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【体験談①通い介護に限界を感じ】親にどう話した?老人ホーム入居をすすめるとき

高齢者施設

高齢になりつつあるご家族に対して、子世帯から「施設入居について考えてみたら?」とはなかなか切り出しにくいものです。

「まだまだ元気なのに老人ホームなんて」と拒まれることは少なくありません。

この記事では連載形式で、親にどう施設入居や呼び寄せの話を切り出したのか、体験談をご紹介します。

初回である本記事では、ご両親の一方に介護が必要となり、子世帯での手伝いも限界があるために施設入居をすすめた女性に「どのように話を切り出したか」お話を伺いました。

体験談からわかった「施設を嫌がる親に納得してもらうポイント3つ」
 

  1. 自分以外の身内や第三者からも話をしてもらう
  2. 前向きな言葉をかけ、時間をかけ説得する
  3. 親の気持ちを否定しない

 

通い介護に限界を感じた娘が父親を説得
両親が有料老人ホームへ入居(Aさんのケース)

体験談
 

Aさんご家族のプロフィール
埼玉県在住、Aさん(54歳/女性)、夫(60歳)長女(20歳)と一軒家に住む。長男(24歳)は独立。Aさんのご両親は当時、父81歳、母76歳。

「お父さん、こんな生活は続けられないよ!高齢者の施設に入ったほうがいいって!」

Aさんが父親に話を切り出したのは、母親が庭先でころび骨折、手術のため入院していた病院から家に戻ってきて1年近くたつ頃でした。

父親が単身赴任中も子ども三人を育てしっかり家を守ってきた母親でしたが、入院を境に人格が変わってしまったのだとか。

車で1時間ほどのところに住んでいたAさんは週に1~2回は通い、家事をしたり、手足に不自由が残る母親の通院に付き添ったりしていました。

介護認定を受け、ヘルパーさんにも来てもらっていましたが、なにしろ父親も80代。慣れない家事で失敗続きの父親に、体が言うことをきかない母親はよけいに苛立つのか暴言を吐くこともあり、さすがのAさんも「自宅介護はヘルパーさんを頼んでも難しい」と悩んでいました。

しかし、いざ高齢者施設などへ入居となると、母親よりも父親が頑として嫌がるのです。

「自宅でも介護サービスを利用できますが、父も80歳をすぎ、いつまでもこの状態は続けられない。第一、わたしも忙しくて正直なところ、週に2回が3回となると無理だなと……」

ところが理を尽くして説明しても父親は首を縦にふりません。

「なんでわかってくれないの?私にも生活があるのよ!なんてつい、興奮して話してしまって後悔したこともあります。こういう話しって、する方だって疲れます。親を追い出しているような、自分が楽をしようとしているような、そんな気持ちになってしまう。その時は理解してくれない親に苛立つけど、帰宅途中の車の中で思わず泣けてきたこともありました」

通い介護は長く続きます。Aさんは「限界でした」と口にしました。
 

親戚やヘルパーさんの力も借りて話をすすめる

ヘルパー

「とほうに暮れていたところ、北海道に住む上の兄とお義姉さんが来て、義姉は娘の私に世話をさせているのは申し訳ないと言ってくれました」

Aさんはその言葉だけでも救われたそうです。でも現実は厳しいわけで「私の話は聞いてくれないから、兄夫婦に説得してくれるよう頼んだ」のですが、やはり父親は「ヘルパーさんもいるから大丈夫」と言い張ります。

Aさんの夫は、そのヘルパーさんに折に触れて話をしてもらえるよう根回しをしてくれていました。

ヘルパーさんは「私は聞き手に徹して、何が不安なのかを聞きましょう。不安なことがわかれば、それを解決していけばいいのですから」と答えたそうです。

さまざまな話をまとめていくと、父親がこだわっていたのは、唯一の息抜きである将棋サークルに行けなくなること、母親が違う場所に移ることで家族に邪魔者扱いされていると感じてもっと気性が激しくなるのではという不安でした。

下の弟はお嫁さんが看護師さんということで、「だったら私が施設について説明してみます」と請け負ってくれました。有料老人ホームは、病院のような場所ではなく快適に過ごせる場所で、父が好きな将棋の仲間も見つかると、具体的に話してくれたそうです。

「もしどちらかが急に体調が悪くなっても、スタッフがいるから安心ですよ」

どうやらお父さんはその言葉にだいぶ心が動かされたようでした。やはりご本人も実は不安を抱えている日々だったのでしょう

 

第三者のことばは素直に受け止められることも

体験談

身近の家族の話は時には互いにヒートアップしてしまい、なかなか冷静に話せないことも。しかし第三者の言葉なら素直に受け止められることもよくあります

いろいろありましたがAさんは「うちで同居できたら一番いいのかもしれないけど」と前置きした上で「家の近くなら、わたしも散歩がてら会いにいける。もっと楽しく暮らそうよ。お父さんとお母さんに喧嘩してほしくないし、私もお父さんと喧嘩なんかしたくないのよ」と気持ちを伝えました。

すると、口の重い父親が「そうだな」とぽつりと言い、さらに「施設に入ってお母さんも気がラクになって、前のように楽しみを見つけて暮らしてくれるなら、そっちのほうがお父さんもいいと思う」と納得してくれたそうです。
 

時間をかけて説得できるよう「早めに親の老後を考えこと」が大切

「その後も実際に老人ホームに入るまでとにかく注意したのは前向きな言葉をかけること。不安そうな様子を見せたら、たしかに住み慣れた家を離れるのってなかなか決断できないよね、私だってきっとそうなる、と父親の気持ちを決して否定しないようにしたこと、でしょうか」

遠方にすむ兄弟とお嫁さん達も頻繁に電話をしてくれるようになり、父親の愚痴を聞いてくれました。次第にお父さんの気持ちも軟化していったのでしょう。

「大勢の人を巻き込むことになりましたが、介護も含めて、親の老後についてはひとりでは抱えきれないものだと本当に実感しました。嫌がる親に施設入居をすすめるときも、ひとりでなんとかしようと頑張りすぎず、周囲の手助けを得るのが大事だと思います」

そして、「どっぷり介護に入ってしまうと自分も余裕がなくなってくる。なるべく早くから親の老後について考え、少しずつ時間をかけて親と話し、周囲の人にも協力してもらうのがいいと思います。思えば、母が入院した時点ですぐに自宅介護やその後はどうするか、行動に移していればここまでこじれなかったかも、と思うので」と、「高齢の親が心配になりつつある人」へむけてのアドバイスをくれました。
 

 

大橋 礼筆者:大橋 礼
主に教育・ライフスタイルを中心に執筆するフリーライター。自身の介護経験と親世代・子世代両方の視点から取材を行いリアルな声を届ける。サードエイジ世代の新しい暮らしと50代からの豊かな人生を求めて模索中。

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