脳が刺激され健康増進
むし歯や歯周病を予防するためには、口腔ケアが大切です。高齢者に口腔ケアをすることで肺炎の発生率も半分近くに減るといいます。
永久歯の数は親知らずを抜かすと上下合わせて28本。一生自分の歯で食べるために、80歳になっても20本の歯を保とうという「8020(はちまる・にいまる)運動」が、平成元年(1989年)に厚生省(当時)と日本歯科医師会により提唱され開始されました。
自分の歯が20本残っていれば、しっかり噛むこともでき、健康を維持しやすくなるためです。
噛むことで歯根膜(歯と骨との間にある薄い膜状の組織)からの刺激が脳の各部分に届き、神経の動きもよくなり、脳血流も増えます。
歯の治療をした場合でも、義歯できちんと噛めている人は健康状態が高いという調査結果もあるため、虫歯や歯周病を放置しないことが大切です。
歯の健康は認知症予防にも
高齢者の場合、噛みあわせを良くすることにより、栄養状態が改善され若返り効果も。認知症といわれていた寝たきりの患者さんが歩けるようになった例もあります。
認知症発症率と歯の数には相関関係があり、東北大大学院の研究グループが、70歳以上の高齢者を対象に行った調査によると、脳が健康な人の歯は平均14.9本、一方の認知症の疑いありと診断された人は9.4 本という結果になりました。
この調査から、残っている歯が少ない人ほど認知症になりやすいことが明らかになったのです。
大切な歯を失う原因ともなる歯周病は、細菌の感染によって引き起こされる炎症性疾患で、歯の周りの歯ぐきや骨などが溶けてしまう病気です。
この歯周病菌が出す毒素により、血液中に「サイトカイン」という炎症物質のが流れ込みます。この「サイトカイン」が脳に流れ込むと、認知症を発症するリスクが高まるわけです。
歯周病は初期段階ではなかなか自覚症状は出てきません。歯肉の腫れ、歯みがきのとき出血する、口臭など、気になる症状があったら歯科医を受診してください。
毎日を健康に過ごすために、口の中も清潔を保つことを心がけ、虫歯や歯周病を放置せず定期的に歯科検診を受けましょう。
寝たきりなどで歯医者さんに行けない方は、地域の歯科医師会に訪問歯科診療(往診)を相談してください。
大人になったら、歯周病は気になっても、虫歯のことはあまり考えなくなりませんか? 「70歳から大人の虫歯が急増する」のだそうです。そして虫歯で歯を失う危険性も…。なぜ高齢になると虫歯に!?歯科医の坂口豊先生に教えてもらいました。
■【歯科医監修】70歳から虫歯急増!歯の数を減らさない7つのお口ケア
参考:農林水産省「ゆっくりよく噛んで食べていますか?」
厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト
(グッドライフシニア編集部 松尾)
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