以前は近くのクリニックに歩いて通っていたのに、足腰が弱ったり、認知症でひとりでは歩けなくなったりで、診療が受けられない。あるいは、重い病気で入院し、体力が弱った退院後の診療をどうしよう……。
そんな不安があるなら、在宅医療(訪問診療)を検討してはどうでしょうか。家までドクターが来てくれて、生活面での不安もサポートしてくれます。
≫1.通院できない人の家に来てくれる「在宅医」
≫2.「往診」とは違い、症状がなくても定期的に訪問
≫3.かかりつけ医、入院先、地域の医師会や役所、地域包括で紹介してもらう
≫4.費用はそれほど高くない。高額療養費制度で自己負担額は抑えられる
1.通院できない人の家に来てくれる「在宅医」
高齢になると、だんだん家から出るのが大変になってきます。以前はひとりでかかりつけの医院まで行けたのに、今は難しい、という人も多いでしょう。けれど、持病がある人などは、定期的な診療や服薬が必要で、月に何度も医院に通うこともあります。
家族が通院をサポートしようにも、たびたびは難しい。介護タクシーやヘルパーさんに頼むとすごくお金がかかってしまうし、診察を待っている間も疲れてしまう……。弱っているのにお医者さんにかかれないのでは、本人も家族も本当に心配です。
そこで、頼りにしたいのが「在宅医」です。高齢などで医院に行けない人に対し、自宅に来て診療をしてくれます。このような在宅医が、最近ではとても増えてきました。
2.「往診」とは違い、症状がなくても定期的に訪問
「昔から家に来てくれるお医者さんはいたはず。病気になったら家まで来てくれた」と言う方もいるでしょう。しかし、それは「往診」といって、病気や怪我になってからお願いする診療です。
それに対して在宅診療は月に2回など定期的に訪問して、計画的に健康管理を行います。
高齢者の多くは、何かひとつの病気があるといのではなく、高血圧も心臓も、糖尿病も、といくつもの疾患を抱えていたり、体全体が衰弱して免疫力が弱っていたりと、危ういバランスの上で生活をしているといっても過言ではありません。
「今日はひときわ調子が悪い」と思って受診したときには、そのバランスが大きく崩れ、かなり危険な状態になっていることもあるのです。そうならないように、患者の全身状態を定期的に確認するのが在宅医療です。
在宅医療の目的は、病気の治療だけではありません。転倒や寝たきりの予防、肺炎や褥瘡などの予防、栄養状態の管理など、予測されるリスクを回避し、入院が必要な状態を未然に防ぐことも、在宅医療の重要な役割です。
入院後の体調管理はちろん、こうした定期診療のほか、緊急時には365日、24時間体制で対応します。必要に応じて臨時往診や入院先の手配なども行ってくれるため、家で暮らしていてだんだん弱ってきた人にとって、在宅医療はとてもありがたいものです。
そのほか、入院後の体調管理や症状の確認などにも、在宅医療が頼りになります。入院していた病院に経過をみせにいくことももちろんありますが、その後の生活の中でどう病気を管理し、再発や衰弱を防いでいくのか、そこのカギを握るのは、日々の生活や体調をよく知る在宅医であることが多いのです。
特に、末期のがんの方など、治らない病気を抱えて病院を退院する方の中には、別の療養病床に行くのではなく、「自宅で最期を迎えたい」と願う患者さんも数多くいます。そういう方の看取りをする意味でも、在宅医の存在は欠かせません。
在宅医は、入院先の医師や、かかりつけ医などとも連携をとりながら診療をすすめます。また、在宅医を検討している人の場合は、介護保険サービスを使っていることが多いもの。ケアマネジャーはじめ、訪問介護のヘルパー、訪問看護の看護師、訪問薬剤師、訪問リハビリの理学療法士など、さまざまな専門職と連携・協力しながら、診療を可能にしています。
では、在宅医の医師に、どうやったら家に来てもらえるのでしょうか。いろいろと方法はあります。
3.かかりつけ医、入院先、地域の医師会や役所、地域包括で紹介してもらう
まずは、かかりつけの医院の先生に相談してみましょう。
内科の先生などでは、開業医として自分の医院で診療をしながら、週に1日など、在宅医を兼務している場合があります。自身が在宅医をしていない場合でも、地域のつながりから、懇意の在宅医を紹介してくれる場合もあるでしょう。
病院から退院する方の場合は、退院支援をする相談員や看護師が、必要に応じて在宅医を紹介してくれます。病院にも定期的に通い、在宅医の診療も受けることは問題なくできます。
また、在宅医療を受けるような患者さんは、ケアマネジャーに介護計画を立ててもらい、訪問看護や訪問介護、デイサービス、訪問入浴などの介護保険サービスを受けていることが多いと思います。こうした専門職とも連携しながら、在宅での診療はスムーズに進んでいきます。
そのほか、地域の医師会、自治体の介護保険担当窓口、地域包括支援センターなどでも、管轄内の在宅医を紹介してくれます。介護保険サービスを使っている場合は、ケアマネジャーさんが在宅医を紹介してくれることもあります。
4.費用はそれほど高くない。高額療養費制度で自己負担額は抑えられる
在宅医療にかかる主なお金には、以下のようなものがあります。
- 医療機関への支払い
- 薬局への支払い
- 介護保険の自己負担
目安としては、病状が落ち着いている患者さんで、医療費が1割自己負担の人(現役並みの収入がある人は3割)なら、月2回の定期的な訪問で、7000円程度という場合が多いようです。
末期のがん患者さんなどは、疼痛管理などのために頻繁に在宅医が診療に来る場合があり、そういうときは費用が多くなりますが、高額療養費制度によって、医療機関や訪問看護ステーションに対しての支払いについては、限度額以上の支払いは免除されます。
薬剤費も合わせて月あたりの医療費の合算のうち、限度額を超えた分は、後に還付を受けることもできます。
心配をしないで、十分に必要な医療を受けてください。
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