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親の突然の入院であわてないために|親の突然の入院であわてないためにの選択肢

親の入院、退院後の暮らし

昨日まで元気だった人が、今日、突然入院した――。高齢になると、決して不思議なことではありません。

急な入院は、ご本人やご家族も心細い気持ちになりがちです。それでも、目の前に迫る退院後の生活について考えなければなりません。

そんな突然の入院で頼りになる相談先やリハビリに力を入れる転院先、そして退院後の暮らしの選択肢について解説します。

 

高齢者の入院で知っておきたいこととは?

人が倒れてからの最初の入院先のほとんどは、急性期病院です。近年、医療体制の効率化により、治療が終わると早期の退院支援へと移る流れが強まっているため、この急性期病院で入院できる期間が短くなっています。

そのため、医師にどれくらいで退院になるかを確認し、できるだけ早いうちに退院後の生活について家族間で決めなければなりません。

そんなあわただしい状況のなかで、やさしく真面目な人ほど「退院後は自宅へ」と考える人が多いかもしれません。ご本人も「家に帰りたい」とおっしゃることでしょう。

でも、大切なのはご本人の状態に必要なケアや環境について、冷静に現実的に考えることです。それが結果的に、本人の幸せにもつながるはずです。

そんな高齢者の入院を支えてくれるのが、医療ソーシャルワーカーや地域包括支援センターといった相談機関です。転院先や退院後の生活について相談できます。

転院先には、回復期リハビリテーション病院(病棟)や介護老人保健施設(老健)などがあり、退院後の暮らしの場の選択肢には自宅のほか、特別養護老人ホーム(特養)からサ高住まで幅広くあります。

近年は、入院時から退院後の生活を見据えた支援が重視され、医療機関と地域支援機関の情報共有がより強化されています。

次は、突然の入院に対して、少しでも落ち着いて対応できるよう、相談先や転院先、退院後の生活について詳しくご説明します。
 

退院後の生活はどこに相談すればいい?

病院や地域には、それぞれ頼れる相談先があります。本人や家族だけで抱え込まないことがとても大切です。

①医療ソーシャルワーカー

まず頼りになるのが、医療ソーシャルワーカーと呼ばれる人たちです。病院内の「医療相談室」などと呼ばれる部門に所属しています。

社会福祉の専門的な知識や技能にもとづき、患者や家族への相談支援を行っています。

相談は無料です。気軽に利用しましょう。

医療ソーシャルワーカーは、入院中の医療費や困りごと、セカンドオピニオンなど幅広く相談を受け付けてくれますが、家族や本人にとってもっとも心強いのが退院支援でしょう。転院先を提案してくれたり、介護保険制度や福祉制度について教えてくれたりします。

そして、退院前には本人や家族のほか、病院側のスタッフや退院後に在宅介護を担うスタッフを集めて、今後のケアの在り方を検討する「退院時ケアカンファレンス」を開いてくれます。

疑問点を確認できる場であるとともに、本人の詳しい情報を専門家が共有してくれることで、安心感を得ることができ、退院後の充実した生活につながります。

②地域包括支援センター

地域包括支援センターは、高齢者に関することなら何でも相談できる場所として、介護・福祉・医療の専門家が相談を受け付けています。もちろん、入院中でも利用できます。相談は無料です。

たとえば、「退院時ケアカンファレンス」を病院側が実施してくれなかったりした場合は、病院に連絡をとるなどの対応してくれるはずです。

そして、要介護認定を申請する場合は、そのサポートや代行申請もしてくれます。退院後に介護が必要なら、入院中に要介護認定の申請をしましょう。ちなみに、認定調査員による認定調査は、病室で行うことができます。

場所がわからない場合は、市区町村の役所に聞けば、本人の自宅近くの地域包括支援センターを紹介してもらえます。

地域包括支援センターを利用したことのある筆者の知人女性は、「退院後の母の生活についてどうすればよいのか、と泣く私の話をやさしく聞いてくれて、最終的には職員が紹介してくれた施設に入れた。最後まで寄り添ってくれて今も感謝している」と話していました。

初めてその名前を聞き、敷居が高いと感じる人もいるかもしれませんが、このように親身に相談に乗ってくれるはずです。
 

リハビリを継続したい場合の転院先は?

親の突然の入院であわてないために

「ご高齢でもリハビリの努力は決して裏切りません。そして、リハビリの効果を実感すると笑顔が増えていく。この仕事で一番うれしい瞬間です

筆者が話を聞いた、回復期リハビリテーション病棟のリハビリ職の言葉です。

回復期リハビリテーション病院(病棟)とは、急性期病院で治療を受けて容体が安定した後に、継続的なリハビリを受ける必要がある場合の転院先となる場所です。在宅復帰を目的としたリハビリに特化しており、厚生労働省の統計では、自宅などへの退院率が約7割とされています。

急性期病院内に設置されているところもありますが、独立した病院もあります。医療ソーシャルワーカーが詳しいはずなので、相談しましょう。

入院日数は、脳卒中の場合は最長150日、高次脳機能障害の重症例は最長180日など、疾患や症状によって異なります。

ただ、医師の判定によって転院の基準を満たさない場合や、転院までにベッドの空きが出ない場合も考えられます。したがって、転院したくても必ずしもできるわけではありません。

その場合は、介護保険施設のなかで、もっともリハビリに力を入れている介護老人保健施設も選択肢の一つとなります。

ただ利用するには、65歳以上の要介護1以上という要件があります。在宅復帰を目標にした施設なので、入所日数は原則3か月(平均は10か月)ということは知っておきましょう。
 

退院後の暮らしの選択は?

退院後は、本人の希望や家族の状況などを考えて、暮らしの場所を探すことになります。

自宅外の施設は、医療ソーシャルワーカーや地域包括支援センターから紹介されるほか、自分でインターネットでみつける方法もあるでしょう。予算など自分の希望や本人の状況を伝えて、条件に合ったものを探します。

自宅への在宅復帰

自宅で暮らす場合、「訪問」「通い」「泊り」をうまく組み合わせて介護を行うのがポイントとなります。

訪問には、訪問介護などがあり、家までヘルパーがきてくれて介護をしてくれます。

通いには、デイサービスなどがあり、高齢者が施設に通うことで社会と触れ合う時間になるとともに、家族も安心して仕事や休息の時間をとることができます。

泊りには、ショートステイがあり、高齢者が施設に泊まります。

ショートステイについては「預けてまでラクをしていいのだろうか…」と罪悪感をもつ人もるかもしれません。

しかしショートステイは、長期戦の介護にとってとても重要なサービスだという考え方がひろまっています。ただ一方、環境が頻繁に変わることは、高齢者にとって大きなストレスになる心配があるのも事実です。

本人の様子をみつつ、ケアマネや施設と連携して、うまく利用したいサービスです。

自宅で利用できる主な介護サービス

訪問 訪問介護

(ホームヘルプ)

ホームヘルパーが自宅を訪問し、入浴介助や食事介助などの身体介護や、調理や洗濯などの生活援助を行う
訪問入浴介護 看護職員や介護職員が浴槽を持参して自宅を訪問し、入浴の介助を行う
訪問看護 医師の指示のもと、看護師が自宅を訪問し、療養上の世話や診療の補助を行う
訪問リハビリテーション 理学療法士や作業療法士などが自宅を訪問し、リハビリを行う
居宅療養管理指導 医師・歯科医師・看護師などが自宅を訪問し、療養上の管理や指導を行う
夜間対応型訪問介護 夜間において、定期的な訪問や呼び出しによってヘルパーが自宅を訪問し、介護などを行う
定期巡回・随時対応型訪問介護看護 日中・夜間を通じて、訪問介護と訪問看護を一体的に行えるよう、定期的に訪問または随時訪問を行う
通い 通所介護

(デイサービス)

高齢者がデイサービスセンターに通い、介護などを受ける
通所リハビリテーション 高齢者が老健や病院に通い、リハビリを受ける
泊り

(ショートステイ)

短期入所生活介護 高齢者が特養などの福祉施設に短期間泊り、介護やリハビリを受ける
短期入所療養介護 高齢者が老健などの医療施設に短期間泊り、医学的な管理のもと、介護やリハビリを受ける
組み合わせ 小規模多機能型居宅介護 同じ施設で、利用者の状況などに応じて、通いや訪問、泊りのサービスを組み合わせて行う
その他 福祉用具 本人の自立した生活や介護者の負担軽減を目的に、車いすや介護ベッドなどの必要な福祉用具のレンタルや購入費用の支給を行う
住宅改修 本人の自立した生活や事故防止を目的に、住宅のリフォーム費用の支給を行う


自宅外の施設入居

①特養・介護医療院(介護療養型医療施設)

介護保険施設には、先述の老健のほか、特別養護老人ホーム(通称:特養)と介護医療院(または介護療養型医療施設)があります。

日常生活の介護を得意とする特養は、終身まで暮らせることでとても人気があります。
ただ入居要件が要介護3以上など厳しく、待機者は約25万人と狭き門となっています。都内の人気施設では、1年以上待ちも珍しくありません。

介護医療院は、2023年3月末に廃止予定の介護療養型医療施設の受け皿として2018年にうまれた施設で、医療と介護を一体的に受けられることに特徴があります。

介護療養型医療施設は、医療体制が整っており、長期にわたる療養が必要な人が対象となっています。

介護医療院や介護療養型医療施設も、要介護1以上が対象となっています。
また特養ほどではありませんが、待機者が発生しやすい状況となっていることは、知っておきましょう。

詳しくはこちら⇒特養とは?
介護療養型医療施設とは?
介護医療院とは?

②有料老人ホーム

大きく分けて「健康型」「住宅型」「介護付」の3種類があります。

健康型は、施設内で介護を受けることはできません。介護が必要な場合は、住宅型では外部サービスを利用しながら、介護付では施設のスタッフによるサービスが受けられます。

施設によってサービスの特徴は大きく異なり、手厚い医療ケアやリハビリを行う施設も増えています

詳しくはこちら⇒有料老人ホームとは?

③サービス付き高齢者向け住宅

高齢者を対象にしたバリアフリーの賃貸住宅です。自立度の高い高齢者の住み替え先としても注目されており、日中はスタッフによる安否確認や生活相談を受けられます。

介護が必要な場合は、外部の介護サービスなどを利用するのが一般的です。

有料老人ホームと同様、施設によってサービスの詳細は異なります。>本人の状況にあったサービスを受けられるよう、しっかり情報を得て検討しましょう

詳しくはこちら⇒サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)とは?
相談先には、医療ソーシャルワーカや地域包括支援センターなど、心強い存在がいることがおわかりいただいたと思います。

そしてリハビリや暮らしの場所、自宅での生活にも、それぞれに支えてくれるサービスや人がいることもお伝えできたでしょうか。

多様な選択肢があることや家族以外の寄り添ってくれる人たちがいることを事前に知ることで、少しでも落ち着いて、より良い退院後の生活につなげていただければと思います。

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筆者:河田幸奈
会社勤務を経て、高齢者分野を中心に活動するフリーライター。「高齢者ご本人やそのご家族、そして介護職が、自分の人生を大切にできる社会」について考え中。保有資格は社会福祉士。

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