ちゃんと食べているつもりでも、食べる量や食べるものによっては低栄養のリスクがあることをご存じですか?低栄養(痩せ)によるデメリットはさまざま知られており、高齢者本人だけでなく、周囲の方の見守りやサポートも大切になってきます。
今回は低栄養を予防するポイントについて、管理栄養士が解説します。
1.低栄養ってどんな状態?
低栄養とは、身体が必要とする栄養が不足している状態のことです。とくに高齢者の低栄養は要介護状態に関わるため、早めの介入が大切です。
低栄養の状態は、体重や体重減少などがひとつの目安になります。
・痩せている(BMI18.5未満)
・半年で体重が2~3kg以上減った
痩せているかどうかはBMIという体格指数が目安となり、<体重(㎏)÷身長(m)÷身長(m)>で算出できます。
わかりやすくするため、低栄養に気をつけたい体重の目安と、標準体重を身長別に表にまとめています。
身長 低栄養の恐れ(BMI18.5) | 標準体重(BMI22) | |
---|---|---|
135cm | 33.7kg | 40.1kg |
140cm | 36.3kg | 43.1kg |
145cm | 38.9kg | 46.3kg |
150cm | 41.6kg | 49.5kg |
155cm | 44.4kg | 52.9kg |
160cm | 47.4kg | 56.3kg |
165cm | 50.4kg | 59.9kg |
170cm | 53.5kg | 63.6kg |
175cm | 56.7kg | 67.4kg |
また体重が心配なくても、半年で2~3kgなど体重減少がみられる場合は低栄養が疑われます。食事以外にも、体調の変化がないかにも注意しましょう。
2.高齢者に低栄養が多い理由は?
高齢者に低栄養がみられやすい理由として、以下のような理由が考えられます。
・準備が大変になり食事が簡単になる
・嗜好が変わりあっさりしたものを好む
・噛む力が弱くなり食べられる種類が限られる
年齢を重ねると避けられない部分もありますが、食欲が出るように運動を行ったり、メニューの工夫をしたりと、できる対策はたくさんあります。後ほど紹介する食事のポイントをぜひ参考にしてください。
3.低栄養によるデメリット
低栄養を予防したい理由は、要介護状態との関連が大きいためです。低栄養により身体にどのような影響を与えてしまうのか、一度確認しましょう。
サルコペニアやフレイル
低栄養の状態では、筋肉を維持する栄養素が不足し、サルコペニア(筋肉量の減少)やフレイル(虚弱の状態)、ロコモティブシンドローム(身体能力が低下した状態)の原因となります。
転倒や骨折との関連が知られており、運動はもちろん食事面での予防も大切になります。
免疫機能の低下
栄養不足により免疫機能低下が知られており、感染症などの心配も出てきます。低栄養と関連する感染症には、肺炎・細菌性やウイルス性の下痢などが知られており、感染リスクが高まることもわかっています。
骨粗しょう症
骨の健康に欠かせないカルシウムやビタミンDなどの栄養素が不足すると、骨粗しょう症のリスクとなります。骨粗しょう症になると骨折しやすくなり、腰痛、寝たきりの原因になったりすることがあります。
誤嚥性肺炎
筋力の低下により飲み込む力が低下することや、免疫機能の低下により、誤嚥性肺炎のリスクとなります。誤嚥性肺炎とは、食べ物や口の中の細菌などが誤って気管に入る(誤嚥)ことで、肺炎を引き起こすものです。命に関わる場合もあるため、高齢者は気をつけたい病気です。
■高齢者が気を付けたい誤嚥性肺炎(原因と対策)
4.低栄養を防ぐ食事のポイント
低栄養を防ぐには、必要な栄養素を不足することなく取り入れることと、食事量が少なくなる原因を解消することが大切です。予防のポイントを詳しく解説します。
毎食たんぱく質を含む食材を取り入れる
たんぱく質は筋肉の材料となり、筋肉量維持には欠かせません。「白米とみそ汁だけ」「パンだけ」「うどんだけ」という食事は、たんぱく質が不足しやすくなります。
主食(米・パン・麺など)に合わせて、主菜(卵・豆類・肉・魚)を必ず組み合わせましょう。
食事の回数を増やす
あまり多く食べられない場合は、1日3食にこだわらずに3~5回と食事回数を増やす方法もあります。
たとえば10時や3時など時間を決めて、おにぎりやバナナ、ヨーグルト、ゆで卵など簡単なものを食べるようにするのも良いでしょう。菓子類や菓子パンではなく、なるべく栄養が摂れるものがおすすめです。
食事量低下の原因を解消する
食べる量が減っている場合、年齢以外の要因を考え、対策を工夫してみることが大切です。たとえば、
・やわらかいものしか食べられないのであれば、歯科に相談する(義歯の調整や虫歯の治療など)
・食欲がわかないのであれば、運動する機会や人と会う機会を作ってみる(デイサービスや地域に出るなど)
・バランスの良い食事の用意が難しいのであれば、宅配弁当や惣菜を利用する
など、その方にあったサポートを考えましょう。
年齢を重ねると、なかなか本人だけでの対処が難しくなる場合もあります。「元気がない?」「痩せてきた?」など、いつもと違う様子に気付いたら、できるところから対策を行いましょう。
参考:厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2020年版)
日本内科学会雑誌 108巻 11号 低栄養患者における感染症
管理栄養士。保健センターや病院に勤務し、生活習慣病予防や低栄養予防など、中高年から高齢者の栄養サポートに従事する。現在はフリーランスとして独立し、食や栄養に関するコラム執筆や、身近にある材料でおいしく健康になれるレシピ作成などの活動を行っている。
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