冬になると高齢者は膝・腰・肩などの関節痛が悪化することが多くなります。
あなたの周りでも、今日は寒いから、いつもより関節が痛い、という高齢者がいるのではないでしょうか。
この記事では高齢者に多い関節痛の原因、関節痛が寒さで悪化する原因と対策についてお伝えします。
1.高齢者に多い関節痛はなぜ起こるの?
膝・肩・腰の痛みがつらい…高齢者に多いのはなぜ?
普段から膝・肩・腰が痛いと訴える高齢の方は多いものです。実際に整形外科に定期的に治療やリハビリで通院される多くの高齢者が、膝・肩・腰の不調や痛みを訴えます。
なぜかというと、いずれも、病態は軟骨などの老化現象が原因だからです。膝の痛みは変形性膝関節症によるものである方が多く、これは膝の骨と骨の間にある軟骨が老化によってすり減ってしまうために起こります。
■変形性膝関節症とは?
すり減った軟骨は増えることは無く、軟骨そのものが炎症を起こし、膝に水を貯めたり、痛みや運動制限が出たりする場合もあります。
一方、肩関節周囲炎は肩の軟骨・靭帯・腱の老化により肩の痛みを起こし、腰痛の原因である脊柱管狭窄症も、脊椎の椎間板の老化が原因で腰痛を引き起こします。
■脊柱管狭窄症とは?
いずれも周囲の組織は慢性的な炎症によって、痛みを引き起こしているのです。
膝痛の原因である変形性膝関節症、肩の痛みの原因である肩関節周囲炎、腰痛の原因である腰部脊柱管狭窄症が高齢者の罹患率が高いのは、いずれも老化が原因とされています。老化は止めることができなので、こうした痛みに悩む高齢者は多いのです。
関節リウマチ
関節リウマチも高齢者の罹患率が高い病気です。リウマチとは手のこわばりや痛み、膝の関節の痛みや変形などを起こす自己免疫疾患です。
実際には30代~50代での発症が多いのですが、年齢を重ね、罹患歴が長くなると、関節の変形も進んでいき、膝や手の関節の痛みが強くなる場合もあります。原因が不明の自己免疫の疾患に軟骨の老化現象が加わり、膝や手の関節に痛みが出ます。
2.なぜ、寒いと関節痛が悪化するのか
血流不良
病院では、関節に慢性の痛みがある方には、冷やさないようにと指導しています。
関節周囲には、軟骨・脂肪や筋肉・腱などの軟部組織が集まり、痛みがある方は軟部組織にも炎症を起こしています。こうした炎症があると、発痛物質が集まり、患部が冷えると血行が悪くなり、発痛物質が長く患部に居座るのです。
慢性の痛みがある場所を冷やすと痛みが増すのは、血流不良とそれに伴う発痛物質の存在が原因ということが分かっています。
交感神経
寒い場所にいると、背中は縮こまり、肩にも力が入ります。この時、交感神経が優位になっています。交感神経の働きでは、筋肉の緊張が高まり、さらに血流が悪くなるという悪循環に陥るのです。
寒さで運動量が減少
寒いと外に出るのがおっくうになります。高齢者でなくても、同じではないでしょうか。気温の低い時期は外出の機会が減り、活動量も減少しがちです。
運動不足となることも多いので、血流が上がる機会が少なく筋肉量も減少するため患部に栄養と酸素が不足します。動かないことで、関節痛にも悪影響が出るのです。
3.冬に関節痛が悪化する前にできること
保温
外気温が低い時には、保温性の高い衣服を選ぶのがおすすめです。
高齢になると手や足腰が思うように動かないため、着脱が簡単でストレッチ性が高いジャージなどを選ぶ方は多いもの。こうした衣類は、着脱を容易にはできますが、裏地がなく、風を通しやすいので保温性は低めです。
関節に痛みがある高齢者は、同じストレッチ素材の衣類でも裏地付きで風を通さないものを選ぶか、着衣の下に保温性の高く・機密性のある下着を身に着けるのがよいでしょう。痛みがある膝にサポーターをつけたり、貼るタイプの保温剤を着けるのもおすすめですよ。
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血流改善
入浴では出来れば毎日、ゆっくりと湯船につかります。全身の血行が良くなるため、浴槽につかるだけで痛みが軽減するのを実感するでしょう。さらに、浴槽につかることで副交感神経が優位になるため、凝り固まった患部周辺の組織の緊張もほぐれ、痛みが軽減します。
運動
慢性の関節痛があり、寒い時期になるとウォーキングなどの運動も避けてしまいがちです。しかし、膝や腰に慢性的な痛みが変わらずあっても、平地のウォーキングは続けましょう。
筋力
低下はもともとある関節痛を悪化させます。また運動は、動くことで全身の血流を改善し、発痛物質を流しやすくする効果もあるのです。
4.まとめ
寒さで関節の痛みが増すのは、外気温が低下して体を冷やすためと、動くのがおっくうになり運動量や筋力が減るという、両方の原因があります。
寒さによる関節痛の悪化を予防するためにはまずは患部の保温、そして家にこもりすぎないこと。局所のケアと運動で、今年の冬の関節痛の悪化を予防しましょう。
医療・健康ライター。看護師、介護支援専門員。整形外科などの医療機関や介護施設などで20年以上働いてきた経験を生かし、介護予防や健康に関する情報を発信。2021年10月には「看護師歴20年の私が伝える健康法 自分観察で疲れにくい体になる!」(Kindle本)を出版。ブログ:Nruse Writer’s Cafe。
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