住み慣れた自宅で長く生活を続けたいと思う一方、介護が必要になってくると一人暮らしを続けられるか不安になる方は多いのではないでしょうか。
要介護2の認定を受けた場合でも、一人暮らしを続けることは可能です。
今回は要介護2の状態や、実際に一人暮らしをされている方のケースなどを紹介します。
要介護2の状態は?要介護1と要介護3との違い
厚生労働省が発表した『平成31年度 介護保険事業状況報告』によると、要介護(要支援)認定者数は、2019年1月末時点で656.0万人に到達。
約113万人が要介護2の認定を受けています。そのうち、約16%の要介護2の方が一人暮らしという結果です。
また、要支援・要介護認定を受けている一人暮らしの割合は、要介護1は20.4%ですが、要介護3は9.0%と一気に下がり、要介護2は一人暮らしをする介護度の境目といっても過言ではありません。
では、要介護2は要介護1、要介護3と比べると、どのような状態なのでしょう。
介護度は身体機能や認知機能に応じて設定されており、要支援1・2、要介護1〜5までの7段階に分かれています。
要介護1は「立ち上がり、歩行に支えが必要で、排泄・入浴・洗顔・衣服の着脱など部分的な介助が必要」な状態です。
要介護2は、「立ち上がり、歩行に支えが必要で、排泄・入浴・洗顔・衣服の着脱などに一部または全介助が必要」な状態です。また、掃除や調理などでも介助が必要になります。
要介護2が「一部または全介助」となることや、車椅子や特殊寝台を貸与できるようになるのが要介護1との違いです。
要介護3は「日常生活動作が著しく低下し、自分で立ち上がりや排泄ができない。排泄・入浴・洗顔・つめ切り・衣服の着脱などに全介助が必要」という状態です。要介護2と比べるとより介助が必要となります。
要介護2でも一人暮らしは可能
要介護2の認定を受け、介護サービスを利用しながら自宅で一人暮らしをされている方のケースを紹介します。
奥さまに先立たれ、10年以上一人暮らしをされていました。息子さんは遠方にお住まいで、他のご親族もいません。もともと腎臓が悪く透析通院もされていましたが、身の回りのことは自分で行っていました。
今回自宅で転倒し、大腿骨頸部骨折で入院。初めて介護保険を申請し、要介護2の認定が下りました。リハビリを続け、伝い歩きができるようになりましたが、長距離は歩行器が必要で、入浴・家事・買い物などには援助が必要な状態になってしまいました。
しかしAさんはこだわりが強く、住み慣れた自宅で自由に気ままに生活することを希望され、以下の介護サービスを利用することにしました。
・ヘルパー週2回:掃除や買い物はヘルパー
・訪問リハビリ週1回:リハビリや日常生活動作の確認
・訪問看護週1回:体調管理や入浴介助
・介護タクシー:週3回の透析通院
・配食サービス:毎日夕食時に利用
・福祉用具:特殊寝台、屋外用の車椅子・歩行器、室内の手すり
上記のサービスを利用し、一人暮らしを続けています。
日常生活で援助が必要な状態で、近くにご家族がいない方でも、介護サービスを利用することで、自宅での生活を送ることができます。
要介護2で利用できるサービスとは?
要介護2の方が一人暮らしをする上で、利用できるサービスや費用について紹介します。
要介護2で利用できる居宅介護サービス
・訪問介護(ヘルパー)
・訪問看護
・訪問リハビリ
・訪問入浴介護
・通所介護(デイサービス)
・通所リハビリテーション(デイケア)
・ショートステイ など
他にも、利用者の希望に応じて、通所をメインとして、宿泊や訪問もセットで利用することができる「小規模多機能型居宅介護」や「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」など、さまざまなサービスがあります。
サービスについては、「地域密着型サービス」とは?その種類や特徴を詳しく解説をご覧ください。
要介護2で利用できる福祉用具
要介護1までは、手すり・スロープ・歩行器・歩行補助具杖・自動排泄処理装置(尿のみ吸引するもの)の貸与が可能です。
要介護2からは、以下の福祉用具も貸与できるようになります。
・車椅子
・車椅子付属品
・特殊寝台付属品
・床ずれ防止用具
・体位変換器
・認知症老人徘徊感知機器
・移動用リフト(つり具を除く)
要介護2で利用できる介護保険の利用限度額
介護度によって、利用できる限度額が決まっています。要介護2は、約19万円までが利用上限となっています。その中の1〜3割を自己負担で支払います。
・訪問介護〔入浴介助と掃除(月12回)〕:3,924円
・通所介護(デイサービス)(月8回、1日7時間):6,616円
・訪問看護(月4回):2,060円
合計自己負担額:12,600円
(1割負担の場合。デイサービスの食事代や特定事業所加算、地域加算は考慮しない)
まとめ
要介護2でも、介護サービスを利用することで、一人暮らしを続けることができます。
一人暮らしを続けるためには、介助量を増やさないことが大切です。身体機能の維持や自宅での転倒に気をつけて生活することが大切です。
福祉系大学卒業後、医療ソーシャルワーカーとして勤務。介護保険や障害年金などの申請手続きの相談、入院費や退院後の生活についての相談、施設入所調整など、支援は多岐に渡る。その傍ら、医療ソーシャルワーカーの経験を活かし、介護・福祉分野のライターとして執筆活動を行っている。
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