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【体験談②遠方に住む母を呼び寄せ】親にどう話した?高齢者向け賃貸の入居をすすめるとき

体験談

高齢になりつつあるご家族に、子どものほうから施設や老人ホームをすすめるのはなかなか難しいものです。

前回はご両親のいっぽうが介護が必要となり、どのように施設入居をすすめたかをご紹介しました。

今回は、遠方に住むひとり暮らしの母親を呼び寄せたご夫婦にお話を伺いました。

体験談からわかった「親を呼び寄せるときの話し方ポイント3つ」
 

  1. 年寄り扱いしない
  2. 無理強いしない
  3. そばにいたいことを伝える

 

遠方に住むひとり暮らしの母親を息子が東京に呼び寄せ
(Nさんのケース)

ご家族のプロフィール
・Nさん(54歳/男性)
都内在住、妻(54歳)次女(19歳)と分譲マンション住まい。長女は独立。Nさんの母は当時77歳、父は10年前に他界し、静岡県の一軒家にひとり暮らし。

「おふくろボケてきたな」のひと言で親子喧嘩に。

「老人ホームはどうかと切り出すと気分を害すかなと思って、帰省時に一般的な話題として、高齢者のひとり暮らしは心配なものだよと話しました」

実はNさん夫妻は母を東京へ呼び寄せたほうがいいだろうと話し合い、老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅を見学しており、パンフレットなども持参していました。

早くに夫を亡くしたものの、地元で元気いっぱいに地域活動にも参加している母親は「ほんとにねぇ、足腰たたなくなったら、そりゃ誰かのお世話にならなきゃいけないんだから大変だよ」とまるで他人事のように返事をしたそう。

本人は自分は元気で問題がないと思っているわけです。しかし、地元の知り合いと話すと、母親が曜日を間違えて集会のない日に会館でウロウロしていたり、畑にでて騒いでいるので聞いてみると、誰かが収穫前の野菜をとったと言っているが、実際には前日に本人が収穫していたりと、心配なことが増えてくるいっぽうでした」

Nさんにとっては実の母親ですから遠慮もなく、「おふくろ、ちょっとボケてきたんじゃないか」とつい口に出してしまったところ、母親は怒り心頭でもう帰ってくるな!と怒鳴り返してきたそうです。

意固地になってしまい、もはや話を聞こうともしない母親を置いて、Nさん夫婦はあきらめて帰宅しました。
 

解決策が見つからないときは専門家に相談してみる

「わが家は娘しかいませんが、もし実の娘にお母さんボケてきたね、老人ホームに入ったらといきなり言われたら、やはり怒ってしまうかもと思ったんです」

親子喧嘩を見ていたNさんの妻は、自分に置き換えて考えてみたといいます。

いくら身内とはいえ、年寄りになったんだから、ひとり暮らしは無理だと断言されたら受け入れがたいのかも、と夫に話しました」

改めて、夫婦でどう母親と話し合えばいいのかを考えました。しかし、どう話を切り出せばうまくいくのか、こうした漠然とした相談にのってくれるところも思いつきません。

Nさん夫妻は次の3つを見学していました。

 

「まだ寝たきりというわけではないですし、いいなと思った有料老人ホームは最初の一時金が高かったので、入居するとなると静岡の家を先に処分するしかない。となると時間もかかるし、難しい。安否確認や必要なら介護サービスを頼めて、高齢者向け賃貸住宅がいいのかなと思いました」

Nさんはそこで高齢者向け賃貸住宅の担当者に連絡をし状況を説明すると「親にすすめたら嫌がられた」というケースは珍しくないこと、話し方にもコツがあることを教えてもらったそうです。
 

専門家のアドバイスをもとに母親に話してみた

体験談②

「担当者の方と相談し、母の性格も考えた上で次のような流れで話しました」

  1. 自分たちのそばで暮らしてほしい、と話す。
  2. あくまで賃貸マンションで高齢者向けのサービスがついていると説明する(老人ホームや介護施設といった言葉は使わない)
  3. 本人の気持ちを尊重し静岡の家はそのままにする前提で話してみる

 
Nさん夫妻は、母親を旅行に誘い、そこでまずNさんが母親のことを心配していること、そばにいてくれたらいろいろと手伝えるのにといつも思っていることを話しました。

「お母さんにとって子育てした家、友人も多くいる地元は離れがたいですよね」

とNさんの妻はなるべく母親の気持ちに寄り添うように言葉を添えたそうです。Nさんの妻は母親に共感する立場を崩さずに、具体的なことはNさんが話しました。

母親は引っ越すことには同意しなかったものの、ひとまず東京に遊びにくることにはなりました。東京見物をした後には、目星をつけていたサービス付高齢者住宅の前を通り、「こういうところがあるんだよ、暇な時に見学だけでもしてみよう」と声をかけると、うんとは言わないものの否定もしなかったそうです。
 

話し方次第で受け止める親の気持ちが動くことも

この時も回答を急かすようなことはしませんでした。高齢者にとって、家を離れるというのは大きな決断です。特にNさんのケースのように、健康である程度自立している場合はなおさら、です。

ご本人にとっては「なぜ、急に施設に入れようとするんだ」と、厄介払いをされているような気持ちになることは珍しくありません

老人ホームや施設という言葉じたいに抵抗感がある方もいます。ですからまず、呼び寄せのケースではNさん夫妻のように「わたし達の家のそばで過ごしてほしい」から始めてみましょう

「結局、母親を説得するのに1年近くかかりました。賃貸ですからいつでも解約できる、静岡の家は嫌だったら戻れるように残しておく、母親の気持ちを尊重しつつ、少しずつ具体的に話をして、最終的に受け入れてくれました」

実際に入居してからは思った以上に快適でうまくやっているそうです。Nさんは最後に「年寄り扱いされることがきっと我慢ならなかったんでしょう。話し方ひとつで、受け取る側の印象も違うのだと気づいてからは、なんとかなりました」と話してくれました。
 

大橋 礼筆者:大橋 礼
主に教育・ライフスタイルを中心に執筆するフリーライター。自身の介護経験と親世代・子世代両方の視点から取材を行いリアルな声を届ける。サードエイジ世代の新しい暮らしと50代からの豊かな人生を求めて模索中。


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