高齢の親に車の運転を辞めてもらいたくても、本人が免許の返納をしなければ無理やり辞めさせるわけにもいかず。家族は心配をしながらも運転をとめることができない、といった話を耳にします。
大切な家族だからそこ、事故に遭わないよう、また、安全に運転を続けてもらうため知っておきたい事をまとめました。
年々増加傾向にある高齢ドライバーの事故
87歳の男性が運転する乗用車にはねられ母子が亡くなり2名が死亡、8名の重軽傷者を出した池袋の交通事故。この痛ましいニュースに多くの方がショックを受けました。
このような事故は、高齢ドライバーの家族を持つ人には他人ごとではありません。
日本の人口は減少していく中、高齢者の人口は上昇していき2036年には高齢化率が33.3%と3人に1人に達すると言われています。
平成28年末の日本の運転免許保有者数は約8,221万人で、27年末に比べ約6万人増加しています。このうち75歳以上の免許保有者数は約513万人で、75歳以上の人口の約3人に1人が免許を保持し、今後も増加すると推計されています。
1,高齢者事故の主な原因は?
高齢運転者の交通事故の主な原因には、安全不確認や前方不注意発見の遅れ、相手の動静への不注意、予測不適による判断の誤り、ブレーキやアクセルの操作ミスなどがあります。
若い人なら運転中にとっさにブレーキを踏むことができても、高齢者は瞬時に判断する力が低下し複数の情報を同時に処理することが苦手になるため、ハンドルやブレーキ操作にミスや遅れが出るといった特性が見られるようになります。
60歳を過ぎると認知機能が少しずつ衰えていくいわれています。警察庁によると平成28年の運転免許証更新の際、認知機能検査を受けた75歳以上が約166万人。そのうち約5.1万人は認知機能が低下し記憶力・判断力が低くなっている状態「認知症の恐れがある第1分類」と判定されています。
加齢に伴う身体機能の変化に加え、さらには認知機能の低下により高齢ドライバーの運転リスクは上がるわけです。
2,事故防止のための認知機能検査と高齢者講習
75歳以上の運転者は3年に1回、免許証更新時に認知機能検査と高齢者講習を受講することが現行の制度で定められているため、受講しないと免許証の更新はできません。
検査項目は、記憶力・判断力の判定を内容となっており、採点の点数に応じ「記憶力・判断力に心配ない(認知機能が低下していない)」、「記憶力・判断力が少し低くなっている(認知機能が低下しているおそれがある)」、「記憶力・判断力が低くなっている(認知症のおそれがある)」、の3つに分類され判定が行われます。検査から採点、結果の通知まで30分程で終了します。
認知機能検査の判定結果が出た方は、以下の手続を
記憶力・判断力に心配ない | 教習所・運転免許試験場に予約の上、2時間(小型特殊免許のみの方は1時間)の高齢者講習を受講。 |
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記憶力・判断力が少し低くなっている | 教習所・運転免許試験場に予約の上、3時間(小型特殊免許のみの方は2時間)の高齢者講習を受講。 |
記憶力・判断力が低くなっている | 医師の診断が義務化とされ、診断結果に問題がなければ、3時間(小型特殊免許のみの方は2時間)の高齢者講習を受けて、更新手続ができます。 |
また、信号無視や通行禁止違反などの違反行為のあった75歳以上の運転者は、臨時認知機能検査を受ける必要があります。その結果、もしも認知機能の低下が見られた場合は専門医の診断、もしくは医師の診断書の提出や、臨時高齢者講習を受けることになります。
3,運転免許証の自主返納制度
運転免許自主返納とは、高齢運転者が身体機能の低下などを理由に、まだ有効期限の残っている運転免許を本人の申請により取り消し返納する制度のことです。高齢ドライバーの事故の多発を受けて1988年4月から導入されました。
身分証がなくなる心配もありません。免許証を返納した後に5年以内に申請すれば、公的な身分証として利用可能なカード「運転経歴証明書」の交付を受けることができます。こちら見た目は運転免許証にそっくり。このカードを持参すれば金融機関の窓口などで本人確認として使用することができます。
手続きは管轄の警察署や運転免許センターなどできます。免許証と免許証用サイズの写真を提出し、手数料は1100円。
免許を返納するにあたり、ドライバー本人が納得し自ら運転を止めるためには、早い段階から本人の意思も尊重しながらご家族と話し合いをすることをおすすめします。
まとめ
ドライバーは正しいルールと技能を再確認し、いくら走りなれた道でも自分の運転能力を過信することなく、適度な緊張感を持って運転することが大切です。そして、危険な兆候をご自身やご家族が感じたときには、運転をやめる、やめさせる勇気も必要です。
周囲に店も病院もない、地方や過疎地に住む高齢者にとっては車は大切な足。そういった場所に住む高齢の方が、マイカーに依存することなく地域で安心に暮らせるように、代替となる交通手段など自治体や民間企業などのサポートも必要となります。
(グッドライフシニア編集部 松尾)
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