閉塞性動脈硬化症にかかり、このまま様子を見ていていいのかな?と思う方は多いもの。動脈の病気だからと言って、むやみに不安に思うことはありませんが生活習慣の見直しや日常ケアが大切です。
この記事では、閉塞性動脈性硬化症の病態や治療、何科を受診すればいいのか?また、気を付けるべき生活習慣について整形外科経験のある看護師がお伝えします。
1.閉塞性動脈硬化症とは?
閉塞性動脈硬化症とは、年齢を重ねて徐々に動脈硬化を起こした血管の内側が、狭くなったり詰まったりすることで起こる病態です。
血管は年齢とともに誰でも徐々に硬く(硬化)なり、しなやかさを失っていくものですが、これに高脂血症、糖尿病、高血圧が合併するとさらに血管が硬化しやすくなります。
動脈は全身をめぐっていますから、血管の硬化が上肢(腕)で起これば症状は腕に出ますし、下肢(足)の血管の硬化が強ければ、症状は足に出ます。
しかし、閉塞性動脈硬化症といえば、一般的には下肢の閉塞性動脈硬化症をさすことが多いのです。
どこを受診するのかというと、血管外科です。総合病院にもありますし、クリニックでも血管外科を専門とする医療機関もあります。
2.閉塞性動脈硬化症の症状
血流の低下、または遮断により患部のしびれ、浮腫み、皮膚色の変化、時には潰瘍などが生じます。
下肢の閉塞性動脈硬化症では間欠的跛行という症状があります。歩くと痛みやしびれが出てくるため、少し休む。すると歩けるようになる、歩くとまた痛みが出る、という症状です。
この間欠跛行は、脊柱管狭窄症で現れる症状でもあるので、鑑別が必要です。しかし、中には、閉塞性動脈硬化症と脊柱管狭窄症の両方にかかっている方もいます。
一方、急速に進む下肢の虚血では、足の潰瘍から組織が死んでしまうこともあります。この場合、血管の再建がうまくいかず、足の切断に至る場合もあります。
治療
閉塞の部位と程度、症状により治療方法は変わってきます。閉塞性動脈硬化症の病態は四段階に分類され、無症状、軽度のしびれ、間欠跛行ですと内服処方やリハビリなど保存療法で様子を見ることが多いでしょう。
しかし、安静時の痛みや夜間の痛み、潰瘍の出現があると、手術が検討されるようになります。
3.高齢者の閉塞性動脈硬化症、どうやって気づく?
高齢者本人から足の痛みやしびれを訴えることもありますが、間欠跛行で家族が気が付くケースもあります。
もともと腰痛のある人に合併すると、本人も家族も「いつもの腰痛か」と見過ごすことが多いです。
血流障害があると皮膚温度の低下・冷感や皮膚色が悪くなる場合があります。これらの症状にも注意する必要があるでしょう。
潰瘍ができてからの発見も
高齢になると痛みやしびれ、冷感などを感じる力が鈍くなってくるため、症状に気が付かずに病状が進行する場合があります。
中には、足に潰瘍ができてから家族が発見し、受診するケースもあるのです。病状が進行している潰瘍では、手術をしても血管再建が難しくなったり、すでに血流障害が進んで下肢の切断を覚まされる場合もあります。
とくに認知症などで普段から訴えがない高齢者は、入浴時に皮膚の色などをよく観察する必要があるでしょう。
4.予後、日常のケア
ガイドラインによると、閉塞性動脈硬化症単独で外来に通院する患者さんの死亡率は4%に近いといわれています。閉塞性動脈硬化症のみを見れば、すぐに命にかかわることは少ない病気です。
しかし、足に動脈硬化があるということは、全身の血管が硬化しているということです。足だけの動脈が硬くて、他の動脈はしなやかできれいということはまずないでしょう。
そうなると、他に動脈硬化を起こしている血管が心臓や脳である場合、血流が悪くなれば心筋梗塞や脳梗塞など命にかかわる場合があります。
日常のケア
他に糖尿病、喫煙、高血圧、肥満は動脈硬化による症状を引き起こす危険因子です。油分の多い食事や運動不足など、改善できる生活習慣は改善していきましょう。
また、血流が悪くなっている分、創傷などができた時に回復が遅れ、感染する危険性が高くなります。日頃から自分に合った靴を履き、靴擦れなどをしないように気をつけましょう。
症状としてむくみがつらいという方は多いものです。これに対し、足全体を暖めたり、マッサージすることで症状が楽になる場合があります。
ただし、痺れによって知覚が低下し、温度の感覚が分かりにくい場合は低温やけどに注意しましょう。
いかにも体に悪そうなLDL(悪玉)コレステロール、実際にはどんなはたらきがあり、数値が高いとどんなリスクがあるのでしょう。正しい知識を確認し、今後の健康管理に活かしましょう。
■LDL(悪玉)コレステロールは何が「悪」?体への影響を知って動脈硬化を予防しよう
5.まとめ
閉塞性動脈硬化症事態はすぐに命を奪うような病気ではありません。症状である痺れや間欠跛行はつらいものではありますが、内服やリハビリで血流を改善すれば、進行を緩やかにし、症状を軽くできる場合もあります。
しかし、重要なのはそのほかの部位の動脈硬化です。下肢の動脈が詰まるということは、全身の動脈硬化が進んでいるということなので、今すぐ生活習慣を見直しましょう。
医療・健康ライター。看護師、介護支援専門員。整形外科などの医療機関や介護施設などで20年以上働いてきた経験を生かし、介護予防や健康に関する情報を発信。2021年10月には「看護師歴20年の私が伝える健康法 自分観察で疲れにくい体になる!」(Kindle本)を出版。ブログ:Nruse Writer’s Cafe。
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