
高齢の親に車の運転を辞めてもらいたくても、本人が免許の返納をしたがらない、無理やり辞めさせるわけにもいかず家族は心配している…といった話を耳にします。
親の生活もあるし、あまり強くは言えないかもしれません。しかし親が交通事故を起こした場合、加害者になってしまい、本人だけでなく家族の生活にも大きな影響を及ぼす可能性があります。
このページでは、高齢の親に自主返納をしてもらうためのヒントをご紹介します。(2026年9月更新)
自主返納をすすめるときに大切なこと
「足腰が弱ってバス停や駅、スーパーまで歩くのも大変」「長年運転しているし慣れている道だから大丈夫」。このような理由から、車の運転を続けている高齢者も多いと思います。
しかし、運転中に危険な兆候を家族が感じるようになったら、免許の自主返納をすすめる勇気も必要です。
75歳は、免許更新時に認知機能検査が必要になる一つの節目です。ただし、「75歳になったら運転をやめるべき」ということではありません。
運転能力には個人差があり、車が生活に欠かせない地域もあります。年齢だけで判断するのではなく、運転中に危険な兆候が見られるようになったら、本人の運転能力や生活環境も考えながら、免許の自主返納について家族で話し合うことが大切です。
免許返納を考えるサイン(危険な兆候)
主な兆候としては以下のようなものがあります。
同じ道なのに今までより時間がかかるようになった
右左折のウインカーを間違って出したり、出し忘れたりする
カーブをスムーズに曲がれないことがある
歩行者や障害物、他の車への注意が遅れることがある
車庫入れの際に塀や壁をこすることが増えた
ブレーキとアクセルを踏み間違えそうになることがある
家族が同乗した際に「危ない」「怖い」と感じる場面が増えた
ドライバー本人が納得し自ら運転を止めるためには、早い段階から家族が協力し、本人の意思を尊重しながら話し合いを進めることが大切です。
頭ごなしに「危ないから運転を辞めて!」といった言い方は避け、親のプライドを傷つけないよう考慮しましょう。
高齢者が事故を起こす主な原因について、また、免許更新時の高齢者講習や認知機能検査、自主返納を考えるタイミングや、自主返納のメリットについてまとめました。⇒ 高齢ドライバーの事故を防ぐため家族が知っておきたいこと|認知機能検査・自主返納など
免許返納をどう説得すればいいの?

次に、自主返納を前向きに考えてもらうための方法を見ていきましょう。
頭ごなしに「危ないから運転をやめて」と伝えると、親子関係が悪化してしまうこともあります。
大切なのは、運転を取り上げるのではなく、「返納後も今まで通り生活できる」という安心感を持ってもらうことです。
①車が利用できなくなった時の代案を示す
「車がないと何を不便に感じるのか?」を聞いて、車がなくなった場合の代替手段を示しましょう。本人も車のない生活を具体的にイメージできて安心です。
交通機関の割引サービスや地域の支援制度
免許返納後にタクシーやバスを割引運賃で利用できる自治体もあります。地域によっては、コミュニティバス、移動販売、買い物代行などの支援が用意されている場合もあります。
利用できる制度は自治体によって異なるため、親が住んでいる地域の窓口やホームページで、申し込み方法や料金を事前に確認しておきましょう。
自転車の利用
近所の移動であれば、免許を返納した後の代替手段として、自転車を利用する方もいます。
ただし、自転車も転倒や事故のリスクがあるため、体力や反射力に不安がある場合は無理をせず、公共交通機関やタクシー、家族の送迎なども含めて検討しましょう。
地域や店舗によっては、運転経歴証明書を提示することで、自転車の購入代金が割引になる場合もあります。
家族のサポート
本人が運転を辞めた後に、家族もできることは協力しましょう。
休日に、代わりに運転して買い物や通院などのサポートをしてあげるとご本人も安心できるうえ、車内で会話をしたり、途中レストランで食事をしたりすれば、親子のコミュニケーション作りにも!
②車の維持にかかる年間コストを算出しメリットを伝える
車を維持するには税金、ガソリン代、保険代、車検などの費用が月額に換算すると2万円~5万円ほどかかる場合があります。車を処分すれば、そのお金が節約できるわけです。
「通院にタクシーを利用すれば年間20万円くらい自由になるお金が増えるよ!年に数回温泉旅行に行けるね!」などと、興味の湧くような内容を伝えながら、おおよその金額を伝えてみましょう。
③事故を起こした時の賠償責任などを伝える
もしも交通事故を起こせば、相手にけがを負わせたり、最悪の場合は命にかかわる重大事故につながる可能性があります。本人が加害者となり、高額な損害賠償責任を負うこともあります。
また、認知症などで本人に責任能力がない場合、家族の関わり方や監督の状況などによっては、家族(子)が民事上の責任を問われる可能性もあります。
事故後の対応や生活への影響は本人だけにとどまらず、家族にも大きな負担がかかります。「まだ大丈夫」と考えるのではなく、事故を起こしてからでは遅いということを本人にも伝え、運転を続けるリスクについて話し合うことが大切です。
④かかりつけ医や親族にお願いする
家族が説得しても聞く耳を持たない、意固地になって運転を辞めない、といった場合は、第三者に話をしてもらうのも手です。
親が信頼している親族や友人、かかりつけ医などに、話をしてもらうようお願いしてみましょう。
⑤相談窓口に相談してみる
運転に不安のある高齢ドライバーやその家族は、都道府県警察の「安全運転相談窓口」に相談できます。
全国統一の安全運転相談ダイヤル「#8080(シャープハレバレ)」に電話すると、発信場所を管轄する都道府県警察の安全運転相談窓口につながります。
本人が運転をやめたがらない場合など、家族だけで悩まず、専門家に相談してみるのもよいでしょう。
⇒ 安全運転相談窓口
【実例】免許返納を説得したBさんの話
高齢の親に免許返納をすすめても、「まだ運転できる」「車がないと生活できない」と言われ、なかなか納得してもらえないことがあります。では、実際に親を説得して免許返納につなげたBさんは、どのようにしたのでしょうか。
実際に何度か親の運転する車に同乗してみると、ノロノロ運転で後続車からクラクションを鳴らされたり、ウインカーを出し忘れたりすることがあり、隣に乗っていてヒヤッとすることがありました。
さらに、赤い消火栓にサイドミラーを擦ったことがあり、このまま運転を続けるのは危ないと感じました。
そこでBさんは、運転を辞めて近所への買い物や通院には「お金を惜しまずタクシーを使おう」と提案。
さらに、地域のタクシー会社の電話番号を大きな文字で書いて自宅の電話のそばに貼り、携帯電話にも番号を登録。自宅からだけでなく、買い物や通院の帰りにも自分でタクシーを呼べるよう、電話での頼み方も教えました。
車の維持費がかからなくなることを考えれば、必要なときにタクシーを利用することも現実的な選択肢だと伝えました。
【タクシーを利用する際のポイント】
自宅からは地域のタクシー会社に電話して迎えに来てもらい、帰りは携帯電話から現在地を伝えて配車を依頼する方法があります。免許返納前に、実際に親子でタクシーを呼ぶ練習をしておくと安心です。
免許返納は年齢だけでなく運転能力や生活環境も考えて
認知機能に衰えが見られる場合は、交通事故のリスクを減らすうえでも免許の自主返納を検討することが大切です。一方で、周囲にスーパーや病院がない地域では、車が生活に欠かせない高齢者もいます。
70代、80代になっても運転能力には個人差があります。年齢だけで判断するのではなく、本人の運転状況や生活環境を踏まえ、家族や専門家と相談しながら今後の運転について考えていきましょう。
また、高齢者がマイカーに依存せず暮らせるよう、巡回バスやタクシー券、訪問診療、移動スーパーなど、自治体や民間企業による移動・生活支援の充実も重要です。
車に頼らず暮らせる住まいへの住み替えも
車が生活に欠かせない地域では、免許返納後の買い物や通院などが大きな問題になります。駅やスーパー、病院などが徒歩圏内にある地域へ住み替えることも、免許返納後の暮らしを考えるうえで一つの選択肢です。
グッドライフシニアでは、車に頼らず暮らしやすい駅近のシニア向け賃貸住宅もご紹介しています。
⇒ シニア向け賃貸住宅とは?
参考:政府広報オンライン
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201804/3.html
運転免許証の自主返納・運転経歴証明書について
https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/menkyo/korei/henno_keireki.html
運転免許証の自主返納に関するリーフレット
https://www.npa.go.jp/policies/application/license_renewal/pdf/rdhleaflet.pdf
(グッドライフシニア編集部 松尾まみ)
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