サイレントキラーともいわれ、自覚症状がないまま進行してしまう動脈硬化。脂質代謝異常、肥満、高血圧、高血糖などの動脈硬化のリスクがある場合、予防のために食事の工夫をすることが大切です。今回は動脈硬化予防の食事や取り入れたい食べ物について、管理栄養士が解説します。
1.動脈硬化予防に食事療法が大切な理由
動脈硬化の原因に食事が関連する部分が多いため、動脈硬化予防には食事の工夫が大切です。
食事が関連する原因は、下記が知られています。
脂質代謝異常 | 悪玉コレステロールが血管内皮に入り、酸化して動脈硬化を引き起こす |
高血圧 | 血管を硬くする、血管内皮を傷つけ悪玉コレステロールが入りやすくなる |
高血糖 | 血管内皮を傷つけたり、悪玉コレステロールを酸化させたりする |
肥満 | 内臓脂肪が悪玉コレステロール値、血糖値、血圧などを上昇させる |
動脈硬化は自覚症状がないまま進み、心筋梗塞や脳梗塞、脳出血などを引き起こす原因となります。動脈硬化のリスクを指摘された場合は、食事で改善できるところがないか、見直すようにしてみましょう。
動脈硬化の原因について、詳しくはこちらの記事で解説しています。
■LDL(悪玉)コレステロールは何が「悪」?体への影響を知って動脈硬化を予防しよう
2.動脈硬化を予防する食事とは
動脈硬化を予防する食事のポイントは、下記のとおりです。
減らす | 飽和脂肪酸、コレステロール、塩分 |
増やす | 不飽和脂肪酸、食物繊維、抗酸化物質 |
また肥満がある場合は、適切なカロリー摂取を心がけて、体重を落とすことも重要です。
この内容をもとに、続けて詳しく具体的な食べ物を解説します。
3.動脈硬化対策で「減らしたい」食べ物
動脈硬化予防の食事では、とりすぎている食べ物を適正量にする必要があります。次にあげる食べ物の摂取が多い場合は、量や頻度を減らすようにしてみましょう。
減らしたい食べ物①飽和脂肪酸を含むもの
飽和脂肪酸は血液中の悪玉コレステロールを増やす原因となります。
飽和脂肪酸は肉類や乳類など、主に動物性の食べ物に含まれる脂肪酸です。1回の摂取量が多くなりがちな肉類を中心に、控えたい食べ物を下記にまとめています。
飽和脂肪酸を含む食べ物の例 | 100gあたりの飽和脂肪酸含有量 |
---|---|
鶏皮 | 16.3g |
牛リブロース | 15.10g |
ベーコン | 14.81g |
豚バラ肉 | 14.60g |
牛バラ肉 | 12.79g |
牛サーロイン | 11.36g |
牛肩ロース | 10.28g |
豚ロース | 7.84g |
肉類の中でも、脂身の多い部位は飽和脂肪酸の量が多くなっているため、赤身の部位を選ぶようにしましょう。
他にも、生クリーム、チーズ、チョコレートなども飽和脂肪酸を多く含むため、よく食べる習慣のある方は食べる回数を減らすようにしてみてください。
減らしたい食べ物②コレステロールを含むもの
食べ物に含まれるコレステロールは、血液中のコレステロールの材料となります。
悪玉コレステロール値が高い場合は、1日200mg未満に抑えることが推奨されています。
コレステロールは卵、魚介類、内臓に多く含まれる成分です。下記の表を参考に、食べる量を見直してみましょう。
コレステロールを含む食べ物の例 | 1食あたりの量 | 1食あたりのコレステロール含有量 |
---|---|---|
いか(生・するめいか) | 100g | 250mg |
イクラ | 50g | 240mg |
うなぎ | 100g | 230mg |
卵(全卵) | 1個 | 200mg |
鶏レバー | 50g | 190mg |
辛子明太子 | 1本(0.5腹) | 140mg |
豚レバー | 50g | 130mg |
牛レバー | 50g | 120mg |
ししゃも | 2尾 | 120mg |
さきいか | 1袋(30g) | 110mg |
減らしたい食べ物③塩分
塩分のとりすぎは血圧を高くする原因となります。動脈硬化を引き起こすリスクになるだけでなく、動脈硬化がある場合に、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞や脳出血などを引き起こすリスクにもなります。
薄味を心がけ、塩分の多い食べ物を控えるようにしましょう。
塩分の多い食べ物の例 | 1食あたりの量 | 1食あたりの食塩相当量 |
---|---|---|
カップ麺・インスタント麺 | 1杯 | 4~6g |
うどん、ラーメンなどの麺類 | 1杯 | 4~6g |
塩サバ・塩サケ | 100g | 1.8g |
梅干し | 1個 | 1.5g |
しょうゆ | 小さじ1 | 0.9g |
ソーセージ | 2本 | 0.8g |
食パン | 6枚切1枚 | 0.7g |
4.動脈硬化対策で「増やしたい」食べ物3つ
続けて、増やしたい食べ物3つについて、詳しく解説します。
増やしたい食べ物①不飽和脂肪酸
肉類などの飽和脂肪酸を減らし、不飽和脂肪酸の摂取量を増やすことで、悪玉コレステロール値や中性脂肪値の改善につながります。
不飽和脂肪酸とは、植物油や魚に含まれる脂肪酸です。中でもn-3系(オメガ3系)多価不飽和脂肪酸であるEPA・DHAは「血液サラサラ成分」とも呼ばれ、動脈硬化により起こる狭心症や心筋梗塞の予防効果が期待されています。
EPA・DHAは魚類に多く含まれるため、下記を取り入れるようにしましょう。
EPA/DHAを含む食べ物の例 | 100gあたりの含有量 |
---|---|
ノルウェーサバ | 1800mg/2600mg |
サンマ | 1500mg/2200mg |
クロマグロ | 1400mg/3200mg |
タチウオ | 970mg/1400mg |
ブリ | 940mg/1700mg |
マイワシ | 780mg/870mg |
マサバ | 690mg/970mg |
増やしたい食べ物②食物繊維
食物繊維は余分な脂質、糖、塩分などを排出する働きや、血中コレステロール値を低下させる働きがあることが知られています。また食後の血糖値の急激な上昇を抑えるため、血糖値が気になる方もぜひ取り入れたい成分です。
食物繊維は野菜やきのこ類のほか、精製度の低い穀類にも含まれています。
食物繊維を含む食べ物の例 | 1食あたりの量 | 1食あたりの食物繊維の量 |
---|---|---|
オートミール | 40g | 3.8g |
おから | 30g | 3.5g |
枝豆 | さやつき100g | 3.3g |
納豆 | 1パック | 3.0g |
ブロッコリー | 50g | 2.6g |
オクラ | 50g | 2.5g |
しいたけ | 50g | 2.5g |
玄米(ごはん) | 150g | 2.1g |
えのきたけ | 50g | 2.0g |
ひじき(ゆで) | 50g | 1.9g |
増やしたい食べ物③抗酸化物質
抗酸化物質とは、体を酸化から守ってくれるものを指します。悪玉コレステロールが酸化することにより動脈硬化を引き起こしてしまうため、酸化から体を守ることが大切です。
ビタミンの中でもA・C・Eに抗酸化作用が期待されており、3つをまとめて「ビタミンエース」ともいいます。ビタミンA・C・Eは、特に色の濃い野菜に多く含まれています。
ビタミンA/C/Eを含む食べ物の例 | 100gあたりの含有量 |
---|---|
モロヘイヤ | 840μg/65mg/6.5mg |
にんじん | 690μg/6mg/0.5mg |
ほうれん草 | 350μg/35mg/2.1mg |
かぼちゃ | 330μg/43mg/4.9mg |
水菜 | 110μg/55mg/1.8mg |
赤パプリカ | 88μg/170mg/4.3mg |
ブロッコリー | 75μg/140mg/3.0mg |
ピーマン | 33μg/76mg/0.8mg |
黄パプリカ | 17μg/150mg/2.4mg |
この記事では、動脈硬化予防の食事や食べ物について紹介しました。
動脈硬化を予防するには、食事の見直しが大切です。まずは肉類の食べすぎから改善してみるなど、1つずつでもOKです。他にも、適度な運動、禁煙、禁酒(または節酒)も動脈硬化予防に大切であるため、できる工夫からぜひ取り入れてみてくださいね。
※通院中の方で医師から食事について指示がある場合は、それに従ってください。また記事中の食事療法を実践する際は、必ず医師に相談しましょう。
参考:
一般社団法人日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」
文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」
管理栄養士。保健センターや病院に勤務し、生活習慣病予防や低栄養予防など、中高年から高齢者の栄養サポートに従事する。現在はフリーランスとして独立し、食や栄養に関するコラム執筆や、身近にある材料でおいしく健康になれるレシピ作成などの活動を行っている。
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