介護保険の居宅サービスとは?
介護が必要になっても、できる限り自宅で暮らしたいと考えている方は少なくありません。そこで利用したいのが「居宅サービス」です。
自宅での生活を続けながら、介護や看護、リハビリテーションなどのサービスを受けることができます。
居宅サービスには主に、自宅で受ける「訪問サービス」、自宅から施設へ通う「通所サービス」、短期間だけ宿泊する「短期入所サービス」、自宅での生活を補助する福祉用具貸与などの「その他のサービス」があります。
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~介護保険で利用できる「居宅サービス」~
- 訪問サービス(訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護、訪問リハビリテーション)
- 通所サービスのデイサービス・デイケア(通所介護、通所リハビリテーション)
- 短期入所サービス(短期入所生活介護、短期入所療養介護)
- その他のサービス(福祉用具貸与、特定福祉用具販売、住宅改修、居宅介護支援ほか)
1, 訪問サービス
ホームヘルパーや介護福祉士、看護師、理学療法士など、専門スタッフが自宅を訪問し日常生活の介助や料理や洗濯などの生活援助、リハビリなどを行います。
料金は介護度によって異なります。
要支援1、2の場合 | 週1回:1,226円/月 週2回:2,452円/月 週2回以上:3,889円/月 |
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要介護1~5の場合 | 身体介護 20分未満:165円/回 20~30分未満:248円/回 30~60分未満:394円/回 1時間~1時間半未満:575円/回 |
生活援助 | 20~45分未満:181円/回 45分以上:223円/回 |
(2018年度)
訪問介護(ホームヘルプ)
身体介護、生活援助、通院等乗降介助の3つを軸に、日常生活のサポートを行います。ホームヘルパーもしくは介護福祉士が担当します。ただし、家事代行とは異なるため、スタッフに頼めることとそうでないことがあります。
被介護者本人以外への援助や、日常の家事の範囲を超えること、医療行為など、介護保険制度のなかで明確に定められていますので、確認しておくようにしましょう。
訪問入浴介護
スタッフが自宅に簡易的な浴槽を運び入れ、入浴の介助を行います。安全に入浴するために、スタッフは通常3人ほどで、体調チェックを担う看護師も含まれています。
入浴そのものだけでなく、ドライヤーや爪切り、クリームの塗布などの全身ケア、着衣、ベッドへの移動なども行います。
寝たきりの方など、自宅の浴室で入浴するのが難しい方が、利用することが多いです。
訪問看護
病状の確認や点滴など、看護師による医療的な処置を受けることができるサービスです。療養のための食事や排泄の介助、体位の変換、家族への介護支援・相談なども行います。
理学療法士が訪問し、歩行訓練などのリハビリテーションを行うこともあります。
ただし、訪問看護を利用するには、主治医の書いた「訪問看護指示書」が必要です。
訪問リハビリテーション
理学療法士や作業療法士、言語聴覚士が自宅を訪問し、主治医の指示書をもとにリハビリや指導を行います。
退院・退所後の自宅での生活に不安を抱えている方や、病院・リハビリ施設に通うのが困難な方などが利用するサービスです。ただし、医師が必要と判断した場合に限ります。
病院などで行うリハビリが身体機能の回復を目的としているのに対し、訪問リハビリでは食事・排泄・更衣などの日常生活動作のトレーニング、住環境整備のアドバイスなども行い、生活機能の維持・向上を目指しています。
2, 通所サービス
自宅から施設に通い、介護やリハビリを受けます。日帰りだけでなく、短期間だけ施設に宿泊する「短期入所」も含まれます。
通所介護(デイサービス)
無料の送迎で施設に通い、そこで日中を過ごします。食事や入浴、排泄の介護、機能訓練などのサポートを受けることができます。
通所リハビリテーション(デイケア)
デイサービスと同じく自宅から施設に通って受けるサービスですが、デイケアではリハビリテーションを中心に一日を過ごします。
■デイサービスとデイケアは何が違うの?
3, 短期入所サービス(ショートステイ)
施設に短期間宿泊し、機能訓練などを受けます。介護者がケガをしてしまった、冠婚葬祭で家を空けなければならないなど、何らかの事情で一定期間、自宅での介護が困難になったときに利用できるサービスです。
介護者や家族の休息にもつながるため人気が高く、数ヶ月待ちという施設も多いため早めの予約が必要です。
短期入所生活介護
1泊2日から連続30日以内の期間で入所し、入浴や排泄、食事など、日常生活のサポートを受けることができます。
施設には、ショートステイを専門とする「単独型」と、特別養護老人ホームや介護老人保健施設(老健)などに設置された「併設型」があります。
短期入所療養介護
日常生活の援助がメインとなる「短期入所生活介護」に対し、「短期入所療養介護」は医師や看護師によるケア、機能訓練などを受けることができるサービスです。
老健のほか、療養病床をもつ病院・診療所などで利用できます。慢性的な疾患をもち、重点的に医療・看護が必要な方は、介護療養型医療施設に入所します。
4, その他のサービス
居宅サービスには上記のほかに、福祉用具のレンタルや購入、住環境の改善(住宅改修)などがあります。
福祉用具貸与
要介護者が自宅で生活するうえで必要不可欠な車椅子や杖、歩行器、介護用ベッドなどの福祉用具をレンタルすることができます。
要介護度別に設定された、介護保険の毎月の支給限度額に収まるようにケアプランを立て、月ごとに自己負担額を支払います。
車椅子や介護用ベッドなどは、介護度によってはレンタルが出来なかったり、主治医の意見書が必要な場合があります。事前にケアマネジャーへ確認することをおすすめします。
特定福祉用具販売
ポータブルトイレや入浴補助用具、簡易浴槽など、直接肌に触れる福祉用具は、レンタルには向いていません。これらは「特定福祉用具」として、利用者が購入することになっています。
購入にかかる費用は、介護保険の支給限度額の枠外としてカウントされ、1年間で総額10万円までと決められています。
住宅改修
要介護者が安全に生活できるよう、自宅の住環境を整えることも大切。手すりの取り付けや段差の解消、便器の取り替えなど、バリアフリーに向けた住宅改修にかかる費用は、介護保険から支給を受けることができます。
工事費用の上限は、住宅1棟につき合計20万円までです。
工事の内容によっては、介護保険適応外の場合があります。事前にケアマネジャーや改修業者と確認しておきましょう。
特定施設入居者生活介護
「有料老人ホーム」「サービス付き高齢者向け住宅」「養護老人ホーム」「軽費老人ホーム(ケアハウス)」の4つの施設のうち、都道府県などから「特定施設」と指定された施設に入居している人が、介護保険を利用して受けることのできるサービスです。
食事や排泄の介護、リハビリなどが提供されます。
居宅介護支援(ケアマネジメント)
居宅介護支援とは、ケアマネジメントとも呼ばれ、介護を必要としている方(在宅の要介護者)が適切な生活支援を受けて安心して暮らせるよう、さまざまな手続きを代行してくれるサービスのことです。
居宅介護支援事業所に所属するケアマネジャーが担当し、ご本人やご家族の状況・要望に沿ったケアプランの作成、サービスの管理などを行ってくれます。
市区町村による要介護認定を受けたら、居宅介護支援事業所や地域包括支援センター、介護保険施設に所属しているケアマネージャーを探し、契約を結びます。
そこから具体的な相談やケアプランの作成に入り、サービス事業者との契約へと進んでいきます。
ケアマネージャーはその後の介護生活においても何かと相談することになる大切なパートナーであるため、相談しやすい人かどうか、相性を見極めて選ぶことが大切です。
以上、介護保険で利用できる「居宅サービス」のご紹介でした。
介護保険についての詳しい記事は介護保険制度とは?|その仕組みを分かりやすく解説をご覧ください。
(グッドライフシニア編集部)
福祉系大学卒業後、医療ソーシャルワーカーとして勤務。介護保険や障害年金などの申請手続きの相談、入院費や退院後の生活についての相談、施設入所調整など、支援は多岐に渡る。その傍ら、医療ソーシャルワーカーの経験を活かし、介護・福祉分野のライターとして執筆活動を行っている。
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