クシャミや鼻水、目のかゆみなどのアレルギー症状で、花粉症の方にとって辛い季節が続いています。少しでもラクに過ごせるよう予防や対策を心がけましょう。
治療薬(抗ヒスタミン薬、漢方薬、点鼻薬)の作用や注意点、花粉症の根本治療である「舌下免疫療法」についても、薬に詳しい薬剤師ライターが解説いたします。
1.花粉の種類と飛散する時期
気温が上がってきて過ごしやすくなる春に、多くの人を悩ませる花粉症。日本では約50種類の植物が花粉症を引き起こすと報告され、代表的なものは、皆さんご存知の通りスギで、花粉症全体の約70%を占めると推察されて います。
花粉症の中で最も罹患者が多いスギ花粉は、地域などにもよりますが、例年2月~4月にかけて飛散のピークを迎えます。
さらに4月から5月はヒノキ、6月から8月はカモガヤなどのイネ科の花粉、8月から10月はブタクサやヨモギなどの雑草類の花粉が飛散します。
出典: 平成17・18年度厚生労働省免疫アレルギー疾患予防・治療研究推進事業「花粉症の正しい知識と治療・セルフケア」
2.花粉症の症状を楽にする予防と対策
花粉症対策では、体に侵入する花粉を少なくすることが非常に重要です。外出時、帰宅時、家の中で過ごす際には、以下の3つの点を心がけましょう。
1、付けない、吸わない
外出時はマスクやメガネを着用して、吸い込む花粉量や付着する花粉量を減らしましょう。
衣服はウールなどの花粉が付着しやすい素材のものを避け、綿やポリエステルなどの花粉が付着しにくい素材のものを選ぶようにしましょう。
また、帽子をかぶると、頭や顔への花粉の付着を減らすことができるのでおすすめです。
2、持ち込まない
外出先から帰ったら、衣類や髪の毛などに付着した花粉をよく落としてから家に入るようにしましょう。うがいをしたり顔を洗ったりすれば、のどや顔に付着した花粉を洗い落とすことができるので更に効果的です。
また、生理食塩水を体温程度に温めて「鼻うがい」をすれば、鼻腔に入った花粉も洗い流すことができます。
3、こまめに掃除をする
室内にも、衣類や髪の毛などに付着した花粉が持ち込まれたり、窓から入ってきたりすることで、一定量花粉が存在します。こまめに掃除機をかけ、室内の花粉を減らすようにしましょう。その際に部屋の換気を行うときは、窓を全開にせず、極力短時間にとどめるよう心がけましょう。
3.花粉症の薬にはどんなものがある?
花粉症の薬には内服薬や点鼻薬などさまざまなものがあります。
抗ヒスタミン薬
体内で起きているアレルギー反応を抑える働きがあります。眠気が出るのが特徴ですが、最近では眠気がほとんど出ないタイプも発売されています。
抗ヒスタミン薬は病院での処方で受け取ることができるほか、市販薬として販売されているものもあります。
病院でもらう薬と市販薬は成分が同じで量も同じであれば、効き目に変わりはありません。病院で出してもらう場合は保険が効きますので、日数にもよりますが値段が安くなる場合が多いでしょう。
アレグラ(成分:フェキソフェナジン塩酸塩)
病院の処方でもらえるほか、アレグラFXとして市販でも販売されています。ほとんど眠気がでないのが特徴で、服用期間中も車の運転を行うことができます。(まれにアレグラでも眠気が出る方もいるので、そういったときは運転を控えてください)
アレジオン(成分:エピナスチン塩酸塩)
病院の処方でもらえるほか、市販でも販売されています。病院でもらう医療用は10㎎と20㎎がありますが、市販薬は20㎎となっています。アレグラに比べると眠気は出やすいため、車の運転を控える必要があります。
漢方薬「小青竜湯」
抗ヒスタミン薬のみでは効果が足りない場合、漢方薬を追加で服用することもできます。このお薬も病院の処方だけでなく、市販薬としても販売されています。
花粉症を含むアレルギー性鼻炎などのほか、鼻風邪のときなどにも用いられる漢方薬です。吸収が良くなるため、用法は食前又は食間とされていますが、忘れてしまったときは食後に飲んでも問題ありません。
点鼻薬
花粉症には鼻に直接使う点鼻薬も有効です。ステロイドなどの炎症を抑える成分や、血管を収縮させて鼻のとおりをよくする成分を使用したものが多いです。このうち血管収縮薬は効き目はいいのですが、慣れが生じてやめられなくなってしまう可能性がある成分で、使用する際には注意が必要です。
市販の点鼻薬には複数の成分が配合されたものが多いため、購入する際は薬剤師などの専門家に相談してから購入するようにしましょう。
4.花粉症の根本治療、舌下免疫療法とは
花粉症を根本的に治すことができる舌下免疫療法をご存じですか?すべての人が治るわけではありませんが、多くの方に効果がある治療法です。
舌下免疫療法では、スギ花粉のアレルギーのもとが入った錠剤を舌下で吸収させ、飲み込むことで、毎日体内に取り込み、慣れさせるという方法です。
非常に効果的な治療法ですが、スギ花粉が飛んでない時期も通年行い、数年にわたって続ける必要があるため忍耐が必要になります。
また、微量ですがアレルギー物質を取り込むことになるので、アレルギー症状が出る可能性があるというデメリットもあります。
今では多くの耳鼻科などのクリニックで取り扱っているので、ご興味のある方は調べてみてはいかがでしょうか。
5.花症状を悪化させないために
花粉症の発症や症状の悪化には、生活習慣の乱れによる免疫機能の異常が影響するといわれています。日頃から睡眠を十分にとり適度な運動を心がけ、正常な免疫機能を保つようにしましょう。
また毎年、花粉症の症状が現れている人は、花粉が飛び始める前から予防的に抗ヒスタミン薬などを服用する「初期療法」という治療法があります。
症状が出てから治療を始めるよりも、症状を軽減し治療期間が短くなるなどの効果が期待されます。
まとめ
花粉症の対策法や薬についてご説明しました。非常につらい花粉症ですが、対策法を行ったり、薬を上手に使用したりすることで症状を緩和することができます。
また、根本治療をしてみたい方は舌下免疫療法を医師に相談してみましょう。
花粉症の治療方法は、その人の体質や症状にあったものがあるため、医師とよく相談して、それぞれご自身に合った方法を選択して、花粉対策を行ってみてください。
参照:政府広報オンライン お役立ち情報「環境省の花粉情報をチェックして早めの治療と日常生活の対策に役立てよう」
東北大学薬学部卒業。薬剤師として大学病院前や医療モール内、地域密着型など様々な薬局に従事し、現場経験は10年。出産を経て、現在は薬や医療関連を中心に記事を執筆するライターとして活動している。
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