令和2年5月29日に「年金制度改革関連法」が成立し、6月5日に公布されました。この制度は2022年4月以降より施行されます。改正の目的は「長期化する高齢期の経済基盤の充実を図るため」とされています。
パートなどの短時間労働者への年金適用拡大や、現在就労されている65歳以上の方に大きく関わる制度改正です。近々、年金を受給される方もぜひ理解しておくことをおすすめします。
今までの制度と何が変わるのでしょう。
パートの厚生年金への加入が拡大
現在パートなどで働いている短期労働者の厚生年金の適応が拡大されました。
現在は従業員500人以上の企業において、週20時間以上の勤務などの条件を満たす短時間労働者に対して厚生年金が適応されています。
今回の改正で、段階的に対象者を広げていくことになりました。2022年10月からは101人以上の事業所、2024年10月からは51人以上の事業所までが適用になります。
厚生年金に加入できるということは、社会保険に加入できることになります。将来受け取れる年金が増えるだけでなく、傷病手当金などの制度を利用できるというメリットがあります。
働く60〜64歳までの年金受給額の見直し
年金を受給しながら働いている方も多いのではないでしょうか。60歳以上の方が会社員として勤めながら、賃金と年金を受給していた際、その合計が一定金額を超えると、年金の一部または全額支給停止になります。
現在60〜64歳の方は、賃金と年金受給額の合計が月額28万円を超えると、超えた分の年金が停止されてしまいます。
それが、今回の制度改正で月額28万円から47万円に引き上げられることになりました。
65歳以上の方は元々の上限が月額47万円のため、変更はありません。
在職中の老齢厚生年金の改定
65歳以上の在職中の老齢厚生年金受給者の年金額は、退職時もしくは70歳到達時に年金が反映され増額されます。
今回の改正で、毎年年金額の改定が行われるようになりました。
そのため毎月保険料を納めている結果が、すぐに年金として反映される仕組みになっています。
年金の受給開始の選択肢が広がる!
現在、年金の受給開始年齢の上限は70歳です。今回の改正で75歳までに延長され、60〜75歳の間で受給が可能になります。シニア世代の就労者が増えていることから、受給タイミングの選択肢が広がったと言えるでしょう。
年金は65歳未満で受給すると減額、65歳以上で受給すると増額されます。75歳から受給開始した場合、毎月の年金が84%増額になります。
75歳に繰り下げて受給する方が、月の年金額が増えます。ただし受給期間も短くなるため、お得になるのかは一概には言えません。
参照:厚生労働省「年金制度改正法」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00006.html
福祉系大学卒業後、医療ソーシャルワーカーとして勤務。介護保険や障害年金などの申請手続きの相談、入院費や退院後の生活についての相談、施設入所調整など、支援は多岐に渡る。その傍ら、医療ソーシャルワーカーの経験を活かし、介護・福祉分野のライターとして執筆活動を行っている。
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