老後に不安を感じる人は多いですが、具体的に何を準備すればよいのかよく分からない、という声もよく聞かれます。
では、どのような準備が必要なのでしょうか?
株式会社AlbaLinkが全国の男女500人を対象に実施した「老後の備えに関する意識調査」の結果を見てみましょう。
この調査では、61.8%の人が老後に向けた準備を進めていることが明らかになりました。特に多くの人が「お金に困るのではないか」と感じているようです。また、「楽しい老後を過ごすために備えておきたいこと」や「理想とする老後の過ごし方」についても質問があり、多くの回答が集まっています。
老後は貯金や投資だけでなく、健康維持や人間関係の構築、趣味や生きがいを見つけることも大切です。今からできる老後の備えについて、一緒に考えてみましょう。
老後の生活で不安に感じることは「お金に困らないか」
「老後の生活で不安に感じること」として最も多かった回答は「お金に困らないか(409人)」で、全体の8割を占めました。2位は「健康でいられるか(116人)」となっています。
・友人があまりいないので、寂しい老後になりそう(30代 女性)
・マイホームを所有していないと、年齢面を理由に家を貸してもらえなくなりそう(30代 女性)
・年金だけでは生活できない不安。働くつもりでも、健康でいられるかどうか(40代 男性)
・老後は医療費がかさむものの、年金だけではやりくりできないこと(60代以上 男性)
金銭面の心配をしている人が圧倒的に多いのは、「十分な年金がもらえない」という不安が根強いからでしょう。貯蓄や投資で老後資金を準備している人も、「物価が上昇しているから、今の備え方で十分なのか不安」と感じているかもしれません。
また資金力がないと、健康の維持や住まいの確保に関する不安にもつながりそうです。
なお介護については「家族を老々介護すること」に不安を感じている人がいる一方、「自分を介護してくれる人がいるのか」という不安も多数。未婚率や子どもをもたない夫婦の増加が影響していると考えられます。
なお「不安はない」と答えた人は1人だけでした。
老後の備えをしている人は61.8%
「現在、老後の備えをしているか」という問いに対して、「している」と答えた人は、61.8%。不安があるから備えておくのは、当然ともいえます。
一方で、「老後の不安を抱えつつも、現時点で十分な対策ができていない」という人も4割近くいることがわかりました。
「今の日常生活を送るのに精いっぱいで、老後のことまで考えられない」「生活費を払ったら、貯金・投資に回せるお金は残らない」という人も多いと推測できます。とくに子どもがいる家庭では、教育資金と老後資金を同時に準備するのは難しいケースも多いと思われます。
楽しい老後を過ごすために備えておきたいこと1位は「老後資金をつくる」
「楽しい老後を過ごすために備えておきたいこと」を聞いたところ、圧倒的1位は「老後資金をつくる(412人)」でした。2位「健康・体力を維持する(209人)」も200票以上を集め、全体の4割を占めました。「老後の生活で不安に感じること」に対応したようなランキング結果となっています。
また「楽しい老後に向けた備え」の中には、低コストでできるものもあるとわかります。「老後資金」「住まいの確保」などは資金がないとできませんが、健康づくりやコミュニケーションならあまりお金をかけずに備えられるからです。
老後に向けて資金が大切なのは言うまでもありません。しかし、「今は老後資金に回せるお金がない」という方は、低コストでできる準備から始めてみるといいかもしれません。
<1位 老後資金をつくる>
・体が動かなくなったときに子どもたちに迷惑かけないよう、老人ホームに入居できるくらいの資金を貯めている(40代 女性)
・「NISA」「iDeCo」「投資信託」などを活用して、将来の資金を増やす(50代 男性)
資金をつくる方法としては、「働く」「投資」「貯蓄」「節約」などが挙げられています。
「老人ホームに入れるくらい」など具体的な目標を決めて、資金を準備している人もいました。必要な額に対していくら足りないかが明確にわかると、取り組みが具体性を増しそうですね。
<2位 健康・体力を維持する>
・体力ができるだけ衰えないように、定期的に運動する(40代 男性)
・健康を最重要視しています。「睡眠」「栄養を摂る」「信頼できる病院を調べておく」などで備えたいです(50代 女性)
具体的な取り組みとしては「食生活の見直し」「運動」「健康診断の受診」などが挙げられました。健康を維持することで、長く働けたり、自宅で過ごせる時間が長くなったりします。
健康でいれば医療費も少なくなるでしょう。「家族や子どもに迷惑をかけないよう、健康でいたい」という人もいました。
<3位 住まいの確保・リフォーム>
・住宅。持ち物を少なくして一軒家を手放し、通院や買い物が便利なマンションに転居する予定です(40代 女性)
・家の築年数が古いので、動けるうちにメンテナンスをしています(50代 男性)
「今は賃貸だが、いずれ家を買いたい」といった回答が寄せられています。高齢になると賃貸物件の新規入居や更新が難しくなるという不安が背景にあるのでしょう。
一方、すでにマイホームを所有していても、築年数が古いと耐震面やバリアフリー面に不安が出てくるもの。そのため「老後に向け、マイホームをリフォームしておきたい」と考えている人も目立ちました。
<4位 周囲・家族とのコミュニケーション>
・友達がいないので、共通の趣味をもつ人たちとの関係構築を積極的に行いたい(40代 女性)
・良好な家族関係(50代 男性)
「老後は孤独になるのでは」と不安を抱え、家族・周囲と十分にコミュニケーションをとっておきたいと考える人も多いようです。周囲としっかりコミュニケーションをとることで、困ったことがあったときに頼りやすくもなるでしょう。
また結婚している場合、配偶者と丁寧にコミュニケーションをとっておくことで「老後の夫婦ふたりでの生活」が快適になると考えられます。夫婦で「老後はどこでどのように暮らしたいか」「老後にやりたいことはあるか」といった価値観・希望を話し合っておくのも大切でしょう。
<5位 趣味をもつ>
・夫婦共通の趣味を見つける(50代 男性)
没頭できる趣味をもつことで、老後の生活は充実したものになるでしょう。趣味を通じて人間関係が広がったり、夫婦関係がよくなったりすることも期待できます。
趣味の見つけ方としては「近隣のサークル活動を調べてみる」「昔やっていた趣味や部活をもう一度やってみる」などがあります。
理想とする老後の過ごし方は「趣味を楽しむ」
「理想とする老後の過ごし方」の1位は「趣味を楽しむ(158人)」、2位は「できる限り仕事を続ける(137人)」、3位「のんびり暮らす(86人)」でした。
「趣味を楽しむ」「のんびり」といった回答からは、現役時代にはやりにくいことを老後に叶えたいという思いが伺えます。「住む場所を変えたい」という人も多く、現役時代とは生活を変えたいと希望している人が多い印象です。
「できる限り仕事を続けたい」という人の中にも、「今の仕事をそのまま続けるのではなく、働き方や職種を変えて働きたい」という回答が多くみられました。「仕事中心で、趣味や家族に時間を割けない」「仕事や家庭の都合で、好きではない場所に住んでいる」といった現状への不満が見え隠れします。
<1位 趣味を楽しむ>
・月1回旅行する(20代 女性)
・仕事しないで、趣味に没頭できる生活(40代 男性)
「今は仕事中心なので、リタイアしたら思いっきり趣味や旅行を楽しみたい」という人も多いようです。趣味は生きがいにつながりますし、人と交流して社会と接点をもつきっかけにもなり、孤独になることを防いでくれます。
例えば「船で世界一周したい」といった具体的な目標があれば、予定や費用の準備も進めやすそうですね。
<2位 できる限り仕事を続ける>
・仕事は社会とのつながりなので、何かしていたい。ただし休みが週の半分ほど欲しい(40代 男性)
・身体が動く間は、仕事をして収入を得たいです(50代 女性)
仕事を続けたい理由は、「社会と接点をもちたい」「生活費の足しにしたい」「身体を動かしたい」など。とくに趣味などがない場合、仕事で人や社会と関わりたいと考える人も多いのではないでしょうか。
働くことで生活費の不安も軽減されます。短時間だけ、または限られた日数だけ働きたいという意見も多くなりました。
<3位 のんびり暮らす>
・どこで何をしていてもいいから、心穏やかに、平和に暮らしたい(30代 女性)
・なるべく人の目を気にしない環境で、ゆっくりとした生活を送りたいです(50代 男性)
現在、「仕事や家事・育児に追われている生活」「マイペースに過ごすことが難しい毎日」を送っている人が多いからこそ、のんびりストレスなく暮らしたいと考える人も多いのではないでしょうか。
のんびりできる場所として、人が少ない田舎や地元を挙げた人もいました。
<4位 健康に過ごす>
・まずは健康であること。「多少お金で苦しい思いをしたとしても、痛み苦しみがない健康な身体があれば、老後も怖くない」と思っている(50代 女性)
・適度な運動をして体力を維持する。できるだけ薬に頼らない生活(60代以上 男性)
健康でいれば、趣味・旅行を楽しめたり、仕事ができたりします。反対に健康を損ねてしまうと、医療費がかかり、「自由に動けない」「行きたいところに行けない」といったストレスを感じることになります。
「持病があって薬を常用していると、災害時などに必要な薬が手に入らず困りやすい」というデメリットもありますね。
<5位 お金に困らない暮らし>
・質素な暮らしで良いので、お金に困らない生活(30代 男性)
・金銭面にゆとりをもてる老後(40代 女性)
もらえる年金額や取り崩せる貯蓄の額が少ないと、「病気や介護で負担が増えたら、生活が破綻する」といった事態になりかねません。そのため「贅沢はしなくていいから、お金の不安がない生活をしたい」「食べるものに困りたくない」という切実な声も多くなりました。
旅行や趣味にあてる費用ではなく、基本的な生活費の心配をしている人も多い印象です。
<6位 夫婦・家族の時間を大切にする>
・子ども夫婦の近くに住み、孫と遊ぶ(40代 女性)
・家族と幸せに暮らすこと(50代 男性)
仕事が忙しい人ですと、「もっと家族との時間をとりたいのに、今は十分にできていない」という気持ちがあるのではないでしょうか。そのため、仕事を辞めて時間ができたら家族と過ごしたいと考えるのですね。
家族に囲まれて生活していると、安心感もあるでしょう。
<7位 田舎・地方で暮らす>
・今は賃貸暮らしですが、老後は田舎に住みやすい家をたてて、農業などをして暮らしたい(30代 女性)
・田舎に移住して自給自足の生活を営みたい(40代 男性)
田舎生活や自給自足生活への憧れをもっている人が多いとわかりました。田舎ならのんびり過ごせそうというイメージもあるのでしょう。
ただ老後に移住することを考え、「病院が多い地方都市がいい」という意見もありました。老後を考えると、「医療機関」「移動手段」「商業施設」の豊富さは調べておいたほうがよいでしょう。
<8位 自分のことは自分でやる>
・金銭面・健康面で子どもたちの世話になることなく過ごしたい(40代 女性)
・誰の助けも借りず、身の回りのことは、自分自身でできること(50代 女性)
子どもや周囲に迷惑をかけたくないという気持ちがにじむ回答が多数。また自分のことを自分でできるうちは、訪問介護員に来てもらう必要も施設に入る必要もなく、比較的自由に暮らせます。
自分のことを自分でやるためには、やはり健康が大事になります。
<9位 友人と過ごす時間を楽しむ>
・趣味でつながっている人と関わりたい(30代 男性)
・楽しく過ごせるコミュニティに属したい(30代 女性)
家庭の中だけで過ごしていると、刺激が少ないうえ、家族への不満を吐き出す場所がなく、ストレスもたまりがちです。しかし友人と過ごすことで、視野が広がったり、「家庭内で困っていること」の相談先ができたりします。
生活をより豊かに、そして心をより安定させるために、友人関係はとても大切です。
<10位 便利な街で暮らす>
・都会に住みつつ、老後を謳歌したい(30代 男性)
・公園が近くにある都会でゆっくりと過ごしたいと思います(50代 女性)
田舎で過ごしたい人もいる一方で、田舎の不便さを敬遠する人もいるとわかりました。例えば「車がないと移動できない」というエリアだと、高齢で運転が難しくなったときに困るからですね。
大都会ではなくても、利便性の高いエリアはあります。「便利でありながら自然も感じられる、都会と田舎が融合したような街に住みたい」という声も多くなっています。
まとめ
調査結果から、老後への不安が「お金」に集中していることが浮き彫りになりました。多くの人が老後資金を準備することを重視し、健康や住まいの確保にも関心を寄せています。
理想の老後を実現するためには、まずは資金の準備や健康維持に努め、周囲とのコミュニケーションを大切にすることが重要です。
これらの要素を踏まえ、安心して楽しい老後を迎えましょう。
(グッドライフシニア編集部 松尾)
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