高齢者向けの住宅ローンである「リバースモーゲージ型住宅ローン」が近年、注目されています。少子高齢化が進む中、老後の住まいを真剣に考える方が多くなったことも影響しているでしょう。
リバースモーゲージは、ここ10年で利用者が大きく増加しており、今後さらに普及が進むことが予想されます。しかし、リバースモーゲージは自宅を担保にする住宅ローンなので、リスクも多く存在します。
本記事ではリバースモーゲージの特徴とメリットやリスクについて解説します。
≫1.リバースモーゲージ型住宅ローンの特徴
・金融機関のリバースモーゲージ
・住宅金融支援機構【リ・バース60】
・リバースモーゲージの金利は?
≫2.リバースモーゲージのメリットと3つのリスク
≫3.安心を求めるなら「自宅住み替え運用」という手も
1.リバースモーゲージ型住宅ローンの特徴
リバースモーゲージ型住宅ローンとは、自宅を担保にして融資を受けるシニア向けの住宅ローンです。
通常の自宅を担保にして融資を受ける住宅ローンと異なり、契約者が亡くなった後、自宅を売却することで元金の返済を行うため、月々の支払いは利息のみで抑えられます。
つまり、「住宅ローン」は一括で借り入れを行い、その元本と利息を毎月少しずつ返済していくのに対して、「リバースモーゲージ」は借り入れ残高の利息部分を毎月返済し、最後に一括返済します。
そのため、老後に古くなった住宅の住み替えやバリアフリー構造へリフォームなどを行う際に有効な手段といえるでしょう。
リバースモーゲージ型住宅ローンは金融機関独自のものと、住宅金融支援機構と提携している金融機関が提供する【リ・バース60】の2種類があります。
金融機関のリバースモーゲージ
住宅関連のほか様々な使途に適用できるため、老後の生活資金や医療・介護費用として使うことも可能です。
しかし、金利は通常の住宅ローンや住宅金融支援機構の提供するリバースモーゲージ型住宅ローンより高いというデメリットがあります。
対象者は、借入時に50歳~60歳以上、一般的には80歳までの年齢制限を設けています(金融機関により異なる場合も)。
資金の使いみち:資金使途に制限がなく生活資金などにも利用できます。
金融機関によって借り入れ条件が異なるため、借り入れ限度額や利息率、返済期限など、複数の金融機関の条件を比較し、ご自分の条件に合う金融機関を選びましょう。
住宅金融支援機構【リ・バース60】
特に人気が高く、近年、利用者が増加しているのは、住宅金融支援機構の「リ・バース60」です。
2022年11月の住宅金融支援機構の発表によると、2022年7月~9月におけるリ・バース60の申請戸数は474戸となり、前年同期比で17.6%増加しています。また、付保実績戸数は400戸で前年同期比35.6%増加、取り扱い金融機関数は前年同期比10.7%増の83機関となっています。
対象者は60歳以上。資金の使いみちは、住宅ローンですので、住宅に関連することのみ利用できます。
おもに建替え、住替え、リフォーム、住宅ローンの借り換えなどに利用できます。
リバースモーゲージの金利は?
金融機関、リ・バース60、どちらの場合も、サービスを提供する金融機関によって金利は異なりますが、目安として3.5〜4.5%で設定されています(変動金利を採用しているため金融機関によって金利が異なります)。
リバースモーゲージの金利については、各金融機関に問い合わせをして最新情報を確認してください。
2.リバースモーゲージのメリットと3つのリスク
リバースモーゲージのメリットとは?
リバースモーゲージには以下のようなメリットがあります。
・高齢でも利用できる
・月々の支払いは利息分のみ
・元金返済は現金一括、または自宅の売却のいずれかを選べる
・老後の不安解消(預貯金や退職金などの資金を残しておける)
・相続問題(亡くなった時に不動産を売却するので公平に遺産を分配できる)
このようなメリットから、リバースモーゲージは過去10年ほど右肩上がりで増加しており、特に2017年にノンリコース型を導入してから、大きく利用者が増加していることが読み取れます。
※ノンリコース型とは担保物件の相続人が、ローン返済のために物件を売却した場合、売却代金が残債に満たなくても相続人に不足額の請求をしない条項を加えたものです。
こういった背景には、昔のように親が自分の家を子供に引き継ぐケースが減ったことも影響していると考えられます。
子供が親の家に住まない場合では、親が亡くなった後、その家を使う人がいなくなるため、売却して手放すか、賃貸に出すなど別の運用方法を考える必要があります。
しかし立地条件や建物の状態が悪いと、賃貸に出しても借主が見つかりにくいので、自宅の解体も検討しなければなりませんが、解体には多くのコストがかかります。
こうしたケースでは、契約者が亡くなった後、自宅を売却することで元金の返済を行うリバースモーゲージ型住宅ローンがまさに適しているといえるでしょう。
リバースモーゲージの注意点
リバースモーゲージは、推定相続人(子どもなど)の同意が必要です。また、契約者が亡くなったとき、担保にしていた自宅を売却し一括返済するため、相続人が自宅を相続できないことになります。
そのため、配偶者やお子さんがいる場合、住む場所が確保されている必要があります。ただし、相続人が現金による一括返済ができれば自宅を売却する必要はありません。
リバースモーゲージのリスクとは?
リバースモーゲージには主に以下3つのリスクがあります。
長生きするほど利息の支払いが増加する
リバースモーゲージ型住宅ローンは期限付きの契約の場合もあり、決められた期限より長生きすると、家を手放さなければならないケースが考えられます。
期限付きの契約の場合、契約期間が終了すると、契約者が存命中でも元金と利息を一括返済する必要があるためです。
もし資金不足で一括返済できなければ、自宅を売却して返済に充てることになるため、最悪の場合、住む家を失ってしまいます。
自分が何歳まで生きられるかは予想できないので、対策が取りにくいリスクといえます。
変動金利の場合、金利上昇により負担が増加する
変動金利を選択した場合、借り入れの期間中に金利が上昇すると、毎月の返済額も上昇することになります。
現在の日本は低金利の状態が続いており、実際多くの方が変動金利で住宅ローンを組んでいますが、今後上昇する可能性も十分考えられます。
変動金利を利用する場合は、現在の金利がずっと続くとは考えず、上昇するリスクを頭に入れ、余裕を持った資金計画を立てる必要があるでしょう。
自宅の価値下落により担保資産の価値が減少することがある
動産評価額が低下するリスクがある点も見逃せないリスクです。
リバースモーゲージの融資額は、一般的に不動産評価額の50~80%が目安ですが、建物は経年劣化するため、徐々に資産価値は減少します。
金融機関は契約開始後も数年単位で評価額の見直しを行うため、資産価値が減少すると担保割れが発生し、超過分を一括支払いしなければならないケースもあります。
高齢でも利用できるリバースモーゲージは、メリットも多くありますが、「長生きリスク」「金利上昇リスク」「動産評価額の下落リスク」があることを念頭に置く必要があります。
また、リバースモーゲージを利用する際には、家計や老後のライフプランを総合的に考えて借入額を検討しましょう。
信頼できる金融機関や専門家に相談し、リバースモーゲージの仕組みやリスクについて理解した上で利用することが大切です。
3.安心を求めるなら「自宅住み替え運用」という手も
リバースモーゲージ型住宅ローンは、住宅購入や建て替え、リフォームをしたい高齢者の方にとっては魅力的な手段です。ただし、先に述べたようなリスクを抱えているため、生活費の確保を第一に考えている方には望ましい方法とはいえません。
金利や返済リスクを考えず、安心して老後生活を送りたい方は、自宅「賃貸」にして、高齢者向け賃貸やサ高住などに住み替えをする「自宅住み替え運用」もご検討ください。
■サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)とは?
■高齢者向け賃貸住宅とは?
自宅を所有し続けることで、不動産価値の上昇による資産価値の維持、将来の相続問題の解決も可能となります。一方、子育てファミリーにとっては、比較的広い自宅、場合によっては庭のある戸建てを住まいとして利用することができるため、両者にとってメリットがあります。
自宅住み替え運用とは?
具体的には、自宅を売却しないで賃貸として貸し出すことで、その家賃収入を利用して賃貸マンションに住むことができます。特に高齢者向け賃貸やサ高住は、セキュリティも安心、建物はバリアフリー構造となっているので、足腰に不安のある方も生活しやすく、高齢者の方が安心して暮らせるサービスが充実しています。
もし介護が必要になったときには、外部の在宅介護サービスを利用することが可能です(物件によりサービスは異なります)。
通常の賃貸物件では年齢が原因で入居審査に落ちる可能性もありますが、高齢者向け賃貸やサ高住では身元引受人を立てる、いない場合は「身元保証サービス」を利用することで入居審査もカバーできます。
■保証人がいなくても大丈夫!高齢者のための身元保証サービスとは?
当サイト運営会社の㈱イチイでも数多くの「高齢者向け賃貸住宅」、および「自宅住み替え運用」サービスを提供しています。賃貸や自宅の売却、リバースモーゲージ、遊休地の有効利用などに関することでご相談などございましたら、ぜひメールにてお気軽にご相談ください。お問い合わせはこちらからどうぞ。
まとめ
少子高齢社会になり、老後の住まいについて悩む方は今後も増加することでしょう。
リバースモーゲージ型住宅ローンは、自宅の住み替えやリフォームを行うのに有効な方法ですが、老後になると住宅の広さはそこまで必要ないケースも多いので、賃貸への住み替えも検討しても良いでしょう。
その他にも老後の住まいにはさまざまな選択肢があるので、ご自身にとって適した老後生活は何か、ぜひご家族の方とも話し合いながら検討してみてください。
(グッドライフシニア編集部)
宅地建物取引士・FP2級の知識を活かし、不動産専門ライターとして活動。ビル管理会社で長期の勤務経験があるため、建物の設備・清掃に関する知識も豊富。元作家志望であり、落ち着いたトーンの文章に定評がある。
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