介護で意外ともめる子どもたち
高齢のご両親について介護や施設入居といった決断が迫られると、意外ともめることが多いのが兄弟姉妹、つまり子どもたちです。
兄弟姉妹は結婚していたり、未婚であったり、あるいは義父母の面倒をみていたりと、それぞれ環境も経済的な状況も違います。立ち位置が違えば、考えも違うことが多く、ご両親のシニアライフについて意見が合わないことも出てくるでしょう。
今回は親の介護や施設入居について兄弟姉妹間で「意見があわない時」の対処法をご紹介します。
親の介護と兄弟姉妹間の代表的なトラブルといえば以下の3つ。
- 経済的な問題
- 親の介護・お世話に関する考え方の違い
- そもそも関与しようとしない
それぞれの問題点と具体的な対処法について体験談を交えながら考えていきましょう。
①経済的な問題の対処法
・親の経済状況を把握する
・不公平感のないように留意して分担する
施設入居にせよ、同居して介護するにせよ、いずれにしても経済的な負担が子世帯にかかることは少なくありません。
親の介護は本来「親のお金」でまかなうべきものです。ですからまず、親の経済状況をきちんと把握し、そのお金でどのような介護サービスや施設をまかなえるのかを考えましょう。
たとえば自宅があるのなら売却したり、資産を現金化して老後資金にあてるのも選択肢のひとつです。
もし費用が不足し子どもたちの負担が必要な場合、結論から言えば「話し合う」しかありません。
しかし、兄弟姉妹でも経済力は違います。では収入が多い人が多く負担すればいいのか、といえば(本人に意思があれば別ですが)、それでは不公平感があり、なかなか納得いかないものです。
妹のことを考え、最低限の必要分を折半した上で、親が余裕ある暮らしができるように、プラスアルファは自分の意志で自分が出した。たとえ少しでも、きちんと費用を分担すれば納得できるので、そこは兄妹でもきちんとするのが大事だと思う
夫が独立開業したばかりで経済的に安定していなかったので話し合いをした上で「事業が安定した時点、少なくとも3年後からは施設費用等の一部を負担する」で納得してもらいました。
実の兄妹ですが、ここはハッキリしておいたほうが兄も安心すると思い、誓約書のような文書にしてわたしました
どうしても子世帯による負担が必要な場合、きちんと話し合った上でなるべく公平になるようにしましょう。体験談にもあるように、遠方でお世話ができない身内は少し多めに費用を負担する、払える人がとりあえず払うにしても誠意をみせることは大切です。
②親の介護・お世話に関する考え方の違い
・介護をする当事者の考えを重視
・ベストではなくベターな選択肢で納得する
「誰が介護をするのか」「施設に入れるか入れないか」意見が合わない場合もあります。
親と子どもの関係では、「兄は親にずいぶんかわいがってもらい、お金もだしてもらって留学までした。でも自分はあまりかまってもらえず、短大進学後も最低限の仕送りしかなかった」といったように、親への思いや感謝の度合いが違うのはよくあること。
客観的な意見であるかは別にしても、感情の問題はなかなか互いに理解するのは難しいものです。ここは明確に、たとえば自宅介護をするならその当事者の意見、施設入居であれば中心となって動き手続きなどをする人の意見をメインに考えるのが妥当です。
また、全員が納得するベストな選択肢が決まること自体、現実では少ないものです。ベストではなく、子どもたちが「それならいいか」とベターな選択肢でも納得することが大事です。
しかし自分の負担だけが大きいといずれ問題になると思ったので、今後は年金で足りない費用があれば姉たちが折半して出すこと、夏とお正月は順番に姉たちが母を預かる、または実家にきて見守りをしてもらい、わたしは旅行をする、その旅行代金は姉たちが負担してくれることとしました。
この時に先々についても話し合い、自宅介護が難しくなったときの施設入居に関する判断は実際に介護をする私の決断を尊重すること、その時には実家を売却して費用を作ることなども決めておきました。母のことで姉妹でもめるのは、何より母が辛いと思うので、最初の段階でうやむやにせずに明確に決めてよかったと思います。
③親の老後について関与しようとしないトラブル
・情報を子ども間で共有する
・主介護者の負担を少しでも減らす努力をする
中には身内であっても、親の介護についてまったく関心を持たない、関与したくないと避けるケースもあります。
経済的なことに関してが多いようですが、無理やり、相手に費用を請求することは難しいでしょう。しかし、いくら費用がかかり、他の兄妹が負担しているかは記録として残しておきましょう。
できれば、相手からの反応がなくても、こうした記録や親の状況を知らせたいところです。関与しようとしない身内にはそれなりの理由があるのかもしれませんが、親の介護で兄弟間が悪くなるのではなく、それを機会と捉えて、改めて家族の絆を確かめるチャンスとなるといいですね。
いずれにしても、情報を子どもたちの間で共有することは大切です。たとえばLINEのグループを作り、親の状況をそこで知らせる。介護を任せている他の兄弟姉妹は感謝の気持ちを伝え、手伝えることや他に分担できることはないかと常に聞くといった連絡手段を作り、主に介護をする人の負担を少しでも軽減させるのも良い方法です。
介護を担う人、施設とのやり取りをする人が孤立しないよう、ひとりで親の介護を抱え込まないようにすることが大切です。
親の介護をきっかけにして家族の結びつきを深めよう
介護では身内での役割分担をするのが大切です。誰かひとりに大きな負担がかからないようにしたいですね。
お世話ができない人は資金の援助をする、それができないようであれば、介護を主にしている人が休めるように長期休暇などは交代する、施設入居なら経済的な問題を事情にあわせて分担する、それぞれのご家庭にあったベターな選択をしたいものです。
ちなみに最終手段として家庭裁判所で調停し話し合いをする方法があります。できれば、そのような手段をすることなく、親の介護や老後について話し合うことをきかっけにして、より強い家族の結びつきがうまれることをめざしましょう。
主に教育・ライフスタイルを中心に執筆するフリーライター。自身の介護経験と親世代・子世代両方の視点から取材を行いリアルな声を届ける。サードエイジ世代の新しい暮らしと50代からの豊かな人生を求めて模索中。
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