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低血圧は塩分をたくさんとるべき?食事のコツを管理栄養士が解説

低血圧の原因と食事のコツ

立ちくらみやめまい、倦怠感、午前中の調子の悪さなどの不調を引き起こす低血圧。改善のために「血圧を上げる塩分をとればよいのでは?」と考える方もいるかもしれません。

低血圧の方は食事にどのように気をつけるとよいのでしょうか?今回は低血圧の方の塩分摂取や食事のとり方のポイントについて、管理栄養士が解説します。
 

 

1,低血圧の原因は?

低血圧の明確な基準はありませんが、一般的には最高血圧(収縮期血圧)が100mmHg未満である場合を指して います。またアメリカでは90mmHg/60mmHg以下という診断基準が用いられる こともあり、基準はさまざまです。

低血圧の原因は、

  1. けがによる出血
  2. 降圧剤や抗うつ剤などの薬剤
  3. 心臓や肺の病気
  4. 立ち上がる際の血圧低下
  5. 脱水

などが知られています。

とくにこれらの原因がない場合を「本態性低血圧」 といい、遺伝や体質が影響しているとも考えられています。

治療を必要とされない低血圧もあり ますが、病気が隠れている場合もあるため、気になる症状が続く場合は必ず医療機関を受診しましょう。
 

2,低血圧を治すには塩分をたくさんとるべき?

塩分のとりすぎは血圧を上げ高血圧の原因になることから「低血圧の方は塩分をたくさんとることで改善できる?」と思うかもしれません。

ですが、おすすめできない以下の理由があります。

一般的な食生活では塩分は不足していない

一般的な食生活では塩分が不足する心配は少なく、積極的にとることはすすめられません。

日本人の平均的な食塩摂取量をみると、成人男性では10.9g 、成人女性では9.3g となっています。男性の目標量7.5g未満、女性6.5g未 満を上回っており、塩分が過剰の傾向です。

また最低限必要な塩分は、食塩相当量で1日に1.5g とされており、1日2食以上とっていれば下回るとは考えにくい量です。

よほど偏った食生活でない限り、低血圧の原因が塩分の摂取不足とは考えにくくなります

塩分の過剰摂取により胃がんなどのリスクになる

塩分のとりすぎは高血圧になるイメージが強いのですが、実はがんや骨粗しょう症のリスクとなることも知られているので、必要以上に塩分をとるのは控えましょう。

・胃がん、食道がん …食塩により粘膜がダメージを受ける
・骨粗しょう症…ナトリウム過多によるカルシウムの尿中排泄の増加

また食塩の大量摂取は、中毒や高ナトリウム血症を起こすことがあり大変危険 です。

食塩の致死量は体重1kgあたり0.5~5g といわれ、体重50kgの場合は、25~250gの食塩の量に相当します。また高ナトリウム血症では、口渇(のどの渇き)、頭痛、おう吐、けいれん、倦怠感、意識障害を起こす場合もあります。 くれぐれも過剰摂取をしないよう気をつけてください。
 

3,低血圧の人の食事のポイント3つ

塩分をとる以外では、どのように食事に気をつければよいのでしょうか?低血圧の改善に役立つ食事のポイントをご紹介します。

①3食バランスよくとる

低血圧の方は食欲不振が起きることもありますが、3食バランスよくとることが大切です。栄養不足の状態では不調を起こしやすくなるため、主食、主菜、副菜のそろったバランスのよい食事を心がけましょう。

とくに朝食の摂取は、体調を整えるために有効です。私たちの身体には体内時計が備わっており、これが乱れることで眠気や頭痛、倦怠感、食欲不振などの不調 を引き起こすことがあります。

朝食をとることで体内時計が整いやすくなるため、毎日欠かさずとることを心がけてみましょう。起床後1時間以内の摂取が効果的といわれています。

②水分をこまめにとる

水分は食事以外で1.5L前後を目安に、こまめに補給しましょう。水分不足の状態では、血液量が減ってしまい、低血圧となることがあります。

ヒトの1日に必要な水分量は2.5L程度であり、半分ほどは食事から補給しています 。そのため食事以外の水分摂取は1.5L前後が目安となります。運動や作業によりよく汗をかく方などはさらに補給が必要です。

ただし、コーヒーやアルコールでの水分補給はすすめられません。利尿作用があるため、水分をしっかりとっているつもりでも脱水状態を引き起こすことがあります。水、麦茶などを中心に水分補給をしましょう。

③鉄やビタミンB1を含む食べ物を取り入れる

鉄やビタミンB1が極端に不足することで、疲労感や倦怠感の原因になることがあります。

低血圧の方は食欲不振から栄養不足が心配されるため、鉄やビタミンB1を意識して取り入れるとよいでしょう。

鉄・ビタミンB1を含む食べ物の例

レバー・卵・牛もも肉・いわし・カツオ・あさり・納豆・豆腐・小松菜・ほうれん草
ビタミンB1 豚肉、蕎麦、玄米、納豆、豆腐、うなぎ


 

まとめ

低血圧の改善に必要なのは、バランスのよい食事や水分の摂取はもちろん、睡眠による休養や適度な運動も大切といわれています。不調をやわらげるためにも、できるところから改善に取り組みましょう。

参考:文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
公益財団法人日本心臓財団「循環器最新情報」
An official website of the United States government「National Heart, Lung, and Blood Institute」
厚生労働省「令和元年国民健康・栄養調査結果の概要」
大学病院医療情報ネットワーク「中毒時の対応に関する情報(中毒情報)について」

 

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筆者:広田千尋
広田千尋管理栄養士。保健センターや病院に勤務し、生活習慣病予防や低栄養予防など、中高年から高齢者の栄養サポートに従事する。
現在はフリーランスとして独立し、食や栄養に関するコラム執筆や、身近にある材料でおいしく健康になれるレシピ作成などの活動を行っている。

 

 
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