がんと食べ物の関係
近年、がん患者の数は増加の一途をたどっています。これは、高齢化や生活習慣の変化、環境要因など、さまざまな要素が関係していると考えられています。
がんは予防が難しい病気とされていますが、最新の研究によれば、私たちの食生活ががんリスクを大幅に減少させる可能性があることが明らかになっています。
そこで今回は、がんを予防するとされる食材について、科学的なエビデンスに基づいてリサーチしました。
1.大豆(乳がんのリスク低減)
米国立癌研究所(U.S. National Cancer Institute, NCI)のLarissa Korde博士らが、アジア系米国人の女性1,563人を対象に調査を行いました。その結果、597人が乳がんを発症しており、幼少期の大豆摂取量を基に分類すると、週2食以上食べたグループは、週4分の1しか食べなかったグループに比べ、乳がん発症リスクが58%低いことがわかりました。
同様に思春期および成人期でも、大豆を多く食べるグループでは、乳がんリスクが25%低かったそうです。
アジア人は大豆の消費量が多く、乳がん発症率は米国人の4分の1以下ですが、このアジア人が米国に移住すると、わずか3世代で米国人の乳がん発症率に近づくことがわかっています。このことから、乳がんの発生率は人種差によるのではなく、大豆の摂取量と関係していると考えられます。
なぜ大豆を摂取すると乳がんが起こりにくくなるのかというと、大豆に含まれるイソフラボンがエストロゲンに似た作用を持ち、ホルモンバランスを整えるためです。特に若年期に多く摂取すると、乳房組織の発達に影響を与え、乳がんの発症リスクを低下させると考えられています。
2.魚(大腸がんのリスク低減)
世界がん研究基金(WCRF)による、約50万人の食生活パターンを調査した研究結果によると、週に3回以上魚を食べる人は、週に1回未満しか食べない人に比べて大腸がんを発症するリスクが12%低いことがわかりました。
また、ハーバード大学のMegan Phillips医師が、22,071名の男性について調べた研究結果によると、週5回以上魚を食べる男性は、週1回以下しか食べない男性に比べて、大腸癌(直腸結腸癌)になるリスクが40%も低いということです。
女性に関しては、魚を多く食べると腎臓がんでもっとも多い腎細胞がん(renal cell carcinoma)が44%低下する事が分かったそうです。
3.緑茶(胃がんや肺がん、肝臓がんのリスク低減)
緑茶にはカテキンと呼ばれるポリフェノールが豊富に含まれており、これが抗酸化作用を持つとされています。東京大学の高橋京子教授らの研究では、緑茶を定期的に摂取することで胃がんや肺がん、肝臓がんのリスクが低減する可能性が示されています。
緑茶のカテキンは、がん細胞の成長を抑制し、アポトーシス(細胞死)を促進する効果があるとされています。また、体内の炎症を抑える作用もあり、がんの予防に寄与する可能性があります。
4.トマト(前立腺がんのリスク低減)
トマトに含まれるリコピンという抗酸化物質が、前立腺がんのリスクを低減する効果があるとする研究が、ハーバード大学のEdward Giovannucci博士らによって報告されています。特に加工されたトマト製品(トマトソース、トマトジュースなど)はリコピンの吸収が良く、効果が高いとされています。
リコピンは強力な抗酸化作用を持ち、フリーラジカルによる細胞のダメージを防ぎます。また、リコピンが男性の前立腺に特に蓄積されやすいことから、前立腺がん予防に効果があるとされています。
5. クルミ(乳がん、大腸がんのリスク低減)
クルミにはオメガ3脂肪酸、抗酸化物質、フィトケミカルが豊富に含まれており、乳がんや大腸がんのリスクを低減する可能性があるとする研究が、Marshall UniversityのElaine Hardman博士によって報告されています。動物実験では、クルミを摂取したマウスが乳がんの発生率を低減したことが示されています。
クルミに含まれるオメガ3脂肪酸とフィトケミカルは、がん細胞の成長を抑制する作用があり、また抗炎症効果もあるため、がん予防に寄与すると考えられています。
6. にんにく(大腸がん、胃がん、乳がん、前立腺がんのリスク低減)
にんにくを定期的に摂取することで、大腸がんや胃がん、乳がん、前立腺がんのリスクを減少させる可能性があるとされています。
イタリアのIstituto di Ricerche Farmacologiche Mario NegriのCarlo La Vecchia博士による研究では、にんにくを多く摂取する人々で大腸がんの発症リスクが30%ほど低下したことが報告されています。
にんにくには、アリシンと呼ばれる成分が含まれており、これががん細胞の増殖を抑える効果を持っています。また、免疫システムを強化し、体内の発がん物質を排出する効果もあります。
7. ブロッコリー(肺がん、大腸がん、前立腺がんのリスク低減)
ブロッコリーを含むアブラナ科の野菜(キャベツ、ケール、カリフラワーなど)は、特に肺がんや大腸がん、前立腺がんのリスクを低減する効果があるとされています。Johns Hopkins大学のPaul Talalay博士が、ブロッコリーに含まれるスルフォラファンががん予防に有効であることを発見しました。
スルフォラファンは、がん細胞のアポトーシスを促進し、細胞のDNAを保護する効果があるとされています。また、体内の解毒酵素を活性化し、発がん物質の排出を促す作用もあります。
8. ベリー類(食道がん、結腸がんのリスク低減)
ベリー類(ブルーベリー、ラズベリー、ストロベリーなど)には、抗酸化物質であるアントシアニンやエラグ酸が豊富に含まれており、がんのリスクを低減する可能性があります。
Ohio State UniversityのGary Stoner博士による動物実験では、ベリー類を摂取することで食道がんや結腸がんの発症リスクが低下することが示されました。
ベリー類に含まれる抗酸化物質は、がん細胞の成長を抑制し、炎症を抑える効果があります。また、DNA損傷を防ぐ働きもあり、がんの予防に役立つとされています。
9. 全粒穀物(大腸がんのリスク低減)
全粒穀物(玄米、オートミール、全粒パンなど)の摂取は、大腸がんのリスクを低減することが示されています。National Cancer InstituteのAmanda Cross博士による研究では、食物繊維が豊富な全粒穀物が、腸内環境を改善し、発がん物質の排出を促進する効果があると報告されています。
全粒穀物に含まれる食物繊維は、腸内の発がん物質の濃度を低下させる効果があります。また、全粒穀物は抗酸化物質やフィトケミカルも含んでおり、これらががん予防に寄与します。
10.リンゴ(肺がん、大腸がんのリスク低減)
Cornell UniversityのRui Hai Liu博士による研究では、リンゴに含まれるフラボノイドや抗酸化物質が、肺がんや大腸がんのリスクを低減する可能性があることが示されています。リンゴの皮には特に高濃度の抗酸化物質が含まれています。
フラボノイドは、がん細胞の増殖を抑制し、アポトーシスを促進する効果があります。また、抗酸化物質がフリーラジカルを中和し、細胞を保護します。
まとめ
これらの研究者が明らかにしたエビデンスは、特定の食品ががん予防に寄与する可能性を示しています。がん予防に良いとされる食べ物を食生活に取り入れることで、がんの発症リスクを減少させることができるかもしれません。
健康的な食事とライフスタイルは、がん予防にとって重要な要素です。ぜひ、日々の生活に取り入れてみてください。
参考記事:Childhood soy intake and breast cancer risk in Asian American women.
Green tea consumption and the risk of gastric and lung cancer: a case-control study in Japan.
Tomato products and prostate cancer risk: a review of the epidemiological evidence.
Walnut supplementation improves biomarkers of inflammation and oxidative stress in humans.
Garlic intake and cancer risk: a review of the epidemiological evidence.
Broccoli consumption and cancer prevention: insights into the bioactive compounds.
Berries and cancer: epidemiological studies and clinical applications.
Whole grain intake and risk of colorectal cancer: a systematic review and meta-analysis.
Apple polyphenols and cancer prevention: recent research findings.
(グッドライフシニア編集部 松尾まみ)
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