地方住まいで子どもは就職や結婚を機に都心部に引っ越しをし、親と遠く離れて暮らすのはよくあるケースです。
ただでさえ高齢の親が遠くに暮らしていることは心配も多い上に、昨今のようなパンデミックの影響でなかなか帰省もままならないことがこれからもないとは言えず、田舎に戻るべきか、親を呼び寄せるべきか、思い悩むところですね。
今回は両親が住む田舎へ戻ろうと一度は考え、最終的に親を呼び寄せることを選んだふたりの方の体験談をご紹介します。実際に体験した方の言葉はとてもリアルなだけに参考のひとつにして頂ければと思います。
田舎暮らしを経験し「現実的な選択肢」を選んだ(Uさん60歳)
舅が亡くなったあと、ひとり暮らしをしていた姑が転んで怪我をしたのがきっかけで、Uさん(60歳)はしばらく地方の夫の実家に往復5時間かけて、数日おきに通っていました。
「さすがに疲労困憊で、これなら怪我が治るまではとりあえず住んだほうがラクだと思って、私はしばらくそちらに住んだんですよね」
仕事がある夫(57歳)を残し、ギブスがとれて二度目の手術が終わるまでとUさんは姑とのふたり暮らしをスタートさせました。しかし1ヶ月近くになるとだんだんと居心地の悪さを感じるようになったのだとか。
「なんていうか、玄関にカギもかけず、本当に普通にガラガラって扉をあけてご近所さんが入ってくるんですよ。私が奥の部屋でたまたま着替えてても、あらごめんなさいよって感じで。
数日過ごすなら楽しくても、やはり暮らすとなるとちょっと別の話しだなと実感しました」
これが試験的な田舎での同居体験となり、Uさんは夫に「実家で同居は無理だし、これ以上の通い介護はできない」と伝えました。しかし、怪我も治り元気とは言いつつも80代の姑を一人暮らしさせる不安は拭えません。
ところがUさんが住んでいるのは1LDKのマンション。親を呼び寄せても同居は難しい、ようやくローンが終わったところで買い替えも大変だし、そもそも気に入って住んでいるところです。
お姑さんの思いも受け止めつつ自分たちの暮らしも大切に
「そのとき、ちょうど近くに高齢者向けのシニアマンションが建築中だったので内見してみると、見守りもあるし、個室もほどよい大きさでこれなら安心ではないかと思って、夫から姑に話をしてもらいました」
お姑さんは最初は嫌がったものの、実家はひとまずそのままにしておくことで納得し、引っ越しをしました。
「お姑さんは、今も自立はしていますし、そのためいつかは家に戻りたいと言っています。それが現実的にできるかはともかく、少なくともお姑さん自身が納得するまでは実家はそのままにしようと決めました」
「賃貸ですから退去も簡単といえば簡単、今後の介護の状況を見ながら施設や同居などまたゆっくり考えていくつもりです」と答えてくれました。
いずれ老老介護になることに気づき自分たちのシニアライフの計画もたてた(Eさん62歳)
「実は夫の田舎に戻るつもりで準備していたのですが、いろいろあってやめました。やめてよかったと思っています」
と、話してくれたのはEさん、62歳です。高齢の夫の両親の世話について話が出たとき、Eさんはある程度は覚悟していたこともあり、移住に反対はしませんでした。
「今はネット通販で何でも購入できるし、それほど不便ではないかなと思って。ひとり娘が結婚し、初孫が生まれたばかりなので本音を言えばそばにいたいという気持ちも強かったんですけどね。そんな時に、実は夫が倒れてしまったんです」
幸い軽い脳梗塞でしたが、もし夫の田舎だったら……と考えると不安が一気にふくれあがったそう。一番近い病院でも車で1時間以上かかります。
その時、自分たちも「老いていく」ことに気づいたと言います。
「この後はやがて老老介護になるわけです。そうなった時、田舎では充分な手配ができない。親戚が多かったり近くにわたし達の子がいるならともかく、この年齢で移住して、すぐになじめるとも思えない。何かあったとき、どうするんだ?と」
その点、今住んでいるところはかかりつけ医もおり、娘夫婦もいるし手助けしてもらえる知り合いも多い。
「右手が不自由な姑は家事が面倒そうで、食事のサービスもあると聞いてわりと抵抗感なく受け入れてくれました。ただ畑仕事が生きがいの舅を考えるとこちらへ呼び寄せるのも忍びない部分もありましたが、まず自分たちの暮らしを基本に考えるのが結果的に夫の両親ともうまくいくのではないかと結論を出したんです」
田舎に行き、不満をつのらせ不安を抱えながら義両親と暮らすよりも、こちらに呼び寄せて、自分ができるだけお世話をするほうがいいと判断したそうです。
自分たちの老後についても話し合えてよかった
「この時には娘もまじえて自分たちの老後についても話し合いました。まだ早いと娘は驚いていましたが、義両親のことを見ていると娘に自分と同じような悩みをさせたくないと思ったからです」
義両親も現在はシニア向けサービス付き住宅に入居していますが、老人ホームが併設されており、介護が本格的に必要になったらそちらに移ることもできるのだとか。
「ステップですね。あと5年くらいしたら、孫も大きくなりますから、娘夫婦がこのマンションをリフォームして住めばいいかな、と。その頃までに自分たちはシニア向け賃貸マンションを見つけて引っ越し、最終的には義両親と同じように施設に入るつもり。ただ、できれば娘たちとそう遠くない場所がいいなと思っていると話しました」
どこに住む、というより「娘にわたし達の介護はさせたくないけれど、できればちょくちょく会いにきてほしい、会える距離のところに住みたい」というのが夫婦で出した自分たちの老後の結論でした。
親の介護と同時に、自分たちのシニアライフについてもしっかり話し合い、具体的な計画ができてよかった、と話してくれたEさんのさっぱりとした笑顔が印象に残ります。
まとめ
親を呼び寄せるべきか、子どもが親の家に戻るべきかは、ひとりひとりで事情が違います。大切なのは親世帯・子世帯の双方にとって「ベストではなくてもベターな選択をすること」ではないでしょうか。
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主に教育・ライフスタイルを中心に執筆するフリーライター。自身の介護経験と親世代・子世代両方の視点から取材を行いリアルな声を届ける。サードエイジ世代の新しい暮らしと50代からの豊かな人生を求めて模索中。
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