近年、社会の高齢化に伴い、シニア世代の住まいのあり方が見直されつつあります。退職後には家での活動時間が増えるとともに、施設などへ入居するよりも自宅での生活を望む中高年が多いためです。
住み慣れた自宅で、長く健康に暮らしていくために必要なこととは一体何でしょうか。
まだあまり知られていない「住まいの温熱環境による健康リスク」について、国内外の知見を交えてご紹介します。
家が健康に与える影響が注目されるも、依然として低い関心度
2019年3月に50代以上を対象に、高齢期を境にリスクが高くなりやすい住宅内でのヒートショックや怪我・病気などの防止策として、「高齢期の健康で快適な暮らしのための住まいの改修ガイドライン」が検討され、最も重要な項目として「温熱環境」が提言されました。その理由には高齢者の持ち家率と、その建設時期があります。
図1は高齢者世帯の持ち家率とその建設時期についての調査結果です。およそ7割の高齢者世帯が持ち家であり、その半数が昭和55年(1980年)以前の建設であることが分かりました。
すでに建設から40年以上経過していることから、住宅の断熱性が現在の基準を満たしておらず、健康上のリスクが潜んでいる可能性が示唆されます。
また高齢者に当たる60代、70代の8割以上が今後の生活の中で「健康に関すること」を重視したいと望んでいる一方で、「住まいの充実」への意識は1割と、住宅への関心・優先度が低いことがわかります。図1、2の結果から「住まいと健康」は結びつきにくい命題であることがうかがえます。

寒い家がもたらす健康被害
実際、寒い家にはどのような危険があるのでしょうか。
イングランド公衆衛生庁の指針(2015年)によると、室温が18℃未満になると徐々に循環器系、呼吸器系の疾患、低体温症のリスクが生じると報告されています。
さらに、2018年の11月にはWHOも同様の声明を発表し、『室温は、寒さによる健康被害から居住者を守るために 十分高くなければならず、 寒い季節に安全な温度として18℃以上を提案する。』と発表しています。
これは1987年以来の策定となった「住まいと健康に関するガイドライン」に示されており、「強い勧告」として推進されています。
また国内でも国交省発案による調査から、床付近の室温が低い家=足元が寒い家では、高血圧の通院リスクがそうでない家と比較して1.53倍であることが確認されています。
窓や扉の断熱性、住宅内での過度な温度差、暖冷房の効果的な配置など改修工事や工夫に取り組んだ家では、住人の最高血圧値が低下し、住宅内の安定した温度保持が高血圧予防につながる例も報告されています。

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3.安心して暮らせるあたたかい住まいのすすめ
“寒い住宅”が抱えるリスクへの認識は、国内国外ともに徐々に浸透しつつあります。足元を温めるというシンプルな対策ですが、それによって得られる健康への恩恵は大きく、冬場でも快適に家の中で過ごすには大切なポイントです。
大切に使ってきた家でこれからも暮らしていくために、断熱・床暖房の改修などの対策をして、「家の暖かさ」を考慮した住まいの備えに取り組んでみてはいかがでしょうか。
(グッドライフシニア編集部)
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