筋肉量が減少する病気であり、寝たきりの原因にも関わるサルコペニア。サルコペニアの予防には、食事の工夫がとても重要なことをご存じですか?
元気で生き生きとした老後を過ごすためにも、食事でしっかり対策しましょう。
今回は、サルコペニアの予防に大切な、食事にまつわる知識を管理栄養士が解説します。
1.サルコペニア予防には食事と運動が大切
サルコペニアは筋肉量が低下し、筋力や身体機能が低下した状態を指します。歩行や立ち上がりに必要な筋肉が減ってしまい、日常生活に支障をきたしたり、転倒や骨折、入院や施設入所などに関連したりするなどの影響が知られています。
サルコペニアの原因は加齢に伴うものもありますが、運動不足や食事に偏りがあることも原因のひとつです。
サルコペニアの予防には、食事と運動、どちらも重要です。運動では、筋力トレーニングやウォーキングなどを行い、筋肉量の低下を防ぎます。
また食事では、筋肉量を維持するための食べ物をさまざま取り入れ、バランスの良い食事を心がけましょう。続いて食事のポイントを詳しく解説します。
2.サルコペニアを予防する食事のポイント
サルコペニアを予防するためには、食事にどのように気をつけると良いのでしょうか。ポイントと、具体的な食べ物の例をご紹介します。
食事には必ずたんぱく質を入れる
サルコペニアの予防には、筋肉の材料となるたんぱく質の摂取が重要です。食事からのたんぱく質が不足してしまうと、身体の筋肉を分解してたんぱく質を補おうとするため、筋肉量が減る原因になります。
筋肉量を維持するためには、毎食たんぱく質を取り入れることが大切です。たとえば「ご飯とお漬物、みそ汁だけ」という内容や、「うどんだけ」という内容ではたんぱく質が不足してしまいます。
ゆで卵やヨーグルトなど、簡単なもので大丈夫ですので、必ずたんぱく質が含まれる食べ物をプラスしましょう。
たんぱく質を含む食べ物
卵類 | 鶏卵、うずらの卵 |
豆類 | 大豆、豆腐、納豆、厚揚げ、がんもどき、きなこ |
肉類 | 鶏むね肉、鶏ささみ、豚もも肉、豚ヒレ肉、牛もも肉、牛ヒレ肉 |
魚介類 | 鯛、鮭、かつお、いわし、さば、さんま、えび、あさり、ツナ缶 |
乳類 | 牛乳、スキムミルク、ヨーグルト、チーズ |
1日3食バランスよくとる
必要な栄養素を不足することなく摂るためには、1日3食欠かさずにとることが大切です。
朝昼兼用の食事をとっていたり、夜はほとんど食べなかったりなどの1日2食の食生活では、必要な栄養素を摂り切れないうえに、筋肉を分解してたんぱく質を補おうとする作用も働きやすくなってしまいます。
サルコペニアの原因のひとつに「痩せ」もありますので、1日3食の食事をしっかりとり、必要な栄養やエネルギーが不足しないようにしましょう。
また食事のバランスを整えることも大切です。バランスの良い食事とは、主食(米、パン、麺など)、主菜(卵、豆、魚、肉)、副菜(野菜、きのこ、海藻)が揃った食事を指します。毎日規則正しい生活を心がけ、3食バランス良い食事をとりましょう。
骨を強くする栄養素を摂る
サルコペニア予防に大切な運動を長く続けるためにも、骨の健康維持もとても大切です。
骨粗しょう症を予防するためには、骨の材料となるカルシウムの補給のほかにも、カルシウムの吸収を助けるビタミンDも必要とされます。下記の食べ物を毎日取り入れ、骨を丈夫にする食事内容を意識しましょう。
カルシウムを含む食べ物
乳類 | 牛乳、スキムミルク、ヨーグルト、チーズ |
豆類 | 大豆、豆腐、納豆、がんもどき、厚揚げ、きなこ |
野菜類 | だいこんの葉、かぶの葉、水菜、小松菜、モロヘイヤ、ほうれんそう、春菊、切干大根 |
海藻類 | ひじき、わかめ、昆布 |
魚介類 | 煮干し、干しえび、しらす干し、ししゃも、小あじ |
ビタミンDを含む食べ物
きのこ類 | きくらげ、まいたけ、しいたけ、エリンギ |
魚介類 | しらす干し、いわし、鮭、かじき、かつお |
卵類 | 鶏卵 |
たんぱく質の代謝をサポートする栄養素を摂る
筋肉の材料であるたんぱく質の代謝を助ける栄養素にビタミンB6があります。たんぱく質と同時に摂るように意識しましょう。またビタミンB6には免疫系の維持にも大切な役割があります。元気に毎日を過ごすためにも、シニア世代は不足することなく補いたい栄養素です。
ビタミンB6を含む食べ物
穀類・芋類 | 玄米、じゃがいも、さつまいも |
野菜類 | ブロッコリー、ピーマン、かぼちゃ |
果物類 | アボカド、バナナ、キウイフルーツ |
豆類 | きなこ、納豆 |
肉類 | ささみ、鶏むね肉、豚ヒレ肉 |
魚介類 | まぐろ、かつお、いわし、鮭 |
サルコペニアの原因となる「加齢」は避けることができませんが、運動や食事は意識して気をつけることで、サルコペニアの予防に繋げられます。
サルコペニアは気づかないうちに進行してしまうのが怖い病気。長く元気でいられるためにも、できることから取り組み、サルコペニアを予防しましょう。
■痩せているのに肥満!?実はサルコペニア肥満の可能性あり
管理栄養士。保健センターや病院に勤務し、生活習慣病予防や低栄養予防など、中高年から高齢者の栄養サポートに従事する。現在はフリーランスとして独立し、食や栄養に関するコラム執筆や、身近にある材料でおいしく健康になれるレシピ作成などの活動を行っている。
管理栄養士によるレストランでのお食事サービス、バリアフリー設計、安否確認や生活相談など、積水ハウス「グランドマスト」は、シニアが安心・快適に暮らせるサービスのある賃貸住宅です。
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