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介護離職を防ぐための支援制度|ワーキングケアラー必見の最新対策

ワーキングケアラーの支援制度

経済産業省の試算では2030年には約318万人に達すると予測される「ワーキングケアラー(仕事と介護を両立する人たち)」。ワーキングケアラーとして仕事と介護を両立するのは、多くの人にとって非常に難しい課題です。介護離職を防ぐために、どのような支援策があるのでしょうか?

介護離職を防ぐためには、国の支援制度や地域のサービスをうまく活用することが重要です。本記事では、ワーキングケアラーが抱える悩みを解消するための支援策を、2025年最新版として紹介します。

 

1.ワーキングケアラーが抱える主な悩み

「まさか自分が親の介護をするなんて…」40代、50代になり、親の介護が現実味を帯びてきた時、多くの方が「仕事との両立は本当にできるんだろうか?」と強い不安を感じています。

2024年9月の日本ケアラー連盟の調査では、なんと88.0%ものワーキングケアラーが不安を感じながら仕事をしているという結果が出ています。では、具体的にどのようなことに不安や悩みを抱えているのでしょうか?

①ワーキングケアラーの心身の健康リスクと対策

「もし私が倒れてしまったら、親の介護はどうなってしまうんだろう…」この不安は、ワーキングケアラーなら誰しもが抱えるのではないでしょうか。日本ケアラー連盟の調査によると、実に介護者の48.1%が「自分の健康が損なわれることへの不安」を感じています。

特に、一人で介護を担うシングルの方は、その不安がより一層強い傾向にあります。

②仕事と介護の両立による家事・育児への影響

日本ケアラー連盟の調査によれば、ワーキングケアラーの平均介護時間は2.51時間。さらに、27.9%もの人が1日に4時間以上も介護に時間を費やしています。特に、女性のシングルケアラーでは、その割合が39.5%にまで上昇。一日のなかで、どれだけの時間を介護に費やしているかが分かりますね。

「趣味の時間どころか、ゆっくり眠ることさえ難しい…」そんな切実な声は、決して他人事ではありません。多くのワーキングケアラーが、仕事、親の介護、そして自身の家庭や育児に追われ、文字通り「自分の時間」を持つことが困難な状況に置かれているのです。

③会社が介護支援制度に対する認知度が低い

ある日突然、親が倒れたり、認知症と診断されたりしたとき、「自分が介護しなければ」と考えるのは自然なことです。しかし、職場で介護の事情を話しづらかったり、制度はあっても使いにくかったりする問題が依然として残っています。知人も「制度があっても、言い出しにくい」と語っていました。

その結果、「これ以上は無理」と離職を選ぶ人も多く、厚生労働省のデータによると、年間約10万人が介護を理由に離職しています。特に40~50代の働き盛りの世代に多く、介護が長期化すると、収入が途絶えたままでの生活は非常に厳しくなります。「介護しながら働く」という選択肢を知らずに離職してしまうと、経済的・精神的に追い詰められることもあります。

そのため、できるだけ「介護離職」を避ける方法を見つけることが重要です。次章では、悩みを抱える方に向けた国の支援制度を詳しく解説します。

 

2.介護離職防止に役立つ公的支援制度

ワーキングケアラーが利用できる介護支援制度

大切な親の介護と、生活を支える仕事。この二つを両立させ、「介護離職」という苦しい選択をしないためには、国が用意している様々なサポート制度を賢く活用することが重要です。

また、会社によっては短時間勤務や時差出勤、テレワーク制度など柔軟な働き方が可能になる独自の介護制度を設けている場合もあります。ご自身の勤務先にどのような制度があるのかを確認しましょう。

ここでは、ワーキングケアラーが知っておくべき主な公的支援制度を解説します。

①最長93日取得可能「介護休業制度」

「長期休暇が取れたら、介護に集中できる時間を作れるのに…」と切実に願う方は少なくないはずです。介護休業は、まとまった期間仕事を休んで介護に専念したい場合に、最長93日まで取得できる制度です。

長期間休みが取れることで心身の負担を軽減し、介護に集中できる時間が作れるのもメリットといえます。

対象となる家族 配偶者、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫
対象となる労働者 日々雇用される人以外、男女問わず取得可能。パートやアルバイトの方も、一定の要件を満たせば利用可能
取得できる期間 対象家族1人につき、通算93日まで。3回まで分割して取得可能
賃金補償 雇用保険の被保険者で、一定の要件を満たす場合、介護休業給付金が支給されます。給付金額は、休業開始時の賃金日額の67%相当額
申請方法 勤務先の会社に申し出る

 
少しでも収入の不安が減るのは本当に助かりますよね。会社の人事担当に相談することや、厚生労働省の「両立支援制度ポータルサイト」などの公的情報を活用することも有効です。

②時間単位で利用できる「介護休暇」

介護休暇は、親の通院の付き添いやケアマネージャーとの打ち合わせなど、短時間で介護が必要な時に時間単位で取得できる休暇です。

時間単位で利用できるため、親の介護で通院に付き添ったり、ケアマネージャーなどとの短時間の打ち合わせをしたいときは、介護休暇を活用すると良いでしょう。

対象となる家族 配偶者、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫
対象となる労働者 日々雇用される人以外、男女問わず取得可能
取得できる日数 対象家族が1人の場合は年5日まで、2人以上の場合は年10日まで
取得単位 1日または時間単位 (半日/時間単位での取得が困難と認められる業務に従事する労働者について、半日/時間単位での取得を除外する労使協定を締結している場合、対象の労働者は1日単位でのみ取得可能)
賃金補償 介護休暇中の給与の有無は、会社の規定による
申請方法 勤務先の会社に申し出る

 

③自治体で確認を!「家族介護慰労金」

日々の介護の頑張りを、誰かに認めてもらえることって、意外と少ないですよね。家族介護慰労金は、要介護度4または5の高齢者を介護している家族を慰労するために支給される制度です。自治体によって支給対象や金額が異なるため、お住まいの自治体のHPや窓口で確認すると良いです。

④介護保険の補助金あり「居宅介護住宅改修費制度」

家の中のちょっとした段差が、親にとっては大きな負担になるものです。居宅介護住宅改修費制度は、親の自宅の廊下や玄関、トイレなどを改修して介護しやすい環境に整える際に介護保険によって支給される制度です。

手すりの設置や段差の解消などが対象になるので、親が家の中で動きやすくなり、子供が介護しやすくなるなどのメリットがあります。自治体への申請が必要なので、ケアマネージャーなどの専門家に相談するのがおすすめです。

⑤保険で払い戻しできる「福祉用具購入費制度」

入浴補助用具や腰掛け便座などレンタルに抵抗があるとき特定福祉用具を、介護保険を利用して購入できるのが福祉用具購入費制度です。レンタルではなく、使い慣れたものを購入できるのは安心感がありますね。いったん全額を支払ったあと、費用の9割(一定以上所得者の場合は8割又は7割)が介護保険から払い戻されます。

利用者負担はお住まいの地域によって異なるため、自治体に問い合わせてみてください。
 

3.地域の支援サービスをフル活用するための具体的な方法

ワーキングケアラーをサポートする地域サービス

国の心強い支援制度と合わせて、ぜひ活用してほしいのが、お住まいの地域にある介護サービスです。自治体によって様々な独自のサービスが提供されている場合があるので、積極的に情報を集めてみましょう。

①地域包括支援センター

地域包括支援センターは、介護に関するあらゆる相談に応じてくれる、地域の総合窓口です。介護保険の申請手続きはもちろん、介護サービスに関する情報提供や、介護に関する悩みや不安の相談など、専門の相談員が親身になって対応してくれます。一人で悩まず、まずは地域包括支援センターに相談してみませんか?

②地域支援事業

地域支援事業は、高齢者が要介護になることを予防し、住み慣れた地域で安心して暮らせるようにさまざまな取り組みを行う事業のことです。「地域の中で、親が安心して過ごせる場所や繋がりがあれば…」と考えている方におすすめです。

市町村が主体なので、親が住んでいる地域の訪問型や通所型サービスの提供を受けられるほか、高齢者の孤立予防を目的とした住民同士の交流なども行っています。そのため、地域の方と関わりをもちながら過ごしたいという親の希望を叶えることができます。

③配食サービス

離れて暮らしている親の食事が心配だけれど、毎日様子を見に行くのは難しいというのが現実。自治体によっては、高齢者の健康維持をサポートするために配食サービスが提供されています。

食事を届ける際に安否確認もしてもらえるので、ワーキングケアラーの精神的な負担軽減にもつながるのではないでしょうか?年齢や世帯構成などによって対象者が異なるため、親が住んでいる自治体に問い合わせてみてください。

介護支援を上手に活用したい方は、こちらの記事もご覧ください
介護保険で利用できるサービスとは?(居宅・施設・地域密着型)
 

4.介護疲れを防ぐ心身ケアと効果的なリフレッシュ法

仕事、家庭、そして親の介護…毎日が目まぐるしく過ぎ、気づけば心身ともに疲弊している。それがワーキングケアラーの現実です。決して一人で抱え込まず、頼れる人に相談することが大切です。まずは、ケアマネージャーや介護支援専門員に、あなたの状況を話してみてください。

また、意識して「自分を労わる時間」を作りましょう。おすすめは以下のような過ごし方。

  • マッサージやヨガで体をほぐす
  • 好きな音楽を聴く
  • 温かいお風呂にゆっくり浸かる
  • カフェで読書をする
  • 公園を散歩する

週に一度は30分でも自分の時間を作ったり、月に一度は誰かに介護を代わってもらうなど頑張りすぎないことも必要です。

介護の負担を減らすために役立つ記事はこちら
在宅介護の良い点と問題点|限界を感じたときの対処法とは?
介護で疲れた!ストレスのサインと介護の負担軽減策
認知症の介護がつらい…認知症介護のお悩みトップ3の対処方法とは?
 
親の介護と仕事の両立は、本当に大変な道のりです。だからこそ、ワーキングケアラー自身の心身の健康を守るための制度やサービスを、ためらわずに活用してください。一人で抱え込まず、使えるものはどんどん使っていく。それが、長く、そして無理なく介護を続けるための大切な一歩です。

まずは地域の支援センターに電話してみましょう。心身の負担を軽減し、介護を無理なく続けるための第一歩を踏み出してみてくださいね。
 

親の介護に関する体験談はこちらからご覧いただけます

親の介護体験談

 
参考:厚生労働省「仕事と介護の両立 ~介護離職を防ぐために~」
日本ケアラー連盟「ワーキングケアラーの就業継続の実態に関する調査報告書」
 


ライター鶴田智美筆者:鶴田智美
ホテル、人材業界での勤務を経て、出産を期にWEBライターとして活動を開始。
大手ライフメディアサイト、女性向けグルメニュースサイトなどで食・暮らし関連の
記事を執筆中。両親ともに元気ですが、将来に備えて介護について学んでいます。

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