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仕事と介護の両立をラクに!ワーキングケアラーが活用すべき支援制度&地域サービス

ワーキングケアラーの支援制度

親の介護をしながら仕事をしている「ワーキングケアラー」。経済産業省が2024年3月に公表した試算によると、主に仕事をしているワーキングケアラーは2030年時点で約318万人に上るとされています。

物理的・体力的な負担をできるだけ軽減させつつ、仕事と親の介護を両立させる方法を模索している方は多いのではないでしょうか?

この記事では、介護離職を防ぎつつ、ワーキングケアラーに役立つ制度活用や心身のケアアドバイスについてご紹介します。

 

ワーキングケアラーが仕事と介護の両立に抱える悩み

2024年9月に一般社団法人 日本ケアラー連盟が公表したデータによると、ワーキングケアラーの88.0%が不安を感じながら働いているとの調査結果が報告されています。具体的にどのような点に不安や悩みを抱えているのでしょうか?

介護者自身の心身の健康を害する

同調査の結果によると、ワーキングケアラーの48.1%が介護者自身が心身の健康を害してしまうのではないか、という不安を抱えていると報告されています。特にシングルの女性は、同居・別居を問わず不安を感じる割合が高い傾向に。

ワーキングケアラー自身が健康であるからこそ、親の介護が成り立っているという面が分かります。

家事や育児、趣味など他のことがおろそかになる

日本ケアラー連盟の調査によると、ワーキングケアラーの平均介護時間は2.51時間、4時間以上介護している人は27.9%という結果が発表されています。なかでも女性のシングルケアラーは4時間以上という人が39.5%を占めており、一日のなかで介護に費やす時間が長いことが分かります。

ワーキングケアラーの多くが家庭をもち、なおかつ子育て期間でもあることから、仕事・親の介護・育児や家事をすべてこなすことの難しさが表れているのではないでしょうか。

会社が介護支援制度に対する認知度が低い

親の介護が理由で仕事を代わってもらったり、休暇を申請したりするのが難しい、このような悩みも多く、結果的に介護離職を選択せざるを得ないケースも少なくありません。

仕事と親の介護を両立するためには、会社が介護支援制度に対する理解を深め、より働きやすくする環境を整えることも課題といえるでしょう。
 

ワーキングケアラーが利用できる介護支援制度

ワーキングケアラーが利用できる介護支援制度

親の介護と仕事を両立させ、介護離職を防ぐためには、サポート制度を活用することが重要です。制度によっては経済的な支援を受けられる場合もあるため、収入面の不安の解消にもつながります。ここでは、主なサポート制度について解説します。

介護休業制度

介護休業とは「労働者が要介護状態(負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態)にある対象家族を介護するための休業」と定められています。まとまった休みを取って介護に専念したいときに利用すると便利です。

・対象者:配偶者 (事実婚を含む) 、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫
・介護休業制度を利用できる労働者:日々雇用を除く対象家族を介護する男女の労働者(パートやアルバイト等は要件を満たせば利用可能)
・利用期間/回数:対象家族1人につき3回まで、通算93日まで休業可能
・賃金補償:雇用保険の被保険者で、一定の要件を満たす方は、介護休業期間中に休業開始時賃金日額の67%相当額の介護休業給付金が支給されます。

詳細はハローワークでご確認ください。

介護休暇

介護休暇は「労働者が要介護状態(負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態)にある対象家族の介護や世話をするための休暇」のことです。

時間単位で利用できるため、親の介護で通院に付き添ったり、ケアマネージャーなどとの短時間の打ち合わせをしたいときは、介護休暇を活用すると良いでしょう。

・対象者:配偶者 (事実婚を含む) 、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫
・介護休暇制度を利用できる労働者:日々雇用を除く対象家族を介護する男女の労働者
・取得できる日数:対象家族が1人の場合は、年5日まで。対象家族が2人以上の場合は、年10日まで。
・取得単位:1日または時間単位(半日/時間単位での取得が困難と認められる業務に従事する労働者について、半日/時間単位での取得を除外する労使協定を締結している場合、対象の労働者は1日単位でのみ取得可能)

給与の有無:介護休暇の給与の有無は、会社の規定によって異なります。勤務先の人事部に確認すると良いです。

家族介護慰労金

家族介護慰労金は、要介護度4または5の高齢者を介護している家族を慰労するために支給される制度です。自治体によって支給対象や金額が異なるため、お住まいの自治体のHPや窓口で確認すると良いです。

居宅介護住宅改修費制度

居宅介護住宅改修費制度は、親の自宅の廊下や玄関、トイレなどを改修して介護しやすい環境に整える際に介護保険によって支給される制度です。

手すりの設置や段差の解消などが対象になるので、親が家の中で動きやすくなり、子供が介護しやすくなるなどのメリットがあります。自治体への申請が必要なので、ケアマネージャーなどの専門家に相談するのがおすすめです。

福祉用具購入費制度

入浴補助用具や腰掛け便座などレンタルに抵抗があるとき特定福祉用具を、介護保険を利用して購入できるのが福祉用具購入費制度です。いったん全額を支払ったあと、費用の9割(一定以上所得者の場合は8割又は7割)が介護保険から払い戻されます。

利用者負担はお住まいの地域によって異なるため、自治体に問い合わせてみてください。
 

ワーキングケアラーをサポートする地域サービス

ワーキングケアラーをサポートする地域サービス

国の支援制度とあわせて活用したいのが地域サービスです。以下は代表的なものですが、自治体によって独自のサービスを行っている場合があるため、各自治体のHPや窓口で確認することをおすすめします。

地域包括支援センター

地域包括支援センターは支援が必要な高齢者の総合的な相談窓口です。家族からの相談や介護保険の申請など、幅広く支援を行っているのが特徴。介護・保健・福祉の専門職がサポートを担当しているため、ワーキングケアラーが抱える親の介護に関するさまざまな相談にのってもらえるのが特徴です。

地域支援事業

地域支援事業は、高齢者が要介護になることを予防し、住み慣れた地域で安心して暮らせるようにさまざまな取り組みを行う事業のことです。

市町村が主体なので、親が住んでいる地域の訪問型や通所型サービスの提供を受けられるほか、高齢者の孤立予防を目的とした住民同士の交流なども行っています。そのため、地域の方と関わりをもちながら過ごしたいという親の希望を叶えることができます。

配食サービス

別居や離れた地域で親の介護をしていると、気になるのが食事ではないでしょうか?自治体によっては、高齢者の健康維持をサポートするために配食サービスが提供されています。

食事を届ける際に安否確認もしてもらえるので、ワーキングケアラーの精神的な負担軽減にもつながるのではないでしょうか?年齢や世帯構成などによって対象者が異なるため、親が住んでいる自治体に問い合わせてみてください。

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ワーキングケアラーは心身のケアも大切

自分自身の仕事や家庭、さらに親の介護とワーキングケアラーは心身ともに疲労が蓄積されがちです。一人ですべてを抱えるのではなく、ケアマネージャーや介護支援専門員などに相談することも大切です。

また、マッサージやヨガなどでリフレッシュするのも効果的。家にいると家事が気になって休めない、という方はあえて外出して気分転換するのもおすすめです。

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まとめ

この記事では、ワーキングケアラーが抱える悩みと、それらを解決するための制度やサポートについてご紹介しました。

親の介護と仕事の両立をこなすワーキングケアラーは、心身ともに負担が大きいもの。介護休業や介護休暇などの公的制度を活用し、できるだけワーキングケアラー自身の負担を減らすことが何より大切です。

介護について分からないことがある場合は、地域包括支援センターを活用するのがおすすめ。介護全般の相談に対応してもらえます。ぜひご紹介した制度やサポートを活用してみてください。

参考:厚生労働省「仕事と介護の両立 ~介護離職を防ぐために~」
日本ケアラー連盟「ワーキングケアラーの就業継続の実態に関する調査報告書」


ライター鶴田智美筆者:鶴田智美
ホテル、人材業界での勤務を経て、出産を期にWEBライターとして活動を開始。
大手ライフメディアサイト、女性向けグルメニュースサイトなどで食・暮らし関連の
記事を執筆中。両親ともに元気ですが、将来に備えて介護について学んでいます。

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