話をかけ、ATMへ誘導してお金を振り込ませる詐欺です。
公的機関の職員が「携帯電話を持ってATMへ行ってください」と案内することはありません。還付金がATMで戻ることも絶対にありません。
相手が名乗った機関名や電話番号をそのまま信じず、公式サイトや電話帳などで確認した代表番号にかけ直す習慣をつけましょう。
「今日中に手続きが必要」「期限が過ぎると受け取れない」などと急がせる場合も詐欺を疑い、いったん電話を切って確認することが大切です。
金融商品等取引名目の詐欺
「絶対に儲かる」「限られた人しか買えない」「今だけ特別に紹介している」などと、未公開株、債券、外国通貨、暗号資産、投資アプリなどの話を持ちかけ、お金をだまし取る手口です。
最近では、SNSやインターネット広告をきっかけに投資話へ誘導されるケースもあります。最初は少額の利益が出ているように見せかけ、さらに大きな金額を入金させようとする手口もあるため注意が必要です。
うまい儲け話には安易に乗らないことが大切です。「必ず儲かる」「元本保証」「あなただけに紹介」といった言葉が出たら、詐欺の可能性を疑いましょう。
少しでも不審に感じたら、その場で契約や送金をせず、家族や消費生活センター、警察相談専用電話(#9110)などに相談してください。
ネット・SNSを使った詐欺
最近は、電話や訪問だけでなく、インターネットやSNSを使った詐欺も増えています。
たとえば、宅配業者や金融機関を装ったSMS・メールを送り、偽サイトへ誘導してIDやパスワード、クレジットカード情報を入力させる「フィッシング詐欺」があります。
また、SNSやインターネット広告をきっかけに「必ずもうかる投資話」へ誘導されたり、恋愛感情や親近感を利用してお金をだまし取られたりするケースもあります。
警察庁によると、SNS型投資詐欺やロマンス詐欺では、広告やダイレクトメッセージをきっかけにした被害が多く確認されています。
知らない相手から届いたURLは安易に開かず、個人情報や口座情報、暗証番号を入力しないことが大切です。不安な場合は、公式サイトや正規の連絡先から確認しましょう。
災害・給付金などに便乗した詐欺
地震や台風などの災害、給付金、補助金、感染症などに便乗した詐欺にも注意が必要です。
・「災害で屋根が傷んでいる。すぐに修理しないと危険です」と不安をあおる
・「補助金を受け取るためにキャッシュカードや暗証番号が必要です」と言う
・「給付金の手続きに必要」として、口座情報や個人情報を聞き出そうとする
・「感染症対策のために排水管や室内を消毒します」と高額な作業を勧める
不審な電話や訪問があったときは、慌てて対応せず、いったん電話を切る・玄関を開けないことが大切です。家族や親しい人に相談するか、警察相談専用電話(#9110)に相談しましょう。
また、災害後の修理工事を口実にした悪質商法にも注意が必要です。
台風で壊れた屋根の修理見積もりを依頼したところ、高額な作業料金を提示されたケースもあります。修理工事の契約はその場で決めず、可能であれば複数の業者から見積もりを取り、比較検討しましょう。
契約後でも、訪問販売などではクーリング・オフが利用できる場合があります。不安な場合は、消費生活センターなどに早めに相談しましょう。
2. 訪問販売・点検商法による詐欺の手口
各家庭を訪問して商品やサービスを売る「訪問販売」自体は違法ではありません。しかし、なかには強引な押し売りや詐欺まがいの手口が横行し、被害やトラブルが頻発しています。
貴金属の買い取り
「不用品を無料で引き取ります」と電話勧誘や訪問があり、いざとなったら貴金属を強引に買い取ろうとする手口。
事例2)不用品の買い取り
10年ほど前、筆者宅に「不用品の買取キャンペーンのお知らせです」と言葉巧みな女性から電話があり、テレビを含む不用品の引き取りをお願いすることに。
約束の日に中年男性が来たのですが、玄関先に並べて置いた品には目もくれず「いらない指輪や時計、ネックレスないですか?」と始まり、「ない」と何度いっても「何かあるでしょ、壊れていてもいいから見せてくださいよ」と20分ほど粘られた。
かなりしつこいので、気の弱い人なら貴金属を見せて、それを安く買い取られてしまう可能性が大いにあります。「見るだけ」と言われても絶対に見せないこと。
不用品は市町村の粗大ゴミ、売れそうな品は信頼できるリサイクルショップに見積もりをお願いしましょう。
点検商法
「無料で点検します」と、屋根や外壁、ガス、水道、床下、排水管、布団などの点検を装って、点検後に「このまま放置すると危険」などと不安をあおり、工事契約や商品の購入などを迫ります。
公的機関の職員を名乗る場合は、「身分証」の提示を求め、不審な場合は問い合わせをしましょう。
いくら無料と言われても、その後のセールスが目的なことを念頭に置き、安易に点検を頼まないことが賢明です。
リフォーム工事
点検商法と似ていますが、「リフォームが必要」と迫り不要であるにもかかわらず高額な工事の契約をさせます。
事例3)修理業者を装う
実はこれには筆者も危うく騙されそうになりました。
とある梅雨の昼下がり、「近所で工事をしている者ですが、お宅の屋根がめくれている」という20代前半くらいの男性の訪問。
慌てて外に出て屋根を見上げても、3階の屋根に異常は見えず。
すると「風が吹いた時にめくれて見えた。親方に断ってから脚立をもってきて、屋根に上がって写真を撮ってきましょうか」とやたらと親切。
しかし、わが家は道路の反対側にテラスがあり、そこから3階の屋根を見ることができるので確認したところ、剥がれている部分はありませんでした。
知り合いの工事屋さんに頼むとお断りして、インターネットで調べると、まったく同じ手口の詐欺がいくつも報告されていました。
2階、3階の屋根は自分で簡単に確認できない場所です。そこを狙って「壊れている」「今すぐ修理が必要」と不安をあおってくるのです。
さらに悪質なケースでは、業者を屋根に上がらせたことで、釘を抜かれたり、屋根材をずらされたりして、わざと壊した状態の写真を見せられることもあります。
対処としては、突然訪問してきた業者を家に入れない、屋根に上がらせない、その場で契約しないことが大切です。心配な場合は、地元の信頼できる業者や、以前から付き合いのある工事会社に見てもらうことをおすすめします。
詐欺の被害を防ぐためには、日頃の防犯意識や住まいの安全対策も大切です。
⇒ 一人暮らしのシニアが気をつけたい防犯対策|今日からできる習慣と安心の設備チェック
3. こんな言葉が出たら詐欺に注意!被害を防ぐために大切なこと

高齢者が被害に遭いやすい特殊詐欺と悪質な訪問販売について、事例を挙げてご紹介しました。詐欺の手口は年々巧妙になっており、電話や訪問だけでなく、メールやSMS、SNS、インターネット広告など、まさに手を変え品を変え、さまざまな形で近づいてきます。
こんな言葉が出たら詐欺を疑いましょう
- 今日中に手続きが必要です
- ATMへ行ってください
- キャッシュカードを預かります
- 暗証番号を教えてください
- 絶対に儲かります
- 屋根が壊れています
- 今契約しないと危険です
- 家族には内緒にしてください
「自分は大丈夫」と思っていても、相手は不安をあおったり、家族や公的機関を装ったりして、冷静な判断をさせないように仕向けてきます。
怪しいと思ったら相手が強引であってもきっぱり断ることが重要です。もしも契約を結んでしまった場合は、最寄りの消費生活センターに相談してください。
契約の申し込みや契約をしてしまった場合でも、「クーリングオフ」制度で一定の期間内(訪問販売・訪問購入・電話勧誘販売は8日間)であれば契約の申し込みを撤回したり、契約解除したりできる制度です。※
一人暮らしの親御さんがいる方は、詐欺にはさまざまなパターンがあることを伝え注意を促してあげてください。
詐欺の被害から身を守るには、一人で行動して被害に遭ってしまう前に、家族間で相談しやすい関係を築いておくことが大切です。普段から電話をしたり会話をして、コミュニケーションを取るようにしましょう。
近年は、オートロックやモニター付きインターホン、防犯カメラなどを備えた住まいも増えています。こうした設備は、不審な訪問者との接触を減らし、防犯対策の一つとして役立ちます。
学生時代より情報誌や雑誌で旅ライターを始め、国内・海外の取材歴8年。結婚と出産で休業。その後、オーガニック化粧品・食品の会報誌の編集を経てWEBに転身。介護、不動産、健康などの記事の執筆と高齢者向けサイト運営を16年。その間、自身も親の介護を経験しながら現在に至る。
■高齢になっても住み慣れた家に安全に住み続けるには?
■シニアが気をつけたい室内での事故|転倒対策を万全に
■高齢ドライバーの事故を防ぐ|家族が知っておきたい3つ(原因や認知対策)
■高齢者に骨折事故が多発!路線バスでの転倒にご注意
