今回の記事では、高齢になった親を呼び寄せ同居する場合の「成功のコツ」をまとめました。実際に同居を経験した方の体験談をもとに、老親との同居をうまく行うポイント4つをご紹介します。
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~同居をうまく行うポイント4つ~
- 親が納得し同居を受け入れていること
- うまくいかないことが多いと腹をくくる
- 生活リズムの違いを解決しストレスを軽減する
- 同居以外の選択肢を残しておくこと
1.親が納得し同居を受け入れていること
そもそも同居をする以前に、親が住み慣れた家を離れること、慣れない土地に移住すること、そして子世帯と同居をすることについて納得しているでしょうか?
介護の必要や暮らす上での危険性が高い場合は別にして、多少の不自由はあっても日常生活を営んでいる親を無理やり、子世帯に呼び寄せて同居をするのは良い方法とは言えません。
同居を成功させるコツの第一は、互いに納得し、充分に話し合った上でスタートすることです。
実の母親と4年ほど同居したYさん
「実家を手放すのは親にとってはそれまでの人生を捨てるようなものなのだと、話しているうちにわかりました」
遠方に住む母親は、同居の話をすれば喜ぶだろうと思いこんでいたYさん。実際に話をしてみると思った以上に母親は嫌がりました。
「当時は72歳くらい、まだまだ元気でしたからよけいですね。それでも帰省するたび、電話をするたび、母親のひとり暮らしを心配していると何度も伝えました」
最初は真に受けなかった母親も、持病が悪化してくると通院も大変になり、だんだんと息子の言葉を受け入れるようになったそう。
「最初に話してから3年くらいかかって、最終的に母自身も不安を感じて同居に納得したようです。その間に私たち夫婦もどうしたら同居がうまくいくか、知り合いに相談したり、自治体の介護サービスについても調べたりする時間もあり、心の準備もできた。同居してから、やはり大変なことも多くありましたが、時間をかけて準備してきたのでなんとかできたと思います」
Yさんは母親と4年ほど同居、その後、持病がさらに悪化し入院。
「あっという間に母は亡くなってしまいました。それでも最後の数年を同居し、親の面倒を見られたことで私たち自身も納得のいく介護ができたと思っています」とYさんは振り返りながら、「同居までの準備期間が大事」と話してくれました。
2.うまくいかないことが多いと腹をくくる
老親を呼び寄せての同居は、子世帯も50代をすぎ、親は70代、80代になります。どちらも新しい環境にすぐになじめるわけではないでしょう。
妻の母親と約3年ほど同居をしたUさん
「子どもも巣立ち、夫婦ふたりで自由に暮らしていたので窮屈になるなというのが正直な気持ち。妻からいずれ施設には入ってもらうけど、少しの間は親孝行したいと言われたので、どちらかといえば妻のためと思って同居に賛成しました」とUさん
それでも、やはり一緒に暮らすと義母の存在にやりづらさや息苦しい思いをしたこともあったそう。そういう時はUさんは趣味である釣りに泊りがけで行ったり、「ジムの会員になり、運動してからゆっくりお風呂に入って帰宅したりと、在宅時間にメリハリをつけた」そうです。
「自分にとっては家族といっても他人でもあるし、そう簡単にうまくいくわけはないと腹をくくって同居をはじめた。それくらい、同居は大変で難しいぞと覚悟を決めておくのが大事。あとは無理をして我慢しないこと、自分の時間を作ることですね」
今は近くの介護施設に入った義母は、認知症がすすみ、面会にいっても自分たちのことがわからなくなることが多い状況です。
「それでも妻も母と同居して親子の時間を持てた。介護もし、お世話できたという思いがあるので、これでいいんだよねと納得しています」
親との同居は、大変だし難しいものだという大前提で、気負いすぎず頑張りすぎずというのがポイントです。
3.生活リズムの違いを解決、自分のストレス解消も大切に
生活リズムが違うのは、年齢も過ごしてきた環境も違うのですからしかたありません。
夫の両親と同居のNさん
たとえばNさんの場合、義母は朝5時台に起床し、夜9時前には寝る。自分たちは、朝昼兼用の食事をし、どちらも夜中まで起きていることが多く、義母とはまったく生活リズムが合いません。
「一軒家の1階をリフォームし、トイレとオール電化のミニキッチンを設置しました。その後は義母は朝、昼ごはんは自分で用意して食べています。最近は近くのスーパーやお店に自分で材料を買いに行くようになり、少しずつ地域にも慣れてきたようです。私たちは起きたあとに挨拶がてら声をかける程度、そして夕飯は一緒にとります。お互いの生活をハッキリ分けてからは、だいぶやりやすくなりました」
このようにリフォームや家の間取りに融通がきくと助かりますね。とはいえ住居を、同居用に修繕できないことも多いでしょう。
夫の父と同居をはじめたEさん
「テレビの音が大きく、ずっとつけっぱなしで見ているのが気になって。あとは何か食べたり飲んだりすると義父はなんでもティッシュでふいて、汚れたティッシュはその辺に投げ捨てる。毎日のことだとイライラして、わたしは偏頭痛に悩まされる日々でした」とは、78歳になる夫の父と同居をはじめたEさんの話しです。
「そこで義父の部屋に新しいテレビを購入し、ゆったりした座椅子とその横に大きなゴミ箱を用意。わたしはゴミ箱の交換はしますが、自分の部屋だから自分で簡単な掃除はしてと夫から言ってもらいました」
たいしたことではない、ささいなことだからこそ、積み重ねの苛立ちが生活そのものに影響してきます。小さなことであっても「イライラのもと」を、ひとつずつ消していくことが大切です。
4.同居以外の選択肢を残しておくこと
高齢になった親との同居をうまく行うコツについて、「ずばり、同居以外の方法も準備しておくこと」と回答してくれたのはTさん。
義母と同居のTさん
地方住まいの姑を呼び寄せ同居をして5年になります。実のところ姑とはあまり相性がよくなかったTさん、夫から母が心配だからと同居の話が出たときも難色を示しました。
「母子家庭で母に対する夫の思いは痛いほどわかりました。ですから最終的には同居に踏み切りましたが、夫と何度も話し合い、寝たきりで排泄のお世話をするようになる、あるいは姑ひとりで留守番もさせられない状況になったら、介護施設に入居してもらう、という約束をしました」
自分の姉が、実母を介護しているのを見てきたTさん。
「実の親子でも同居で介護は大変。遠方に住んでいるのでわたしは費用を負担することで介護の分担をしているつもりでしたが、実家に帰るたびに姉に申し訳ない気持ちになりました。自宅介護は難しい、同居をするのはいいけれど本格的な介護は無理だと思って、そこだけ明確にしておいたのです」
同居をしても、施設への入居やショートステイの利用、元気な親であれば同居がうまくいかないときには高齢者向け賃貸や見守りサービスのあるシニア向けマンションへの入居、といくつかの「選択肢」を候補に考えておくと、いくぶんかでも気持ちが楽になります。
また、親も子世帯も年々、歳をとるのが現実。無理をせず、「だめなら別の方法で」とライフスタイルの転換を考えることも大切です。
いずれにしても、親世帯・子世帯の双方がひたすら我慢する生活は続きません。年をとってからの同居は、「事前の準備と心構え」「覚悟」「ストレス解消」そして「無理だと思ったときに別の道を考えておく」4つの柱で考えていきましょう。
主に教育・ライフスタイルを中心に執筆するフリーライター。自身の介護経験と親世代・子世代両方の視点から取材を行いリアルな声を届ける。サードエイジ世代の新しい暮らしと50代からの豊かな人生を求めて模索中。
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